公開日 2016/12/16 10:30

【第173回】これを選べば間違いない? 「安定のMk-II」オーディオアイテム大特集!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

●FOSTEX HP-A8MK2|実売9万7000円前後

USB-DAC&ヘッドホンアンプのハイエンドの「MK2」モデル。初代は2011年秋の発売、こちらは2016年秋の発売だ。

後ろから見ても同じく

見た目は……たぶんこれもロゴの「MK2」しか違いはないパターン

大きな変更点は以下の2点。
・DACチップをAK4399からAK4490に変更
・DSDネイティブ再生のスペック上限を11.2MHzに向上


チップの変更によって音も多少は変わっているだろうが、チップの世代交代とそれによるスペック向上を素直に反映したマイナーアップデートという理解で良いだろう。

このモデルのポイントは、ヘッドホンアンプ部分や電源部分は“初代から変更なし”というところだ。

アナログのアンプ回路、電源回路の設計手法、増幅素子などは、数年で大幅に進化するものではない。2011年当時に妥協なしにオールディスクリートで組み上げたアンプ、大容量電源トランスなどの物量も投入した電源周りの力は、2016年においても揺るぎないのだ。

一方、デジタル周りは相変わらず進化が早く、チップの世代はどんどん移り変わっていく。特にハイエンド機においては、スペックの平均レベルもどんどん引き上げられていく。

そのため、評価も高い入魂のアナログ部分については、無駄にコストを投じて刷新する必要もないのでそのまま生かし、デジタル部分のみを時代の変化と要望に沿ってアップデートした。このようなアップデート、“Mk-II化”は実に合理的であり、実に「安定のMk-II」だ。

「最新のチップが〜」とか「DSDの11.2MHzが〜」とかには興味がないという既存ユーザーの方は、安心して初代を使い続ければ良いし、同じ感覚の新規ユーザーにとっても初代の中古値下がりという副次効果があり、開発陣も気合を入れて組み上げた自信のアナログ設計を引き続き世に出していける。これは誰も損をしないMk-IIと言えるだろう。

●BURSON AUDIO SOLOIST-SL-MK2|実売4万7000円前後


何も無駄のないシンプルなルックスは初代と変わらず。ぱっと見での変化はボリュームノブの形くらい
初代機が現代理店から発売されたのが2014年の末で、こちらの発売は2015年の末と期間が短い。といっても、こちらの場合は現代理店からの初代機日本導入時期とMK2の間がたまたま短くなってしまっただけである。とてもシンプルなアナログヘッドホンアンプであり、アップデートでも機能が追加されたわけではない。

変更点は一つ「出力を25%向上」、それだけだ。初代は16Ω時で2W×2だったのが、こちらは2.5W×2という数値になっている。それに合わせて電源トランスの容量も25VAから30VAに強化されているが、その他はボリュームノブのデザイン、それに伴って回し心地が少し変わったくらいだ。いわゆる駆動力の向上によってヘッドホンとの相性が出にくくなるなどの理由から、音の違いはある。しかしそれだけと言えばそれだけである。


トランスを筆頭に、表面実装ではなくひとつひとつがっしりとしたパーツで構成された回路
………が、これぞMk-II!
このモデルの場合、初代の時点で何か不満を感じていたユーザーというのはそんなにいなかったのではないかと思う。というか僕自身も初代を使い続けている。初代の時点で100点だったものが110点になったような感じなので、100点の初代でも十分なのだ。しかし今購入するなら初代を選ぶ理由も特にはない。ブラッシュアップという言葉がふさわしい、超「安定のMk-II」だ。

初代からのアップデートの内容が小幅であることには、基本設計が優れており改良の余地の少ないということが現れている。デジタル要素もないし、バランス駆動も搭載していないのでこれからどのバランス駆動端子が主流になるかなんて心配もない。シンプルな内容を高い完成度で形にしたヘッドホンアンプなのである。今の時点で新鮮味はないかもしれないがだからこそ、何年か経ったくらいで古びる部分もない。


今回「安定のMk-II!」といえるモデルをいくつか紹介させていただいたが、最初に述べたように、Mk-IIというのはMk-IIであるが故に派手さはないというか、ニュース性は低い。なので記事として取り上げにくかったりもする。なのでオーディオファンの方々にも見落とされがちかもしれない。

しかし、地味だろうがニュース性が低かろうが良いものは良い。Mk-IIに限らず、目立たないけれど実は優秀な製品は他にも色々とあるはずだ。今後もそういった優れた製品を見落とさないよう、視界を広げておきたい。

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