ソニー「WF-1000XM6」レビュー。AirPodsなどライバル機や前モデルからの進化を比較検証
ソニーから完全ワイヤレスイヤホンの最上位機「WF-1000XM6」が発表された。前作「WF-1000XM5」は2023年9月に発売されたので、2年半ぶりの世代交代となる。
いうまでもなく、ソニーのノイズキャンセリングイヤホン、しかもフラグシップ機の新モデル登場は、ポータブルオーディオ分野にとって、とても大きな出来事である。強力なライバルがひしめく価格帯の勢力図が変わるからだ。
アラウンド4万円のノイズキャンセリングイヤホンで、市場シェアが最も高いのは、アップル「AirPods Pro 3」だ。アップル製品と組み合わせたときの使い勝手の良さ、機能の充実ぶりに加えて、AirPods Pro 3ではノイキャンもかなり進化させ、この価格帯でノイキャンの効果に定評あるボーズのイヤホンなどに近づいた。音質も進化し、バランス良いサウンドを聴かせてくれる。
一方、同価格帯で音質の評価が高いモデルの代表格に、テクニクス「EAH-AZ100」が挙げられる。磁性流体ドライバーを搭載しており、発売から1年が経った現在でも評判に翳りは見られない。
同じソニー同士の比較でも、前モデルのWF-1000XM5の評価も高かったため、前モデルから今回のWF-1000XM6がどの程度進化したのか気になっているという方も多いだろう。
WF-1000XM6の価格はオープンだが、市場想定価格は45,000円前後。前モデルもAirPods Proより少し高い価格設定でスタートしたが、今回もそうなった。果たしてこの価格設定が妥当なのかという点も気になる。
そこで今回は、WF-1000XM6の実力を、これらライバルモデルと比較しながら、じっくり検証してみた。
結論を先にまとめると、WF-1000XM6の音質の良さ・進化は、はっきりとわかるレベルだ。音質面では、この価格帯のイヤホンのリーダー格に躍り出たといえるだろう。また本機は、ソニーが長年熟成させてきたノイズキャンセリングや各種便利機能も充実している。痒いところに手が届く使い勝手に、かなりレベルアップしたサウンド。完成度は非常に高い。
パッと見だと大きい印象だが装着すると気にならない
では、まずはWF-1000XM6の外観から見ていこう。パッと見ると「ずいぶんずんぐりしたなあ」という印象だ。手に持ってみても結構大きく感じる。実際に外形寸法は前モデルより大きくなっているし、質量も大きくなっている。数値で言うと、本体片耳の質量は約6.5gだそうだ。前モデルは約5.9gだったので、わずかとはいえ重くなっている。
だが、装着してみると、さほど大きさや重さは感じない。本体がうまく耳に収まるような形状になっているため、見た目にも大きなイヤホンを装着しているという印象は受けない。
後述する様々な機能・音質向上のために筐体が大きくなったのだろうが、本体幅を前モデルより11%スリムにし、耳たぶの突起などとの接触を抑えるなどの工夫を行っている。巧みな処理で、装着時と見た目の違和感を最小限に抑えている印象だ。
見た目の異物感がないのは、本体のデザイン、特に真横から見たときのルックスが非常にシンプルで、いわゆる「ノイズレス」ぶりに磨きを掛けたことも寄与しているだろう。前モデルもそうだったが、SONYロゴも上部のほとんど見えないところに配置されている。さらにロゴの色もマットになり、より匿名性を高めている。
イヤホン本体のツルッとしたデザインには「エルゴノミック・サーフェス・デザイン」という名称が付けられているが、単に美しさを追い求めただけでなく、機能を高めることにも寄与している。
たとえば、本体に穴を空けた新たな通気構造を採用することにより、自分の足音や咀嚼音などの体内ノイズが大幅に低減されるという。
さらに本体表面の凹凸が少ないため、風切りノイズを抑えられる効果もあるとのこと。また、それでも本体内に入り込んできたノイズを打ち消す空間も確保している。
外からは見えないが、本体内のアンテナサイズや配置も改良されている。アンテナサイズがWF-1000XM5比で約1.5倍になっており、耳が干渉しない場所に配置を変更。アンテナ自体の特性最大化や、接続方式の変更なども行うことで、混雑した場所でも安定した接続ができるという。
写真はブラックだが、プラチナシルバーも美しい。本体色はシルバーというよりオフホワイトといった印象だが、マイク部分のみシルバー感が強く、個人的にはブラックよりアクセントが利いているように感じる。
