濃厚なアナログ・テイスト、aurender15周年記念の旗艦ネットワークプレーヤー「A1」の音楽性
2010年に誕生したaurender(オーレンダー)が、15周年を迎えた。音楽データを一括受信して転送負荷やノイズの影響を抑える独自のキャッシング技術をはじめ、ハードウェア/ソフトウェア/アプリを一貫して自社設計する開発体制を貫いてきたaurender。
その15周年記念モデルである「A1 15th Anniversary Edition」、オーディオ評論家の角田郁雄氏による徹底レビューをお届けしよう。
初代機から貫いてきたキャッシング技術を踏襲
ハイレゾの黎明期、2010年にオーレンダーは創業。オーディオ愛好家のDACでハイレゾ再生ができるようにと、どこにも類を見ないハイレゾ・トランスポートを発売。それは、当時のPCオーディオの枠を超え、オーディオコンポーネントであることを鮮明にした。
ハードウェアとソフトウェアの融合が見てとれ、音楽再生に特化したネットワーク制御回路と優れたデジタルオーディオ回路を開発。ハイエンドオーディオであることも鮮明にし、アルバム名やアルバムアートなどを表示するディスプレイを搭載し、のちには、モバイル再生アプリまで開発。さらに近年は、ネットワークプレーヤーやネットワーク・アンプも手がけるほどに躍進した。
そのオーレンダーが創業15周年記念、世界300セットの限定モデル、アナログ・ネットワークプレーヤー(DAC内蔵)「A1 15th Anniversary Edition」を発売した。高品位なロータリー・リモコンも付属。
本体はマットなホワイトシルバーのボディと大型カラーディスプレイがブランド伝統の顔。左右にブラックのヒートシンク・パネルを装着し、スタイリッシュさを鮮明にした。15周年記念ゴールドプレートもあしらわれている。
創業者は、音楽好きでハイエンドオーディオ愛好家でもあるため、常にデザイン、搭載技術、優れた音質と操作性のウェル・バランスを構築してきた。本機は大型セパレート・ネットワークプレーヤーシステムを凌ぐ機能と回路を装備し、レファレンス機にふさわしい佇まいを備えている。
その要素のひとつは、外部NASを使わず、内部ストレージとして「NVMe 500GB」を装備し、2基の2.5インチトレイと外部ストレージ用のUSB3.0ポートを2式搭載することである。十分なストレージ対応である。
デジタル入力も実に豊富。他のポータブルDAPやBluetooth再生機器などとの接続性も配慮し、デジタル入力として、同軸、光TOS、USB、AES/EBU、I2S、HDMI eARC、Bluetooth(AptX Lossless)を装備した。
駆動力の高いプレミアム・ヘッドホンアンプも装備。ストリーミングとして、TIDAL、Spotify、Qobuz、Roon Readyなどの対応が大きな魅力。
その搭載技術の大きな特徴は、ワンボディで、ネットワーク制御回路、デジタルオーディオ制御回路、DAC/アナログ回路を完全に分離した3層構造をとっていることである。下段に前述の外部や内蔵ストレージとなどのデータを扱うネットワーク制御回路を配置。
特筆すべきは、高速処理のCPUと8GB RAM(メモリ)を搭載し、音楽データを再生前に一気にメモリに取り込み、ゆっくりと内部クロックに同期させ、DACで処理できるデジタルオーディオデータを生成することである。ここが一般的なDLNAとは違う、オーレンダーが初代機から一貫して採用してきたキャッシング技術である。
再生アプリ「Aurender Conductor(V5へと進化)」がNASやストリーミングからの音楽データとプレーヤーに完全同期する必要はなく、音切れやデータ転送の負荷、ノイズの影響がない。細切れにされた音楽データは一括伝送され、アプリはプレーヤーに再生指示するだけでよいのである。この技術を使っているため、ストリーミング音源を再生中、A1 15th Anniversary Editionに挿入されたLANケーブルを一瞬抜いても音が途切れることはない。
従来のDLNA/UPnP方式の再生イメージは以下のようになる。


データ転送の負荷やノイズの影響を排除することができるのである。
