公開日 2016/07/22 10:00

磁気浮遊オーディオボード SAP「RELAXA530」をオーディオ銘機賞審査員5人が徹底レビュー

【特別企画】圧倒的な効果を実現
井上千岳/石田善之/福田雅光/藤岡 誠/山之内 正
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REVIEW.2 石田 善之


スペーサーやベースボード、さらにはスピーカースタンドなどの存在は重要だが、ボク自身、何か工夫して作れるものは自分で作ることが基本であり、コンポ類のセッティングにはしっかりとした素材で大地やマスの大きな重量物で支えるべき、と考えているため、既製品に対してはあまり関心を持たなかった。

実際、自宅のリスニングルームは、スピーカーシステムとアナログプレーヤーは、床から直にコンクリート打ちした上にセッティングしているし、プリアンプやディスクドライブも枕木の上にセットしている。それからするとフローティングベースRELAXA530は、考え方として逆を行くものであり、正直なところその効果もあまり大きく期待していなかった。 

しかし今回、プリメインアンプを使ってSAP RELAXA530を実際の効果を試したところ、あまりの違いに大変驚かされた。ごく通常のコンクリート造りの建物の中、床材の上に比較的しっかりとしたオーディオラック、その上にマグネフロートされたボードを使うか否か、という試みだったのだが、使うことでまず聴感的なS/N感が向上する。弱音部分が明瞭になり、無音部分に吸い込まれるように消えていく様子を聴き取ることができ、同時に鋭い立ち上がり性もしっかりとしてきて音質向上を感じることができた。

一般的な住宅や集合住宅そのものが振動というノイズの中にあるという現実を改めて思い知ることとなった。



REVIEW.3 福田雅光


オーディオ機器は、スピーカーの振動が床を伝わりラックに設置した機器に影響している。これが想像ではないのは、アナログプレーヤーの再生で発生するハウリングという現象だ。回転を止め、レコード盤に針を下ろしボリュームを上げていくとブーンという発振音の出るレベルがある。そのボリュームの位置が3時で、実際に再生する音量が11時であれば、その差は大きく、これがハウリングマージンである。大きな差があれば問題はなく、マージンはプレーヤーの構造設計の強弱が左右する。

ハウリングは信号入力、振動出力の循環経路により発生する。CDプレーヤー、アンプもプレーヤーほどの現象は発生しないが、ケース内部の回路基板、反応しやすい部品に影響していることが、古くから考えられてきた。

振動対策の理想として考えられてきたのは、機器を空中浮揚させるフローティングだ。エアークッション、マグネット方式、空気が抜けたり、当時は磁力も弱く一長一短も経験してきた。

最近、RELAXA530の効果を調べる機会があった。高級ラックに設置した機器をリラクサのフローティングボードを併用する方法だ。前者はリファレンス的に使うラックで、力のある解像度の高い内容は、多少タイトではあったが機器の特色をよく表現していたと思う。

ところが、RELAXA530を併用して試聴すると、大きな変化が現れた。SN比が高く透明でなめらか音質、空間の広がりが豊かになり楽器の響きがきれいに、音場も澄んでいる。低音、中低音は柔軟な陰影を表現。濁りが少なく歪感の感じられない有機的な音を感じた。

フローティングはメリットもあるが、最終的には機器の脚が設置するボードの性質が関係してしまう。今回の製品は強化ガラスをボードに採用していることも音質的に大きく作用していると考えられる。



REVIEW.4 藤岡 誠


奇妙なほど記憶に残っているのだが、SAP(Strumenti Acustici di Precisione=イタリア)の磁気反発力を応用したフローティング・アイソレーションボード「RELAXA 1」を初めて見たのは2001年のラスベガスCES(ALEXIS PARK)だった。実際にチェックができたのは5年くらい経ってからのことで、何回もの改良が施されたという「RELAXA 4」というモデルだ。

ALEXIS PARK で見た初代モデルとは、フローティング構造やデザインが明らかに相違していたが確実な進化があって感心した。特に、アナログプレーヤーを乗せてハウリングマージンをチェックした時には最高のポテンシャルを発揮した。しかし、課題は残された。プラットフォーム(アイソレーションボード)自体の寸法比が小さく、大型のアナログプレーヤーやアキュフーズなどのプリアンプなどを乗せることができなかったのだ。この点がとても残念だった。

そうしたRELAXA 4を改良した本機『RELAXA530』は、有効サイズの横幅を72mm拡張し、乗せる機器の寸法に対する汎用性が高まった。その上で磁石の高さ調整でボードに埋め込まれた水平器を見ながらプラットフォームの水平調整が可能になった。本機はフローティング・アイソレーションボードとして理想の構造に近いわけで、ここに至って改めて真価を問われることになった。なお、本機は世界限定500台の生産とのことだ。



REVIEW.5 山之内 正


有害な振動を遮断する方法はいろいろあるが、非接触で完全にフローティングさせることができれば、理想的な振動対策になることは疑いようがない。磁気フローティングによってその理想を現実にしたRELAXAのボードは、音質改善効果の大きさが反響を呼び、高い評価を獲得した。

そのRELAXAが久々に復活し、細部の仕様をブラッシュアップした新製品が登場する。大型のコンポーネントにも対応するサイズにまで横幅を広げ、高さ調整機構も新たに導入するなど、用途を広げつつ、進化を遂げている。耐荷重が約30kgと余裕があるので、ハイエンドクラスのターンテーブルやCDプレーヤーなど、重量級コンポーネントとの組み合わせも視野に入る。

従来のRELAXA製品もそうだったが、特に回転機構を持つソース機器では絶大な効果を発揮する。音像にまとわりつく付帯音がすっきり取れてフォーカスの良いイメージが浮かび、低域の立ち上がりもボード挿入前よりも明瞭感がアップして、音色の緩みが消えた。見通しの良い音場再現を目指す人にお薦めだ。

次ページ潜入! 「RELAXA530」製造現場

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