公開日 2016/03/25 12:50

ミニマルアプローチを追求したセパレートアンプ。エソテリック「C-03Xs/S-03」を聴く

同社セパレートアンプのスタンダード機
エソテリック「03シリーズ」のセパレートアンプ「C-03Xs」と「S-03」を鈴木裕氏がレビュー。旗艦シリーズ「Grandioso」の思想と技術を継承しつつ、オーディオコンポーネントの原点に立ち返るミニマルなアプローチを突き詰めた両モデルの実力を検証していく。

「S-03」¥900,000(税別)

「C-03Xs」¥800,000(税別)

■今回の2モデルの概要とポジショニング
人気の一体型プレーヤー「K-03X」と同クラスにあたるセパレートアンプ

Grandiosoシリーズの登場以降、エソテリックはプレーヤーとアンプという双頭のフラッグシップの下に、着々とブランドの再構築を図っているように見える。具体的な製品名としてあげれば、Grandiosoの「P1/D1」というデジタルトランスポートとD/Aコンバーター。これに対応するセパレートアンプが、プリアンプの「C1」とパワーアンプの「M1」、あるいはステレオ・パワーアンプ「S1」が最上位にある。そしてその下に一体型デジタルプレーヤー「K-01X」、対応するセパレートアンプが「C-02X」と「S-02」という存在。そしてその下のポジショニングのデジタルプレーヤーが「K-03X」であり、今回取り上げるのが、その対になるセパレートアンプ、「C-03Xs」と「S-03」である。

■前モデルからの進化ポイント
「C-03Xs」はサイズが大きくなり、ボリュームノブも上級機と同様に進化

前モデル「C-03X」からC-03Xsへの変更点を見ていこう。まずボディのサイズが大きくなった。高さと奥行きだ。これによって基盤や電源部の配置に余裕が生まれ、相互干渉をさらに低下させたり、配置の合理化によって信号経路を短くしている。実はひとつ上のプリアンプ、C-02Xと同じ2層構造で、5分割に分かれたものになった。また、ボリュームと入力セレクターのノブのシャフトには上位のプリアンプ同様、VRDSメカに使われているベアリング機構を応用し、適度な重さを持ちつつなめらかな感触の操作を実現している。

C-03Xsの内部構造(写真右:上段、左:下段)。チャンネル間の相互干渉を排除する左右独立の完全デュアルモノ設計を採用。さらに左右チャンネルそれぞれに専用の電源トランスを用いることで電源ラインを経由したノイズの混入も防いでいる。また電源回路のパターンもGrandiosoの技術を取り入れブラッシュアップした


C-03Xsのボリュームノブと入力セレクターは、無垢アルミブロックからの削り出し。ノブの軸にはVRDSドライブメカの技術を応用した高精度ボールベアリング式コントロールノブを用い、芯ブレのない高精度な回転を可能にしている
そもそも2012年12月にC-03からC-03Xにモデルチェンジした時に、大幅な進化と音質向上を獲得。左右独立のデュアルモノラル設計や完全フルバランス回路、ラダー抵抗切り替えによる音量調節、3つの電源トランスと大容量ブロックコンデンサーの充実した電源部、パワーアンプドライバーとして百分の一秒あたり2000Vも立ち上がるバッファー回路とその安定化電源など、戦闘力の高い要素はもちろん継承し進化させている。


出力バッファー回路には、電流出力能力が高く、スルーレートが2000V/μsというハイスピード素子を採用。バッファー回路は出力ラインごとに独立、XLR出力の場合はホット/コールドをシンメトリー構成として、瞬間的な電流供給能力を最大化している

C-03Xsの背面端子部。アナログ入力はRCA×3(RCA2はAVプリ入力として使用可能)、XLR×2を装備。MM/MC対応のフォノモジュール(¥100,000、税別)も用意されている(サービスセンターにて取り付け)

AB級となった新しい「S-03」は、S-02の技術をほぼ継承

2008年10月に登場したパワーアンプが純A級50W(8Ω)の「A-03」だった。ポジショニングとしてはその後継機にあたるのがS-03だが、S-03はAB級の145W(8Ω)という出力である。語弊を恐れず記すとGrandiosoシリーズのステレオ・パワーアンプ S1を長男とするならば、そのS1のフィロフソフィーとテクノロジーを継承した次男がS-02。さらにその流れでパーツのコスト等に留意した三男とも言える存在がS-03と言っていいだろう。

3機種の共通している点を簡潔に挙げてみよう。まず、5oの鋼板を底板に使い、鋼板とアルミを使い分けたシャーシの基本的なコンストラクション。全体的なデュアルモノ構成や、入力段にバランス構成を取り、低インピーダンスで増幅段に接続する回路の流れ。そして、出力素子として瞬間34アンペアを誇る大型のパイポーラのLAPTトランジスタを片チャンネル5パラ使いした3段ダーリントンのプッシュプル回路。トランスは前段と出力段用に2個搭載し、なおかつ内部の巻き線をそれぞれ左右で分割している。こういった点がこの3兄弟に共通しているのだ。逆に言えば長男と次男・三男のもっとも大きな違いは、エクステリアのデザインとS1が電源部に2180VAの大型トロイダルコアを採用している点と言えるかもしれない。これに対してS-02とS-03ではEI型の940VAのトランスを搭載している。


S-03では、前段とドライブ段の電源部を独立させ、それぞれをデュアルモノ化した4セクション独立の2×2 Dual Monoパワーサプライを採用。また、トランスの2次側巻き線から整流回路に至るまで左右独立のデュアルモノ構成を徹底している

連続動作17アンペア、瞬間動作34アンペアという画期的な電流供給能力を誇る大型バイポーラLAPT素子を採用。パワーアンプモジュールは、バイポーラLAPT素子を5パラレル・プッシュプルとした3段ダーリントン構成となる
ではS-02とS-03の違いというと、細部のさまざまなところ、ということになる。たとえばフロントパネルのスイッチ部の大きさやその照明のシステム。入力端子やスピーカー端子、インシュレーターのクオリティ等々だ。


電源トランスは、カスタム仕様のEIトランスをセレクト。S-02と同様の940VAの大型コアは、巻き線から左右チャンネルを独立させ、内部の5mm鋼板製のベース部にリジッドにマウントする

S-03の背面端子部。入力は、XLRとRCAを各1系統装備。スピーカー端子は、大型タイプを採用して太いスピーカーケーブルにも対応している

次ページ「C-03Xs/S-03」を徹底試聴

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