機能面も考慮されたデザインであることはわかるし、ミニマルなものが好きな方にとっては最高のデザインだろうが、4万円程度する高級モデルであることを考えると、もう少しデザイン上のアクセントをつけて、さりげなくドヤれる要素があっても良かったという意見もありそうだ。
装着感をチェック。フォームタイプなのでしっかり耳を塞ぐ
ここからは装着感について確認していく。
WF-1000XM5のイヤーピースから改良された、新しいイヤーピースを採用しているが、基本的に厚手のフォームタイプであることはこれまでと変わりない。このため、WF-1000XM6を装着する際には、ぐいっと押し込み、少し捻るような動作が必要になる。
ライバル機と比べてみると、たとえばテクニクス「EAH-AZ100」の装着はずっとラクだ。シリコンイヤーピースを採用しており、その形状も正円のため、すっと耳に収まる。
そして、そのAZ100よりさらにラクなのがAirPods Pro 3という整理となる。AirPods Pro 3のイヤーピースは単なるシリコンではなく、内部にソフトフォームを注入したハイブリッド構造となっているが、耳に入れる部分が浅いため、装着するのは非常にラクに行える。AirPods Pro 2の、耳に置くような感覚と比べて、多少耳を塞ぐ感覚が強まったが、それでも非常に装着がラクで、ストレスがないイヤホンであることは確かだ。
装着時の圧迫感も、WF-1000XM6はフォームタイプのため、やはり多少は感じる。装着時の圧迫感のなさという観点で比べると、AirPods Pro 3が最も優秀、次いでテクニクスのAZ100、かなり離されてソニーWF-1000XM6/WF-1000XM5という順番になる。
イヤホンの脱着は頻繁に行う動作のため、これが少しでもラクだとありがたいし、装着感もなるべく圧迫感がない方がストレスが少ない。
とはいえ体感で圧迫感を比べると、これまでのWF-1000XM5と比べてほぼ変わっていないし、装着時の圧迫感も慣れたらほとんど感じなくなるので、実際に試して特に違和感がないのであれば、なんの問題もない。人によっては、しっかりと耳を塞いでくれる方が、より集中して音楽を楽しめるという方もいるだろう。
充電ケースにも多数のこだわりが込められている
ケースはどうか。これも毎日頻繁に使うものなので、その完成度は重要だ。
まずWF-1000XM6のケースの大きさを見てみると、これも本体と同じく、前モデルのWF-1000XM5のケースより大きくなった。形状もかなり変わっており、さらなる進化を目指す意欲が伝わってくる。
ケースはテクニクスのAZ100よりも大きい。AirPods Pro 3と比べると、高さ方向はやや低いが、厚みはXM6のケースの方がはるかに厚い。
では持ち運びしづらいかというと、決してそんなことはない。側面がラウンドフォルムになっているため持ちやすく、握ったときも違和感がない。そして上部や底部がスパッと切り落としたような独特の形状となっているため、バッグの中に入れたケースを手探りで探すといったシーンでも、すぐに見つけ出せる。地味だが嬉しい工夫だ。
そして、この独特の形状を採用しながら、上蓋の開き角をさらに広げられるようにし、イヤホンにアクセスしやすくする工夫も行っている。フラットな外観と両立するため、ヒンジをかなり内側に入れ込んでいる。
そして細かなことだが重要なポイントとして、ケースからイヤホンを取り出す動作も、スムーズに行えるよう改善されている。
前モデルのWF-1000XM5では、イヤホンを取り出す際、少し奥方向に押してから引き上げるような動作が必要だった。このため、イヤホンをつまんだ際に、人差し指が上蓋と干渉することがあった。またイヤホン本体の側面がツルツルしているので、滑って取り出しづらいという欠点もあった。
一方で、AirPods Pro 3のケースと比べると、スピーカー非搭載、防水ではない、探す機能にも対応していないなど、機能面で見劣りするのは事実だ。
体内ノイズを抑制するためアクティブNCとパッシブNCのバランスを変更
続いて、ノイキャンの強さや外部音取り込みについて見ていく。
まず注目したいのは、今回から「世界●位のノイズキャンセリング効果」という言い方をしなくなっていることだ。WF-1000XM5で評価の高かったノイキャン効果をより強め、WF-1000XM5よりも約25%ノイズを低減しているだが、そのノイキャン効果を得るための手法を変えている。
