トップページへ戻る

レビュー

HOME > レビュー > レビュー記事一覧

公開日 2025/07/30 06:30
デノンHiFiサウンドが1万円台で手に入る

お得、しかも高評価! VGP「企画賞&金賞」W受賞の“音質特化”イヤホン、デノン「AH-C840NCW」「AH-C500W」を聴く

海上 忍


デノンのHiFiサウンドの入門機となる一切妥協のない音質特化イヤホンが誕生。この音が1万円台で買えるならお得です!


まるで有線のような端正な楽器の描写


イヤホンの用途といえば音楽鑑賞ですが、それだけではありません。スマートフォンとの組み合わせが前提となった現在では、周囲を気にせずゲームやネット動画を楽しみたい、ノイズを遮断して読書に耽りたい、といったプライベートタイムを充実させるための必須アイテムとなっています。見方を変えれば、いいイヤホンと巡り会えれば自由時間の可能性がより広がるのです。


今春デノンから発売された2つのイヤホン、「AH-C840NCW」と「AH-C500W」。同時期の発売なだけにいくつかの共通項があり、兄弟機とでもいえるような関係ですが、どちらも負けず劣らず個性的。どれほど自由時間の可能性を広げてくれるのか、まずは両機の共通項点と相違点について紹介してみましょう。



AH-C840NCW


両機の共通項にして最大の特長は、「12mmバイオセルロース・ドライバー」です。デノンが誇るフラグシップヘッドホン「AH-D9200」の振動板で初採用したバイオセルロース素材を、完全ワイヤレスイヤホン用に最適化しました。さらに、動きを妨げずスムーズに振幅できるよう振動板の外周を柔らかい素材で支える「フリーエッジ」も採用と、いわばAH-D9200のエッセンスを惜しげもなく投入した形です。



AH-C500W


この振動板素材とエッジの技術は、イヤホンの音にとって非常に重要な役割を果たします。一般的に、振動板には硬さと軽さが求められますが、ナノファイバーとパルプを混合したというAH-D9200で実績のあるバイオセルロース素材はその点申し分ありません。同じく実績あるフリーエッジもあわせて採用とあれば、安心感とともに期待が高まります。



両機とも搭載ドライバーは共通で、12mm口径の「バイオセルロース・フリーエッジ・ドライバー」を搭載。フリーエッジは2007年に発売したヘッドホンで初採用された構造で、その後フラグシップモデル「AH-D9200」でバイオセルロースを採用するなど、デノンが長年研鑽を積む技術です


AH-C840NCWとAH-C500Wの相違点の1つは、その形状です。AH-C840NCWはカナル型、AH-C500Wはインナーイヤー型と、同じドライバーを搭載していても構造は別、もちろん音のキャラクターも違ってきます。



耳の形状は千差万別。そのため、装着性が選べるようにカナル型とインナーイヤー型を用意。特にインナーイヤー型は低音が不足しがちですが、チューニングでブーストするのではなく、装着性を向上させることでデノンは改善。そのため形状の吟味は何度も試作を重ねたそうです


もう1つの違いは、アクティブノイズキャンセリング(ANC)にAH-C840NCWは対応するけれどAH-C500Wは非対応という点です。耳孔に密着するカナル型のほうが外音の影響が少ないぶんノイズキャンセリング向きで、耳孔を塞がないインナーイヤー型は聴き疲れにくく長時間リスニング向き、とイヤホンとしての用途が変わってきます。


音質レビュー:両モデルの共通点は?違いは?


「AH-C840NCW」と「AH-C500W」は、ANC対応などの機能差はあるものの、同じ設計のドライバーを搭載するだけに、音にも共通項があります。しかし、カナル型/インナーイヤー型と構造が大きく異なるだけに、印象が異なる部分があることもまた事実です。


両機で同じ楽曲を聴き最初に気付いたのは、音の輪郭の精緻さです。菊地雅章「黒いオルフェ〜東京ソロ2012」は、東京文化会館小ホールで録音されたライブ音源でありながら、これぞECMレーベルの音という仕上がりで、彼の繊細なピアノタッチとサスティーンの微妙な加減が味わいどころの作品ですが、両機が描き出す音の輪郭と残響感は酷似しています。


その精緻さはギター中心のアルバムでも存分に発揮されます。ドミニク・ミラーの「アブサン」は、ナイロン弦ギターによる柔和でありつつも端正なアルペジオは耳に心地よく、音の表情が伝わります。音の立ち上がり/立ち下がりもスピーディーで、バンドネオンやドラムといった楽器との位置関係もわかりやすく、完全ワイヤレスイヤホンで聴いていることを一瞬忘れてしまうほどです。


違いを感じたのは、ドラムやベースなど低音成分多めの楽器です。スネアアタックでいうと、AH-C840NCWはドンッ、ドムッ、と促音で表現したくなる低域の量感をたたえていますが、それに比べるとAH-C500Wはあっさり。一方、ステージの広がりやハーモニクスの伸びやかさという点では、AH-C500Wのほうがより自然な印象です。カナル型かインナーイヤー型かという構造の違いに起因する部分ですが、ここは音楽の好みとイヤホンの用途が決める事項といえるでしょう。


両機のキャラクターの違いは、ANC対応の有無によるところもあります。AH-C840NCWに用意されるANCは、フィードフォワード+フィードバックのハイブリッド方式、しかも周囲のノイズレベルに応じて効きが変化する適応型です。


室内で試したところ、静かな寝室ではさほど効果を感じなかったものの、換気扇付近に歩み寄るとノイズ低減レベルが上昇したのか、ふだんの「ゴォー」が「シュオー」に変化しました。外出時に地下鉄でも試しましたが、走行時の「ガタンゴトン」が「コトッコトッ」に変化、過度にボリュームを上げなくても音楽を楽しめるようになり、ストレスレベルも大幅に低下しました。再生する音の印象はANCのオン/オフでほぼ変わらず、そのようなチューニングの点でも老舗オーディオメーカーらしさを感じさせてくれます。


なお、AH-C840NCWにはS/M/Lの3サイズに傘がやや長い「Long S」をくわえた計4サイズのイヤーピースが付属しています。素材は医療用グレードのシリコンで着け心地はソフト、2時間ほど着けたままでも装着疲れを感じることはありませんでした。


軸がぶれない「デノンの音作り」


この2つのイヤホンを交互に使い続けるとわかりますが、構造は変われどデノンの音作りの姿勢は一貫しています。ANC機能を搭載するためのカナル型、よりリラックスして音楽を楽しむためのインナーイヤー型とキャラクターを分けてはいるものの、同じドライバーを搭載するなど、根本的な音作りの方向性に違いはありません。


その方向性とは、「Vivid & Spacious」。音の表情を色彩豊かに生き生きと、音の位置関係や空間をありのままに表現するというデノンが掲げるフィロソフィーです。自由時間の可能性を広げてくれる伴走者には、このようなぶれない軸が求められるのかもしれません。


(提供:ディーアンドエムホールディングス)

関連リンク

新着クローズアップ

クローズアップ

アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新

WEB