しかしそんなオーレンダーも、愛好家の多くがNASを使用していることへの配慮から、今回のA1 15th Anniversary EditionでDLNAにも対応した。専用アプリ「Aurender Conductor」でなくとも、一般的なDLNAアプリで、A1 15th Anniversary Editionをレンダラーとした操作も可能となっているのである(専用アプリ、汎用のDLNAアプリ両方で操作が可能)。
後段のDACを完全にアナログ領域とした
中段にも、特筆すべき技術を搭載。単純な同軸、光、XLRなどの外部デジタル入力処理部ではなく、旭化成の「AK4191EQ」を搭載(左右に各1個)。これがデータレシーバーとΔΣ変調器となり、後段のDACを完全にアナログ領域とし、音質に大きく貢献(DAC内蔵のレシーバーとΔΣ変調器を不使用)。ネットワーク制御回路とも分離している。
最上部には、本機のコアを成す完全アナログ領域の大規模なDAC/アナログ回路を配置。こうしたことからも、本国では本機をアナログ・ミュージックサーバーと呼ぶのであろう。
まず感心することは、アルミ筐体に加え、専用アルミ・シャーシに回路を収容したことだ(静寂な2重シールド構造)。
これは、前述の下段や中段のデジタル領域から完全に分離し、音質的な干渉も避けるためである。その回路は、オーディオマインドが掻き立てられる精密感ある左右シンメトリーのフルバランス・デュアル・モノコンストラクションである。中央には、シールドされたFPGA制御による、低位相ノイズ、超安定性の大型恒温槽制御水晶発振器(OCXO)を搭載(外部10MHzクロック入力にも対応)。左右のDACに均等距離で、高精度なクロックを伝送する。
デジタルオーディオ入力信号は、前述のAK4191EQから、左右独立の旭化成のプレミアムDAC素子、「AKM4499EX Quad DAC」(2基/1ch)へ伝送。この素子には、4つのDACを内蔵し、1chで2基使用するため、ホット、コールドで8つのDACが並列駆動。この方式では、同じ素子の並列駆動により、素子単体の性能値よりも、歪み率やS/N値を確実に向上することが特徴。この優位性を実践。DAC出力のI/V変換と後段のローパス・フィルターには、独自のA級ディスクリート・バッファー・モジュールを搭載(12基/1ch)。
さらに、FPGA制御で複数の抵抗を組み合わせるR2Rボリュームも搭載。電源部も壮大だ。DAC/アナログ(左右独立)用/ネットワーク制御・デジタルオーディオ・クロック制御回路用/ディスプレイ・本体制御用を完全分離した、4系統リニア電源部を搭載した。
ひとたび再生すると、この音に引き込まれてしまう
その音質をQobuzで試聴。ボリューム機能は、本機のR2Rボリュームを使い、パワーアンプとダイレクト接続。
楽器においても、その質感が鮮明。トランペットが金属であることやドラムスの表面が革製か樹脂製であるかも分かるほど。その音色は滑らか、かつ濃厚なアナログ・テイスト。テープ再生のようだ。
優れた変換特性により、微細な音が倍音に加わり、格別に豊潤な倍音を放つ。音楽で不可欠な弱音や静寂な音の間も良く再生するため、音楽が深遠。一方、壮大なフォルテシモでは、俊敏な立ち上がりの良さとドライブ力を発揮し、音楽が躍動する。
これらは、正確なクロック・タイミングの効果にもある。全体は、FPGA制御で、多機能豊富なアプリ「Aurender Conductor」でひとたび再生すると、この音と音楽に引き込まれ、オーディオ再生であることを忘れてしまう。
これらが「A1 15th Anniversary Edition」の記念すべき姿なのである。
試聴音源(Qobuz)
1.『The Wind』シミン・タンダー(96kHz/24bit)
2.『Cascade』フローティング・ポインツ(44.1kHz/24bit)
3.『ショスタコーヴィッチ:ピアノ協奏曲』ユジャ・ワン(96kHz/24bit)
4.『Changes』キース・ジャレット・トリオ(192kHz/24bit)
※この記事は『季刊・オーディオアクセサリー201号』からの転載です。オーディオアクセサリーの記事では 、A1 15th Anniversary Editionの予価が掲載されていましたが、その後正式な価格は4,235,000円(税込)と決定された。
(提供:株式会社エミライ)