そして、パッシブノイズキャンセリングのノイズ遮蔽への寄与度を、あえて下げたことも大変興味深い。
WF-1000XM5やXM6などが採用しているフォームタイプのイヤーピースは、アクティブノイズキャンセリングがオフのときでも、かなり音を遮断する。つまり、パッシブノイズキャンセリング性能が高い。
それはノイキャン効果を高めるには良い効果をもたらすが、反面、身体の内部の音や、咀嚼音が響きやすいというデメリットもある。パッシブノイキャンが強すぎると、閉塞感が強くなるというトレードオフも見逃せない。
最近、レストランなどで、一人で夕食を摂っている方を観察すると、イヤホンを着けて、動画を見ながら、あるいは音楽を聴きながら食べている人が非常に多い。
イヤホンを着けて食べているときに、自分の咀嚼音がうるさく聞こえてくると、結構なストレスになる。こういったことを改善しようと、あえてパッシブノイキャン性能を抑えたのが、WF-1000XM6の工夫だ。
だが、このようにパッシブNC性能をそれほど高めないようにすると、アクティブNCの効き具合を高めなければバランスが取れない。そこで本機では新開発のノイズキャンセリングプロセッサー「QN3e」を搭載した。これは、XM5に搭載のチップ比で約3倍の処理速度を持つ。
マイクの数も増やした。XM5では片耳のマイクが3基だったが、XM6ではこれを4基にし、フィードフォワードマイクを1基増やしている。また、変化する外部ノイズや個人の装着状態をリアルタイムで分析する「アダプティブNCオプティマイザー」、前述した流線形の本体形状による風切り音対策など、ノイキャンの効果や余計なノイズを抑える工夫が随所に見られる。
それでは、実際にアクティブノイズキャンセルをオンにして、その効果を試してみる。道端で、道路を走る車の走行音をどれだけ消すか確認すると、WF-1000XM6とWF-1000XM5のノイキャン効果は、体感としては同等レベル。たとえばクルマが通過する際の「サーッ」というノイズなど、音によっては、XM5の方がより強く消し去るノイズもある。
注意したいのは、だからといってWF-1000XM6のノイキャン効果が低いというわけではないということだ。駅構内の雑踏、その中を大音量で響き渡る構内アナウンスなど、よりシビアな状況になると、WF-1000XM6のノイズ抑制効果の高さを実感できる。ノイズキャンセリング効果25%アップという数値は伊達ではない。
なおAirPods Pro 3と比べると、WF-1000XM6のほうが、遙かにノイキャンがしっかり効く。アラウンド4万円イヤホンの中で、ノイキャン効果だけで選んでも最上位レベルであることは間違いない。
テクニクスAZ100とも比較したが、やはりソニーのノイキャン効果が上回った。幹線道路沿いや駅の構内、室内など、様々な場所でノイキャン効果を試したところ、どの場所でもしっかりとノイキャンが効いたのはソニーWF-1000XM6の方だった。
ノイキャン効果について、今回試した4機種で順番をつけると、WF-1000XM6の次は僅差でWF-1000XM5となり、このソニーの新旧2モデルは、テクニクスAZ100とアップルAirPods Pro 3の2モデルとは、少し差があるという印象だった。
なおWF-1000XM6には「スピーク・トゥ・チャット」機能も備わっており、喋り始めると自動的に外音取り込み機能になり、音楽のボリュームも下がる。
一方で、ソニーがこだわった、体内ノイズの抑制についてはどうか。実際にノイキャンONにし、HOKAのスニーカーで歩いてみると、前モデルに比べて、かなり接地音が聞こえにくくなったことが確認できた。
また咀嚼音についても、本体やイヤーピースの工夫が功を奏したのか、WF-1000XM5と比べ、かなり抑制された印象。これならスマホを見ながらの一人メシも快適になりそうだ。
とはいえ、AirPods Pro 3で同じように歩いたり食べたりしてみると、接地音はほとんど聞こえないし、咀嚼音が気になることもほぼ無い。AirPods Pro 3と比べてしまうと、体内ノイズ抑制は最高水準というわけではないのが実情だ。
外音取り込みは同ブランド比較では進化したが、トップクラスではない
それでは、外音取り込み機能についてはどうか。実際に試してみると、たしかにWF-1000XM5よりはクリアになっており、改善している。だが、テクニクスのEAH-AZ100と比べてみると、AZ100の方がより自然に聞こえる。
