Bluetooth、2027年めどに「次世代Hi-Fiワイヤレスオーディオ規格」を確立へ。日本法人も設立
編集部:筑井真奈Bluetoothの規格策定や認証、普及活動などを行う標準化団体 Bluetooth SIG(Special Interest Group)は、本日10月15日に「Bluetooth Japan Summit 2026」を開催。記者会見において、日本のコミットメントをさらに拡大するためにBluetooth SIG Japan合同会社の設立と、黒川 剣氏がジャパンカントリーマネージャーに就任することを発表した。
またBluetoothの未来へのロードマップとして、2027年を目処に「Hi-Fiワイヤレスオーディオの標準を確立する」ことを表明。またBluetooth LEでIPv6パケットを伝送する「IP Link」や、さらなる速度や信頼性向上のための高データスループット規格も2026年11月に提供を開始すると発表した。IP Linkについてはオーディオではなく、MatterやThreadといったスマートホーム規格との連携を主眼に置いているという。
新たなHi-Fiワイヤレスオーディオについては、コーデックなど詳細は明かされなかったものの、現在のスループットレートの3倍を超える高データスループット規格により、7.5Mbpsから8Mbpsの伝送を実現、96kHz/24bitの音楽伝送を可能にするという。さらに詳しい情報は、米ラスベガスで来年初頭に行われる「CES 2027」にて明かされるという。
記者会見の冒頭、Bluetooth SIGのCEOであるNeville Meijers(ネヴィル・マイヤーズ)氏が、現在のBluetoothの市況について解説。Bluetoothの規格が策定されてから20年あまりの間に、約650億台もの対応デバイスが出荷されたと発表。2026年には1年間に60億台近くのデバイスが出荷、2030年には80億台に達すると予測されている。
ネヴィル氏はBluetoothがここまでの規模に拡大した理由について、「1社やひとつの地域で実現したものではなく、グローバルに繋がり、標準を作ることで実現できた」と説明。今後のBluetoothの展望について、「共に築く」「世界に届ける」「地域に根ざす」という3つの指針に基づき、会員企業同士の活発な議論や強力な関係性の構築を支えていきたいと語った。
現在は2013人のメンバーが23のワーキンググループに分かれて活動を行なっており、過去3年間に98の新しい仕様を採択した。「規格を策定したら終わりではなく、止まらないイノベーションがBluetoothの強みである」と強く訴えた。
また近年のBluetoothの機能強化について、マルチデバイスへのブロードキャストを可能になる「Auracast」機能の提供や、ゲーミングやXRデバイスなどに期待できる超低遅延HIDについて紹介。
オーディオ以外のBluetooth活用の広がりとして、電波で距離を測定するセキュアな「高精度測距」が紹介。クルマのデジタルキーへの採用を見越し、クルマメーカーからも関心が寄せられているという。また、照明制御、空調・換気・暖房システム(HVAC)、電子棚札といった新しい活用事例の広がりにも言及した。
また、今後25年間にわたるパフォーマンス向上を見据え、現在は2.4GHz帯で動作している帯域について、将来的には5GHzならびに6GHzの高周波帯への拡張も視野に入れている。伝送速度の高速化、低遅延化、位置測定精度の向上などを見込んでいる。そのために、Wi-Fi Allianceとの連携による干渉回避技術の強化など、標準仕様の策定を2027年度を目標に行うと表明した。
また、日本のコミットメントをさらに高め、ビジネスを促進したいという考えから、Bluetooth SIG Japan合同会社を2026年6月に設立。これまでDTS Japan、ユービーアイソフト、Spotify Japanなどの代表を務めてきた黒川 剣氏が社長に就任した。
現在Bluetooth SIGの参加メンバー企業数は、全世界で約43,000社。南北アメリカが33%、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)が29%、そしてAPAC(アジア・パシフィック)が38%となっている。日本については、Bluetooth SIGの参加メンバー数と年間認証件数は、アメリカと中国についで世界第3位。アジア全体での認証数は全体の56%を占めている。
黒川氏は、どうしても英語がイニシアティブをとりがちな規格策定の世界において、日本ならではのローカルな課題を取りまとめ、アイデアを出し合って一緒に解決していきたいとビジョンを示した。
次世代規格やAuracastを活用したデモブース
Bluetooth Japan Summit 2026の会場では、7.5Mbpsに対応する高データスループット規格での音楽再生が行えるデモンストレーションを実施。説明によると、2.4GHz帯および5GHz帯に対応。5段階のアダプティブレートとサブイベント再送により、ロスレスフレームを確実に伝送するとしている。
Auracastのデモでは、有限会社アイアシステムによる「Bettaear」というデバイスを活用し、セミナーの多言語配信(日本語と英語が選択可能)も行っていた。
また、STマイクロエレクトロニクスのブースでは、LE Audioを活用したカシオの電子ピアノを参考出品。LE Audioは、音楽データだけではなく他のRAWデータも一緒に伝送することができる。展示されていた電子ピアノは、音楽教室などで、先生と生徒が複数の楽器で練習する場面を想定し、先生が弾いたピアノの鍵盤の動きに合わせて、生徒側のピアノの該当する鍵盤が光るというもの。低遅延かつ伝送帯域が広いLE Audioだからこそ実現できる、音楽教育への提案として考えているという。
また、セミナー会場ではCearの小型スピーカー「Cear Pave」を用いたPAシステムのデモンストレーションも行われていた。前方の登壇者がマイクで喋り、その音声は各テーブルに配置されたCear Paveに、Auracastを活用して伝送される。大型PAスピーカーの課題である、前の方は音が大きすぎ、後ろの方は音が聞こえない、という課題を解決できるもので、聴講者は手元でボリューム調整も可能。
Cearの担当者によると、32個のスピーカーをソフトウェアから一括で設定可能で、電源のオンオフはもちろん、各スピーカーのバッテリーの状態も一元的に管理することができるという。Auracastの送信機は小型で、今回はモノラルのマイク音声を入力、それぞれのCear Paveに送信されている。今回はAuracastの実験として提案しているそうだが、セットアップも簡便で荷物も少なくて済むため、PAシステムの新しい可能性となりそうだ。
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