公開日 2026/03/31 06:45

「Appleの50年」を音楽とオーディオで読み解く。iPod / AirPods / iTunes…DNAに刻まれた革新の軌跡

Mori Calliopeら出演の記念イベントもレポート
AppleのDNAに刻まれた音楽とオーディオ。50年の進化と、私たちのユーザー体験の変化を振り返る

Appleは、今年2026年4月1日で創業50周年を迎えることを記念したイベントを開催。人気VTuberのMori Calliope(森カリオペ)らも出演したそのイベントの様子と、Apple 50年の歩みを、自身も数多くのApple製品を使ってきたというライター/評論家の山本敦氏が振り返る。

Appleはオーディオ・ビジュアル革命の中心にあった

私が同社の製品を本格的に使い始めてから約30年が経過した。人生の半分以上の時間を、何らかの形でAppleのデバイスと共に過ごしてきたことになる。

初めて手にしたMacは、大学生の頃に購入した「Power Macintosh 8100/100」だった。米国留学から帰国した同級生に勧められたのがきっかけだ。当時、このタワー型のデスクトップマシンはプロフェッショナルのコンテンツクリエイターにも重宝されるほどの拡張性を備えていた。

その後、卒業と同時に「iMac G3」へと買い替えた。カラーはライムグリーン。愛嬌あふれるデザインのモニタ一体型デスクトップマシンにUSBオーディオインターフェースをつないで宅録に没頭した記憶は、今でも鮮明だ。

社会に出たばかりの頃の私を支えてくれたマシンは「iMac G3」のライムグリーンだった。当時バンドをやっていた友人を真似てDTMを楽しんだりしていた。いつかギブソンのビンテージギターとPower Mac G5を同時に買うことが当時の夢だった

2001年に、私はオーディオビジュアルの専門出版社である音元出版に入社した。ウェブメディア「PHILE WEB」の編集者・記者としてのキャリアがスタートしたこの時期は、まさに日本のオーディオビジュアル史が激変する渦中にあった。

デジタル録画機の普及、ホームシアターの隆盛、そして大画面テレビへの移行。私は時代を象徴する数々のプロダクトと、それを取り巻くテクノロジーを編集部の一員として最前線で取材してきた。

振り替えれば、この頃のオーディオビジュアル領域における進化の核心にはいつもAppleの存在があった。その象徴が2001年に登場した「iPod」である。

それまでの物理メディアを介した音楽鑑賞のスタイルを、数千曲ものデジタルファイルを持ち歩きながら聴ける手のひらサイズのポータブルオーディオプレーヤーが大きく変えた。

iPodはその後、iPhoneを中心とするモバイルアプリのエコシステムと融合し、2022年にiPod touchの終売を迎えるまでポータブルオーディオの象徴として君臨し続けた。

私が愛用してきた歴代iPod。最初に買ったのは、カラーディスプレイに写真が表示できる「iPhone photo/20GB」。そのうち移動中にポッドキャストやビデオも楽しみたくなって120GBの「iPod classic」に買い換えた。そして2009年に第3世代のiPod touchを購入。遅まきながら、こんなに素晴らしい音楽プレーヤーがこの世にあることを知り、歓喜する。そして“my iPod”としては最後にコレクションに加えた第5世代のiPod touch。この頃から音楽リスニングにもiPhoneとハイレゾDAPの組み合わせを活用するようになり、自然とiPodの出番が減っていった

続いて2010年に登場した「iPad」は、iPhoneよりも大きな画面を持つタブレットという存在に留まらず、複雑化するホームシアターやネットワークオーディオ機器の直感的なリモートコントローラーとしても、業界に斬新なユーザー体験をもたらした。

私が初めて買ったiPadは「第2世代のiPad」。2011年3月から米国と欧州で販売がスタートして、日本では1ヶ月遅れで発売を迎えた。同年4月14日から17日までスペインに出張する機会があったのに、旅先でAppleストアや家電量販店に巡り会えず断念。結局日本で発売日に購入したが、かなり使い込んだ愛着のあるiPad

ほかにもメディアストリーミングプレーヤーの「Apple TV」がAirPlayに対応したことで、ネットワーク機能を持たない既存のオーディオシステムにも、PCやNAS内のコンテンツを再生する機能を後付けできるようになった。