そして、外部音取り込みの自然さについては、あらゆるイヤホンの中で断然優秀なのがAirPods Pro 3だ。AirPods Pro 3の外部音取り込みモードは、イヤホンを着けているかどうかわからないほど自然であるのに対して、WF-1000XM6では周りの音や自分の声がくぐもって聞こえるため、かなり差がある印象だ。つまり、この価格帯でトップクラスとはいえない。
とはいえ、WF-1000XM6でも、周りで何が起こっているかを確認するには十分だし、装着したままで普通に会話できる。AirPods Pro 3が優秀すぎるだけで、前モデルと比べると着実な進化を果たしている。
本体タップ操作は変わらず。機能アサインの自由度は高い
操作感については、これまでと同じく、イヤホン本体を直接タップする操作方法を採用している。ステムをつまむモデルと違い、押すときにショックがあるのは仕方ない。強く押すと大きな音や振動が起きて不快なので、なるべくそっと触れるように慣れるしかない。
タッチ操作のアサインは、アプリから、かなり細かく替えられる。自分だけのWF-1000XM6に育てていく楽しみがありそうだ。
そのほか、本体を装着すると自動的に音楽が再生される「ウェア・トゥ・プレイ」機能も使い方によっては便利だ。再生する音楽ストリーミングサービスやプレイリストは、アプリから指定できる。
また、たとえばスマホとPCなど、2台の機器と同時に接続する、いわゆるマルチペアリングも同時に行えるのだが、そのオン/オフもアプリから行える。
音質チェック。一聴してわかる高音質、正確さと楽しさを両立
さて、いよいよ音質をチェックしていく。
まずは、WF-1000XM6の音質を高める工夫について紹介していこう。ハードウェアの面では、前述のQN3eが受け持っているDAC処理の性能が向上し、S/N比が向上した。また統合プロセッサーV2も搭載し、32bitの音声信号処理により、繊細で豊かな音を表現できるという。
加えて、独自開発の専用設計ドライバーを搭載した。エッジ部に特許出願中のノッチ型形状を採り入れた8.4mmのドライバーで、伸びのある高音域再生を実現したとしている。
そのほかLDACの採用、ハイレゾワイヤレス認定の取得、DSEE Extremeの搭載などは前モデルと同様だ。
こういった特徴もさることながら、今回の音作りで注目すべきは、世界のマスタリングエンジニアと共に音を作り上げたことだ。これは、ヘッドホン「WH-1000XM6」に続く試みとなる。実際にサウンドを仕上げるエンジニアからアドバイスをもらいつつ改良し、音を仕上げることで、アーティストが込めた想いを届けることを狙った。
マスタリングエンジニアと共創して作り込んだという音質がどのようなものか、前モデルのWF-1000XM5やテクニクスEAH-AZ100、アップルAirPods Pro 3との比較をまじえて紹介していこう。
WF-1000XM6の音質は、基本的にはWF-1000XM5のサウンドキャラクターを引き継ぎながら、より完成度を高めたという印象だ。全体的に明朗で快活なサウンドで、聴いていてとても気持ちいい。解像感もありつつ聴き疲れしない。正確だけど聴いていて楽しい、そんなサウンドに仕上がっている。
実際の楽曲で試してみよう。Xiaomi 15とLDACで接続する。Vulfpek「Dean Town」は、ジョー・ダートの高速でファンキーなベースが気持ちよい一曲だ。
一方で、普通のワイヤレスイヤホンでは、このベースを安定して表現するのは難しい。自宅のリファレンススピーカーであるB&W 803 D3で鳴らした音と比べて、WF-1000XM5では、時折ベースのピッチ感が微妙にズレたり、音の強弱がフラフラすることがある。
いっぽう、WF-1000XM6では安定してリズムを刻み、ゆるぎない。太い弦の揺れまでが見えるような、よりリアルな音色で、よりリファレンススピーカーのサウンドに近づいた印象だ。
ほかのモデルで同じ楽曲を聴いてみる。テクニクスのEAH-AZ100は、よりベースの音が深くなり、その点は好印象なのだが、一方でドラムのハイハットの高音が伸びきらず、この楽曲についてはやや全体のまとまりを欠く印象だ。
イヤホンをAirPods Pro 3に替え、iPhoneとAACで接続して聴いてみると、ベースがとにかく軽く、のっぺりしており、本来の分厚い音が再現できない。AirPods Pro 3が最も苦手とする音域だが、それがしっかり露見した印象だ。
