公開日 2020/03/24 21:30

新「iPad Pro」レビュー。LiDARや2カメラ、マウス対応など大きく進化

ノートPCからの移行もOK?

iPadとして初めてダブルレンズカメラが搭載された。そして、自動車の安全走行をサポートする新世代のテクノロジーとしても注目されている「LiDAR(Light Detection and Ranging)スキャナ」を、アップルのデバイスとして初めて採用した。

iPadとして初めてダブルレンズカメラを搭載。ふたつのレンズの隣、中央に配置されているのがLiDARスキャナだ

LiDARスキャナは、カメラを向けた方向に目に見えない光の粒子を照射し、跳ね返ってくる光の到達時間を計算して距離を測るためのセンサーだ。iPadのような薄型のモバイルデバイスに組み込むため、アップルはLiDARスキャナの小型化に腐心した。このスキャナは、屋内外で最大5メートルまでの被写体の距離を、素速く正確に測距できるという。

本体を側面から見ると、カメラレンズユニットが高く盛り上がっているのがわかる。iPhone 11シリーズは強化ガラスのケースだが、iPad Proはアルミニウムのケースに囲われている

このiPad Proの新しいLiDARスキャナは、ARコンテンツの再現性を高めるために搭載されている。ほかの2基のRGBカメラによる暗所での静止画・動画撮影に連動して、測距精度を高めるといった用途は想定されていないようだ。

カメラユニットの形状を新旧iPad Proで比較してみた

そしてiOS 13.4/iPadOS 13.4と同じタイミングで、アップルは独自のARフレームワークであるARKitの最新APIを公開する。これからLiDARスキャナを活用するARアプリが続々と増えそうだ。

iPad ProではARアプリがサクサクと遊べる。次期ARKitの最新バージョンからLiDARを活かしたアプリの開発が進みそうだ

新しいiPad ProでいくつかのARアプリを試してみた。速度や精度については今のところ、筆者が所有するiPad Proのパフォーマンスも十分に高いため、あまり大きな差は出なかった。ただ、ARオブジェクトの中に人物が入り込んだときは違いが出た。新しいiPad Proはそれぞれの前後位置関係を計算しながら、境界線を正確に描き分けた。

スムーズな画像編集を実感。Wi-Fi 6対応にも期待

最新のA12Z Bionicチップは4Kビデオの編集や3Dグラフィックスによるクリエイティブワークを強力にサポートできるパフォーマンスを備えた。

8コアのCPUとGPUを統合する最新のSoCには、アップルが独自に設計したパフォーマンスコントローラーと、CPU/GPUの熱を効率よく逃がすための放熱レイアウトを採用する。2017年に発売された第2世代のiPad Proが搭載していたA10X Fusionチップと比べると約2.6倍、2018年発売の第3世代モデルが搭載するA12X Bionicチップとの比較でも、より優れたグラフィック処理性能を発揮できるという。

デジタルカメラで撮影した静止画のデータをiPad Proに読み込み、画像編集アプリの「Pixelmator Photo」でレタッチ作業を行ってみた。筆者がふだん使っている第3世代の12.9インチiPad Proよりも修正処理のスピードが明らかに速い。作業の効率アップが期待できそうだ。

A12Z Bionicチップを搭載するiPad ProはPixelmator Photoアプリによる写真のレタッチ作業がスムーズに行える

ワイヤレス通信は新しいiPad Proから初めてWi-Fi 6(11ax)にも対応する。同じWi-Fi 6対応のルーター機器などを導入すれば映像・音楽配信コンテンツがよりスムーズに視聴できるだけでなく、テレワーク系ツールの安定感も高まりそうだ。なおiPad Proには、メインカメラによるビデオ撮影時の音声や、ビデオ通話の音声もクリアになる、スタジオグレードのマイクが計5基内蔵されている。

新しいiPad ProのWi-Fi+Cellularモデルについては、ギガビット級LTEの対応バンドが29から30に増えた。データ通信のみだがnanoSIMとeSIMによる通信が使えるので、移動の多いビジネスパーソンにとっては、常時オンライン接続が可能なiPad Proが、ノートPCより心強いデバイスになることもありそうだ。

eSIM機能を上手に使いこなせば、iPad Proは出張の多いビジネスパーソンの強力な武器になる

ダブルレンズカメラはiPad Proのため独自に設計

アップルのデバイスには、iPhone 11シリーズから超広角レンズが搭載されたあ。筆者もiPhone 11 Proで、展示会場の全景を撮りたい場面などに超広角レンズを活用している。超広角レンズが搭載されたことで、今後iPad Proで写真を撮る機会も増えそうだ。なお広角・超広角レンズの両方で最大4K/60pの動画撮影も楽しめる。

広角と超広角を組み合わせたマルチレンズカメラというユニット構成はiPhone 11と同じだが、新しいiPad Proの超広角側カメラユニットはセンサーの解像度が10メガピクセルで、視野角はiPhone 11よりも少し広い125度となる。それぞれに仕様が少し違っているのだ。

iPad ProとiPhone 11 Proのマルチレンズカメラを比べるとルックスはけっこう違う

カメラアプリでポートレートカメラを選択すると、フロント側のTrueDepthカメラに切り替わる仕様もiPad Proならではのもの。iPhone 11シリーズとは異なっている。センサー解像度が12メガピクセル、明るさがF1.8という広角レンズの仕様は、2018年秋に発売されたiPad Proと同じものとなる。

True Depthカメラのスペックには変更なし。Face IDによる顔認証機能を備える。ポートレート撮影はTrue Depthカメラのみで行えるのがiPad Proならではの仕様だ

夕暮れ時の風景をiPhone 11 Proと新しいiPad Proの超広角レンズで撮り比べてみた。解像感はやはりiPhone 11 Proの方がやや勝るものの、夕焼け空のきめ細かなグラデーションの階調感、雲の陰影の立体感などはiPad Proもしっかり丁寧に描けている。

iPad Proの超広角レンズ(10MP)と、広角レンズで夕焼けの空を撮影。自然な色合いとグラデーションのきめ細かさはiPhone 11 Proに引けを取っていない


iPhone 11 Proで同じ風景を撮影した。超広角側の解像度や色味の深さはやはりiPhoneの方が一枚上手な手応えがある

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