キクタニミュージック、独Kii Audioの取り扱いを開始。第1弾はアクティブスピーカー「Kii SEVEN」
2026/09/18
Kii Audio(キー・オーディオ)は、「Ncore」アンプ技術の設計者として著名なブルーノ・プッツェイス氏らによって2014年に設立されたドイツのオーディオブランド。高度なテクノロジーを数多く採用した同社のアクティブスピーカーは特にモニター用途で高い評価を受けており、つい先日には満を持して日本上陸を果たした。
今回は日本での導入第1弾にして同社のベーシックモデル「Kii SEVEN」をいちはやく試す機会があり、本連載で取り上げることとなった。
Kii SEVENはベーシックモデルといっても市場想定価格は税込2,200,000円前後ということで、本連載の中でも特筆すべき、まごうことなきハイエンドモデルである。また、同社製品はもっぱらスタジオ用途で注目されているが、メーカーとしては「Home and Studio Ready」というようにホーム用途での使用も意識されている。
Kii SEVENはホワイトとダークグレーの2色展開であり、今回の試聴機は後者。ラウンド形状と、金属の多用によるソリッドな質感がデザイン上の特徴となっている。
本機のサイズは200W×310H×310Dmmで、キャビネットは密閉型。大型とまではいかないが重量は14kgとかなりのもので、設置環境の強度には注意を要する。
ユニット構成は前面に1インチ(25.4mm)・カスタムウェーブガイド・トゥイーター1基と5インチ(127mm)・ミッドレンジ1基、両側面に6.5インチ(165.1mm)・ウーファー2基を搭載。ちなみに各ユニットの振動板の素材等については特に公式で情報が出されていないが、これはブランドの方針だそうだ。
搭載するアンプは合計出力600Wで、DSP制御による低域の指向性コントロール技術「Active Wave Focusing」により、高度な再生能力と部屋の影響の低減を両立している。
入力は本体側にアナログがXLRコンボジャック、デジタルがAES/EBUとネットワーク(LAN)を搭載。ネットワーク接続は無線でも可能で、Spotify Connect/TIDAL Connect/Qobuz Connectに対応する。結線やコントロールは背面にまとめられている。
底面には四か所M6のネジ穴が切られており、対応するインシュレーター等との組み合わせが可能。さすがにこのクラスのスピーカーを使う以上「ポン置き」というのはなるべく避けるべきで、有効に活用したい。
付属する専用コントローラー「Kii CONTROL」と組み合わせればUSBと同軸/光デジタル入力も使用可能になり、特にPCと組み合わせるデスクトップ環境との親和性が高い。Kii CONTROLを使用する際はスピーカーとはLANケーブルで接続する。
純正アプリ「Kii HOME」を使えばネットワークを介した各種操作や設定も可能で、ホーム用途で本機を使うなら必須と言っていいだろう。
本機の試聴はKii CONTROLと組み合わせたデスクトップユースと、本体のネットワーク機能や外部再生機器を使ったリビングユースの両方で行った。
両方に共通する印象はずばり「精密さ」。単に「解像感が高い」というより、「音が精密」と表現する方がしっくり来る。全帯域にわたって個々の音像が非常にほっそりとしており、滲みやふくらみといったものが一切ないまま空間にビシッと定位する。
そこに卓越したディテール描写が加わることで、圧倒的に音楽の見通しが良い。音楽の構成要素がどのような輪郭を持ち、空間のどこに定位するかといった情報が手に取るように把握できるため、確かにこれはモニター用途での定評も納得だ。
高域も低域も気持ちよく伸びているが、特に低域のじゅうぶんに沈み込みながらまったく膨らまない、という点は衝撃的ですらあった。一方で、それゆえに再生音にふくよかさや柔らかさを求める向きとは馴染みにくい面もあるだろう。
リビングユースでもKii SEVENの実力は遺憾なく発揮される。精密極まる音楽再生はもちろんのこと、映像コンテンツの再生においても作り込まれた映像音響のディテールをこれでもかとえぐり出し、浴びせてくる様は圧巻。強いて言えば、情報量の豊かさや精密さの印象が先行し、先述したようにふくよかな低音とは一線を画すことから、スケールと低音の量感を求める類の音響のためにサブウーファーの導入も検討したいところだ。
各ユニットに最適なアンプを搭載するというだけでなく、DSPによる位相や指向性の制御にまで踏み込むというKii Audioのアプローチはアクティブスピーカーの先端にしてその可能性を切り開くものであり、実際にKii SEVENはそのアプローチの有用性を再生音でもって証明している。
「ユーザーが好きなアンプと組み合わせる」というオーディオ的自由度を捨てる代わりに、極限までスピーカー・パッケージとしての完成度を高めると何が起きるのか。筆者はKii SEVENに、現代オーディオのひとつの先端領域を見た。