公開日 2016/07/06 11:08

ラズパイ・オーディオ“もう1つの電源供給ルート”GPIOを使って音質向上!

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(17)

もう1つ、電源供給ルートには「GPIO」がある。その2番ピンと4番ピンはDC 5Vの入力が可能で、あわせてGND(6、9、14など複数ある)をつなげばOK。Raspberry Pi用のDACカードには、直接ACアダプタから電源を供給しMicro-Bを必要としないタイプの製品があるが、それはDACボード側に電源を持ちGPIO経由でRaspberry Pi本体に供給しているからにほかならない。

GPIOからDC 5Vを供給すれば、前述したMicro-B電源供給ルートのうちヒューズとパワーMOSFETはバイパスできると考えられる。ボード上で発生しているであろう電磁ノイズのうち、スイッチングレギュレータの存在感は大きそうだが、ヒューズとパワーMOSFETをバイパスするだけでも音質に影響はありそう。この仮説を、ある製品を入手して試すことにした。

Raspberry Pi 2 Model Bの基板。Micro-B端子付近の赤線で囲まれたチップがスイッチングレギュレータだ

「こいつ、動くぞ!それにノイズも……!」

用意したのは「USBシリアル変換ケーブル」、ただこれだけ。USBケーブルに4本ある線から+5VとGNDを取り出し、GPIO 2/4ピンとGNDに挿すという寸法。線の末端がGPIOに差し込める仕様(ジャンパワイヤのメス)になっていれば、改造が一切不要という目論見もある。モバイルバッテリーなどDC 5Vの電源をそのまま利用できるので、GPIOからの電源供給を行う方法としてはもっとも単純・安直な方法ではないだろうか。

筆者が選んだ製品は、Amazonで見つけた「USB to TTLシリアルケーブル 1M(PL2303HX)」という製品。どれだけの電流が流れるか保証はないが、線の末端はジャンパワイヤのメスとなるよう処理済で、加工は一切不要。過電流の件も、モバイルバッテリーを使えばその最大出力値を超えることはないだろう。


Amazon「USB to TTLシリアルケーブル 1M(PL2303HX)」を購入、GPIOポートの4ピンに+5Vを、6ピンにGNDを接続した

Raspberry Pi公式ケースの隙間からケーブルを出せるので、取り回しは意外なほどラクだった
とはいえ、試してみないことには始まらないので、USBケーブルのリード線をテスト機(Raspberry Pi 2 Model B)のGPIOに+5VとGNDをつなぎ、A端子をモバイルバッテリーへ。すると「……こいつ、動くぞ!」というわけで、通常どおりVolumioのシステムが起動した。

もっとも、最初からすんなりと起動できたわけではない。購入したUSBケーブルは0.5Aを超える電流を流さない仕様らしく、Ethernetケーブルを接続していると起動に失敗した。USBメモリを接続している場合もアウト、ローカルの音源はmicroSDカードの空き領域に保存することになる。Wi-Fiアダプタ(WN-G150UMK)は使用できたが、消費電力の大きい製品では起動に失敗するかもしれず、安定性の面からもNASの利用は避けたほうがいい。


USBポートはWi-Fiアダプタのみ、USB DACはセルフパワーのものをシステム起動後に接続すればうまくいく
USB DACも、バスパワー駆動の製品は電力不足で動作しないため、自前の電源を持つコンポーネント製品か、バッテリーを内蔵したポータブル製品を選ぶ必要がある。なお、手もとにあったTEAC HA-P5とOPPO HA-2、Audiotechnica AT-PHA100で試したかぎり、充電機能をオフにして接続すると(内蔵バッテリー駆動モード)支障なく動作した。

あらかじめUSBケーブルとモバイルバッテリーの間に接地しておいたUSBパワーメーターを使い、音楽再生時の電流を調べたところ、0.25A前後に収まっていた。これは再生するフォーマットの違いに関係なく、圧縮音源であってもDSD 5.6MHzなどハイレゾ音源であっても電流はほぼ一定。USB DACの電源(バッテリー残量)さえ注意していれば、実運用上の問題はないだろう。


FLAC 192kHz/24bit再生時のUSBパワーメーター。電流は0.25A前後で安定しており、スムーズに再生できた
その音質だが、Micro-Bから給電したときと比べるとノイズフロアが一段下がる印象。高域の透明感が増し、音場がよりすっきりと見通せるようになる。リムショットの音はパキッとしつつも肌理細かく、フェードアウトする様も自然。ウッドベースの音も沈み込みがより鮮明になり、本来のドライブ感に近づいているように感じた。同じモバイルバッテリーからの給電にもかかわらず、これだけ音楽の表情が変わるとは。

+1.8Vを入力するSoC(BCM2836/BCM2837)が稼働するということは、スイッチングレギュレータは変わらず動作しており、その意味で根本的なノイズ対策とはなっていないが、作業量とコストに比した音質改善効果は大きい。半田ごてが得意ならば、+3.3Vと+1.8Vを直接入力できるよう改造する道もあるのだろうが……他のノイズ対策を含め、模索を続けていくつもりだ。

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