再度WF-1000XM6を聴く。ベースやキックドラムなどの低音からハイハット、さらにはハンドクラップやキーボードまでバランス良く鳴らし、なおかつ音楽の楽しさ、グルーブ感も伝えられる。4モデルの中ではダントツの好印象だ。
続いてボーカルを聴いてみよう。ダイアナ・クラール「Desperado」で、まずはWF-1000XM5とWF-1000XM6を聴き比べる。XM5もかなり表現力豊かにこの曲を鳴らすが、XM6では、冒頭のピアノの音色からして違う。キラキラと生々しいピアノの音色が聞こえてきて、ベールが一枚剥がされたような印象だ。
ボーカルについても、XM6は、ダイアナ・クラールの「ハスキーかつなめらか」という非常に再現が難しい声質を、より的確に表現する。このように、XM6の音質は、同じ曲を聴き比べたらすぐ気づくレベルでXM5から進化している。
続いてイヤホンをテクニクスのEAH-AZ100に替えると、まったく音の傾向が変わる。ピアノは倍音成分が強調され、ボーカルもウェットになり、憂いを帯びる。曲の印象が大きく変わるほど違うのだが、どちらも表現としてハイレベルだ。ここまで来ると好みの問題かな、という気がしてくる。
AirPods Pro 3でも、同じ曲をAACで聴いてみる。すると、ピアノの実体感は薄れ、ボーカルのハスキーさが際立ち、深みは薄くなる。声が少し軽くなる印象だ。この曲でも、明らかにWF-1000XM6やテクニクスEAH-AZ100の方が良い。
音数の多い最近の邦楽も聴いてみよう。米津玄師「IRIS OUT」を聴くと、ここでもWF-1000XM6が、解像感と豊かな表現をバランス良く表現することに感心する。米津玄師のボーカルに注目すると、XM6に替えるとザラついた声の質感が際立ち、それに比べると、XM5のややマイルドな声が物足りなく感じる。途中の鍵盤の速弾きも、XM6はしっかり音が分離して聞こえるが、XM5ではやや団子になる。
テクニクスAZ100に替えると、この曲もまったく別モノに聞こえる。ベースがより深く沈み込み、それによって楽曲の基調が安定するのだが、ボーカルはソニーの2機種に比べるとややくぐもった印象。とはいえ、鍵盤の速弾きなどはしっかりと表現できており、これはこれで優秀だ。
最後にAirPods Pro 3。この曲に関しては、AirPods Pro 3の解像感の高さがうまくハマっている印象だ。ザラついたボーカルもしっかり表現するし、ボーカルが半歩近いところから聞こえる印象で、悪くない。余計な色づけはせず、素材を剥き出しで聴かせるような印象だ。
今回の主役はWF-1000XM6なので、その音質についてまとめてみよう。冒頭に記したように、細かな音までしっかりと表現する解像感と、エモーショナルな音楽性の表現の両方を兼ね備えている印象だ。
また特筆すべきは、WF-1000XM6をiPhoneとAACで接続した際も、かなり高い音質を実現していることだ。AndroidとLDACで接続した音と比べるとさすがに差があるが、iPhoneユーザーでも、音質を重視する方なら、WF-1000XM6を選ぶ価値は十分ある。
また、圧縮音源やストリーミングをAIでクリアかつ躍動感ある音に復元するという「DSEE Extreme」も用意されている。アプリから自動/オフの切替ができるので、環境や楽曲との相性を確かめてみると良いだろう。
通話品質も向上。ビームフォーミングでより声をしっかり拾う
通話品質も高めている。まず通話用マイクが片耳2基になり、口元への集音の指向性を持たせた。加えて骨伝導センサーも引き続き搭載。頭から伝わる声の振動を検知し、環境ノイズに左右されずに装着者の声を拾う。
さらに、集音した声は、高精度なAIでノイズと分離、処理。騒音環境下はもちろん、周囲が会話している環境でも自分の声をクリアに届けられる。
また、今回は試せなかったが、LE Audio対応のスマートフォンと組み合わせることで、スーパーワイドバンドに対応。音声の帯域幅を2倍に広げ、より自然でクリアな音声通話を実現する。
実際にビデオ通話で音質を確かめてみた。筆者の声を聴いた編集部員の感想を聞くと、WF-1000XM5でも、すっきりとシャープな声という印象だが、WF-1000XM6に替えると、だいぶ音の印象が異なり、発話者の声がより近く感じられたという。周りの音まで拾ってしまっているXM5に比べ、明らかにXM6の方が、声が聴き取りやすいと指摘していた。