さらに付け加えるならば、DAC内蔵ヘッドホンアンプとの組み合わせによる「スマホでのハイレゾ再生」をいち早く定着させたのは、iPhoneの周辺機器エコシステムであったと私は記憶している。

iPhone/iOSはハイレゾ再生との相性も良かった

音楽との出会い方を変えたApple Music

その後、私は10年以上務めた音元出版を離れ、2014年からフリーランスライターとして独立した。新たな環境で模索を続けていた2015年7月、Appleによる定額制音楽配信サービス「Apple Music」がスタートする。このサービスが、私の音楽との向き合い方を根本から変えることになった。

それまではiTunesで楽曲を購入・ダウンロードし、ローカルのストレージに保存して聴くスタイルが主流だった。しかし、Apple Musicの登場により、クラウド上にある膨大なライブラリへ即座にアクセスできるオンラインストリーミングの時代が本格的に到来した。

2015年07月1日の深夜0時にスタートしたアップルの定額制音楽配信サービス「Apple Music」。当時は対応していたのはiPhone/iPad/iPod touchなど、プラットフォームを最新のiOS 8.4にアップデートしたデバイス。Apple Watch単体で音楽再生を楽しむことができず、iPhone側で再生されている音楽のリモートコントロールなど一部機能のみが提供されていた

2018年から2020年にかけて、国内キャリアがデータ通信の使い放題プランを拡充させたことも追い風となった。私自身、通信制限の懸念から解放されたことで、外出先でもロスレス音質のストリーミングを日常的に楽しむようになった。

音楽の「聴き方」も変化した。かつての私は、気に入ったアルバムを繰り返し聴く「深掘りスタイル」で音楽を聴いていた。

ところが、Apple Musicのようなサービスを常用するようになると、関連アーティストやコンピレーションアルバムを通じた「横へのつながりを掘り下げる」スタイルがメインになった。

2018年にAppleが買収した「Shazam」の機能がiOSに統合されたことも大きい。街中で流れているBGMをその場で検索して、Apple Musicのライブラリに加える。こうした体験の積み重ねによって、音楽的な知見の幅は以前とは比較にならないほど広がった。

現在はShazamによる音楽検索機能がiOSに統合されている。街角から聞こえてきた音楽をすぐに検索して、Apple Musicで聴いたり、ライブラリにすぐ保存できる。Apple WatchによるShazam検索も便利

AirPodsが切り拓いたコンピュテーショナルオーディオの地平

かつて、iPodやiPhoneには「EarPods」という有線イヤホンが付属していた。正直に言えば、私はこのイヤホンが苦手だった。

装着感や音もれの問題があり、特にフリーランスになってからはオーディオ機器を評価する仕事も始めていたので、より密閉性の高いカナル型イヤホンやノイズキャンセリングヘッドホンを好んで使用していた。

しかし、振り替えればこの頃に多くのユーザーがEarPodsを通じて「標準的なイヤホン体験」を共有していたことが、より上質なイヤホン・ヘッドホンによるリスニングスタイルの発展に大きな影響を及ぼしたのだと、私は考えている。

やがて2016年12月、初代「AirPods」が登場した。左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンというカテゴリーがまだ黎明期にあった当時、ケーブルフリーで身に着けられるイヤホンの利便性は瞬く間に世界を席巻した。AirPodsはそのパラダイムシフトを最も強く牽引したワイヤレスイヤホンだ。

かつてはiPhoneやiPodに付属していた有線接続の「EarPods」が音楽ファンの出発点、あるいは基準になったことで「もっといいイヤホン・ヘッドホン」を探求する文化が根付いたように思う。初代のAirPods、ノイズキャンセリング機能を搭載した「AirPods Pro」も大きな影響力を放っているプロダクトだ

そして2019年、カナル型の「AirPods Pro」が登場したことで、Appleのオーディオ戦略は新たなフェーズに突入する。核となったのは、独自開発のプロセッサ「Apple H1」だ。

高度なアクティブノイズキャンセリング、自然な外部音取り込み、そしてAppleデバイスとの間の安定した接続性能。いずれもAppleの独自開発によるドライバーに加えて、先端のソフトウェアとハードウェアが高度に連携する「コンピュテーショナルオーディオ」の賜物だ。

