<OTOTEN>アナログブランドMichell再上陸/M'sファクトリーの4ウェイホーンスピーカーをマルチアンプ駆動
2026/06/22
イギリスの名門アナログブランド、MICHELL(ミッチェル)が、飯田ピアノの取り扱いによって国内への再導入が決定した。16年ぶりの日本上陸である。現在のMICHELLを率いる3代目社長 ジョナサン・ナイ氏に、8月の香港ショウでお会いする機会を得た。現在の製品開発思想と、日本市場への意欲を語っていただいた。
今年7月に開催したオーディオイベント「OTOTEN2026」の会場で注目を集めたプロダクトがある。英国の老舗アナログ専業ブランド・MICHELL AUDIO(ミッチェル・オーディオ)のターンテーブル「Gyro」(ジャイロ)だ。
もともとMICHELLは、精密な機械加工を得意とするOEM専業メーカーだったという。だが取引先のひとつが倒産したことから、 ジョン・ミッチェル氏は安定した会社経営ができるよう、オリジナルブランドのスタートを決意。1973年、アナログオーディオの専業メーカーJ.A.Michell Engineeringを起業した。76年からターンテーブルやトーンアームなどの生産を始めている。
ジョナサン・ナイ氏は3代目の社長になるが、創業者のジョン・ミッチェル氏の孫娘の婿にあたる。長年家族経営のスタイルを貫いてきたようだ。
MICHELLの製品コンセプトは実に明快だ。「私は、まずシンプルで信頼できる製品を作ること。そして世の中には数多くの重量級ターンテーブルがありますが、そういう製品ではなく、生活の中に日頃から使えるようなアナログプレーヤーを創りたいと思っています」。まるでコンパクトで高性能なクルマのような、実に英国的な考えに基づいているといえる。
現在従業員は8名。そのほか協力工場に約20名が在籍しており、世界40か国に輸出している。もっとも大きな市場は英国と米国だという。
なぜ日本で輸入が途絶えていたのか。それは2つの理由がある。ひとつは日本の輸入元が解散したこと。そしてもうひとつが、2代目社長が、あまりビジネスを拡げる気がなかったためという。だが3代目を引き継いだジョナサン氏は、事業拡大の道を決断。そのタイミングで日本側から輸入代理店業務を行いたいという企業が名乗り出て、16年ぶりの上陸と相成った。
オリジナルのGyroが誕生したのは83年のこと。MICHELLの代表作であり、現在も日本の愛好家が多い。「そのことは私も十分に認識していて、サポートパーツを必要としていることも理解しています。まずはそれらの供給に尽力したいです」とジョナサン氏は語る。既に輸入元には、ゴムベルトに対する問い合わせが数多く寄せられているそうだ。
新しいGyroのデザインは過去のモデルと似たところもあるが、ジョナサン氏によると最新の技術で大きくアップデートされているという。
「私たちはトレーサビリティを高めることに注力しています。プラッターが外部振動などから完全にアイソレートされた状態でなければ、正しいレコード再生はできません。そこで、近年進化が著しいコンピューターシミュレーション技術を駆使し、振動解析などを行いました」。具体的にはメインシャーシの構造と素材を見直し、軸受けやアームが載るサブシャーシに真鍮を埋め込んだ。
となると、気になるのは従来のモデルを持っている方へのアップグレードができるか否かという点。「それはできません。素材はもちろんのこと、設計思想が違いますから」。オールドモデルはオールドモデルでの良さを認めた上での発言といえるだろう。
現在はGyroをトップラインとして、「Revolve」「TecnoDec」の合計3モデルのターンテーブルをラインナップする。「将来的には、全5モデル展開にしていきたい」とジョナサン氏は構想を語る。またトーンアームやフォノイコライザー、カートリッジなども展開しており、将来的に日本市場への導入も期待できそうだ。
「日本に再び戻ってこられて嬉しいです。MICHELLのプレーヤーで音楽を愉しんでください」と笑顔を見せる。
最後にジョナサン氏がよく聴く音楽を尋ねた。「クラシックからヘビーメタルまで、何でも聴きますよ。でも今はアメリカのカントリーミュージックが好きかな」。
最新のターンテーブル「Gyro」のレビューは、10月5日発売の『季刊・analog 93号』にも掲載されている。ぜひこちらも合わせてチェックしていただければ幸いだ。