同編集部員によると、WF-1000XM6の通話音質は、AirPods Pro 3に近いという。AirPods Pro 3はご承知の通り、本体のステムの先にマイクが付いている。口元を向いており、距離も短いため、声を拾うには有利だ。声の聴き取りやすさはそれに近いレベルで、まるで近くで話しているような印象だったという。
なお通話については、LE Audio対応スマートフォンとの接続時にはスーパーワイドバンドに対応。音声の帯域幅を2倍に広げることで、より自然でクリアな音声通話をできる。
アダプティブサウンドコントロールなど独自機能も充実
WF-1000XM6は機能も充実している。「Sony Sound Connect」アプリによって、様々な機能の設定やオン/オフが行える。
ソニーのワイヤレスイヤホンの目玉機能といえば、ユーザーの状況やいる場所によって音質やノイキャンの効き具合などを自動調整する「アダプティブサウンドコントロール」が挙げられる。
本機能が導入されたばかりの頃は誤動作も多かった印象だが、代を重ねて、だいぶ洗練されてきた。今回のWF-1000XM6も、もちろんこの機能が利用できる。ユーザーの利用状況を学習して自動的に調整する機能もあるし、自分で細かく設定を追い込むことも可能だ。

また本体タップ操作の割当変更もより自由度が増し、左右それぞれのタップ操作ごとに、好みのものを設定できるようになった。
さらにアプリはイコライザーのバンド数が従来の5から10に倍増。なお音質モードのプリセットは低音を強調する「Heavy」、高音を強調する「Clear」、足音や銃声を強調する「Game」など各種を用意している。

アプリではそのほか、聴覚保護機能のセーフリスニングが2.0になったり、BGMエフェクトを新搭載するなどといった強化も行われている。
Bluetooth機能関連では、Auracastやマルチポイント接続などに引き続き対応。マルチポイント機能は、後から接続した端末が自動的に有効になる“後勝ち設定”に進化したのも見逃せない。そのほか、ボイスコントロールにも新たに対応した。
バッテリーはノイキャンオン時で本体最大約8時間、ケース込み約24時間、ノイキャンオフ時に本体約12時間、ケース込み約36時間使用可能。ワイヤレス充電や、5分の充電で約1時間再生可能なレベルに回復する急速充電にも対応している。
また、満充電せず80%の充電にとどめる「いたわり充電」機能も新搭載。バッテリーが20%以下になった際に高音質化処理などの機能をオフにすることで、使用可能時間を伸ばす自動パワーセーブ機能も新たに搭載した。なおイヤホン本体は引き続きIPX4相当の防水性能を備えている。
音質を重視する方はぜひ試すべき製品
ソニー「WF-1000XM6」の実力をくわしくチェックした。繰り返しになるが、音質はこの価格帯では最高水準。とにかく音が良いモデルが欲しいという方は、最有力の選択肢となるだろうから、ぜひ聴いてみてほしい。
冒頭に、45,000円前後という想定価格が妥当かという問いを立てた。たしかに絶対額としては高いが、音質や機能を考えたら納得だ。人によっては安いと感じるかもしれない。
一方で他の機種と比べてみると、テクニクス「EAH-AZ100」とは音作りの方向性がかなり違うのが悩ましい。ふだん良く聴く楽曲やジャンルによっても、どちらが好きか分かれそうだ。
機能面も他機種と比べてみると、特にiPhoneやMacなどアップル製品ユーザーの場合、それらとの連携機能や、心拍センサーなどの付加価値において、AirPods Pro 3が依然として頭一つ抜けている印象だ。
音質はそこそこで良く、機能面や装着感の良さなどを総合的に判断するiPhoneユーザーであれば、やはりAirPods Pro 3は選択肢から外せない。とはいえ、繰り返しになるが、WF-1000XM6はiPhoneと接続した際の音質も非常に良い。また好みはあるが、ソニーの「アダプティブサウンドコントロール」も、ハマるユーザーにはピタッとハマる機能だ。
なおAndroidユーザーにとっては、上記の、AirPodsならではのメリットはあまり活かせない。Androidユーザーであれば、LDACを使ってさらなる高音質化も可能になる。ソニーWF-1000XM6は、非常に有力な選択肢となるだろう。
総じて、iPhoneユーザーでもAndroidユーザーでも、4万円程度を予算として設定でき、音質を最優先する方は、ぜひ試してみてほしい製品である。
