2026年4月には、最新の「Apple H2」チップを搭載する「AirPods Max 2」が発売を迎える。周囲の状況に合わせてANCと外部音取り込みのバランスを自動調整する適応型オーディオや、リアルタイムの会話感知、ライブ翻訳といった先進的な機能の数々を搭載するワイヤレスヘッドホンだ。

Appleが音響工学という伝統的な領域に、高度な演算処理を持ち込んだAirPodsシリーズはいま「耳に装着するコンピュータ」として、あるいはウェアラブルデバイスとして独自の進化を遂げようとしている。

2020年12月18日に初代のモデルが発売された、ノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスヘッドホン「AirPods Max」。最新モデルの「AirPods Max 2」も4月1日に発売日が決定した

文系出身の私が、今日までオーディオビジュアルという専門性の高い業界で活動を続けてこられたのは、仕事を通じて出会った多くの方々の支えがあったからだ。そして同時にAppleのプロダクトやサービスが、いつの時代にも私の感性と知見をアップデートし続けてくれたからでもある。

Appleが提示してきたのは、常に「技術をいかに人間に寄り添わせるか」という問いへの答えだった。今では私のDNAに、Appleのデバイスを通じて得た音楽に対する情熱と、最先端のオーディオテクノロジーに対する探究心が深く刻み込まれている。

音楽と先端テクノロジーが融合をリードするApple

2026年4月1日に創業50周年を迎えるAppleは、その節目を前に世界各地で記念イベントを展開してきた。日本では3月27日、Apple 表参道にて特別なライブステージが開催され、Visual ArtistのMori CalliopeとApple Musicのラジオ番組「Tokyo Highway Radio」のDJとして活躍する、みのが登場した。

Apple 表参道で開催された創業50周年の記念イベントのステージは、Visual ArtistのMori CalliopeとDJ・みのが熱く盛り上げた

会場となった店舗1階フロアには開演前から多くのファンが詰めかけ、熱気に包まれた空間が広がっていた。

ステージに現れたMori Calliopeは『Go-Getters』『未来島』『Orpheus』『DONMA』といった代表曲を披露。

英語と日本語を自在に行き来するリリックと、ヒップホップやロック、エレクトロを横断するサウンドが交錯し、全4曲のセットながらも強い存在感を印象づけた。

彼女の音楽性の根底には、自ら作曲も手がけるシンガーソングライターとしての側面がある。ジャンルに縛られない表現の自由度と、セルフプロデュースによるスピード感は、その制作スタイルにも表れていると思う。

例えば、2月6日にリリースされた最新アルバム『DISASTERPIECE』に収録された楽曲『Ningen Dakara』は、iPadとAppleのDAWアプリ「GarageBand」を駆使してわずか3時間で完成させたという。

テクノロジーを創作の延長線として自然に取り込む姿勢は、まさに現代的なアーティスト像のひとつと言えるだろう。

音楽のジャンルを超えた独創的な4曲を披露した

トークセッションでは、DJ・みのが「Thinking Different」というテーマを投げかけた。Appleが50年にわたり掲げ続けてきたこの言葉に対し、Mori Calliopeは自身の立ち位置を重ね合わせる。

「Visual Artistとして活動している時点で、自分はすでに“Thinking Different”だと思っています。ただ、世界的に見ればまだ珍しい存在であることも事実。その壁を越えてメジャーになっていくことが、自分のロックな精神にもつながっています」

その言葉には、ジャンルやフォーマットの境界を越えようとする意思と、表現者としての覚悟がにじんでいた。テクノロジーと創作の関係がより密接になるなかで、彼女のように新しい表現領域を切り拓こうとするアーティストの存在は、今後ますます重要になっていくはずだ。

Appleが掲げてきた「異なる考え方」は製品やサービスにとどまらず、こうしたクリエイターの活動とも共鳴している。Mori Calliopeのステージはその接点を象徴していた。同時に、音楽と先端テクノロジーが融合するこれからの未来への強い期待を抱かせるものでもあった。

熱気と歓声に包まれたApple 表参道。Mori Calliopeのライブパフォーマンスは、音楽と先端テクノロジーの融合を象徴するステージとなった

Appleが創立してから50年間にわたる歩みに深い敬意を表したい。そしてこれから先も多くのクリエイターたちとともに、Appleが私たちのミュージックライフをどのように彩っていくのか。ひとりのライターとして、またユーザーとして引き続き見守っていきたい。

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