公開日 2014/09/08 12:03

BAイヤホンの銘機、Klipsch「X10」が復刻! − ハイレゾ音源でその実力に迫る

【特別企画】兄弟機「X11」「X7」試聴も
中林 直樹
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■「X10」でハイレゾ音源を聴く


では、X10でいくつかのハイレゾファイルを聴いてみたい。プレーヤーはAstell&Kernの「AK120II」を使用した。

筐体にはブランドロゴも

まず、ホセ・ジェイムズの『While You Were Sleeping』を再生。このアルバムはソウルジャズシンガーというこれまでのイメージを大きく裏切るサウンドが特徴的だ。エッジの利いたエレキギターやEDM的なリズムアプローチなど衝撃的な変貌ぶり。ジャズをベースとしながらも、このジャンルの行く末を照射するようなサウンドに満ちている。

ホセ・ジェイムズ『While You Were Sleeping』

一曲目の「Angel」はエレキギターとベースがぐっと前に出てくる。ボーカルはそれらと馴染むようで、程よい粘りも感じられた。声のテクスチャーも荒れることはない。丁寧な歌いっぷりも伝わってくる。また、全体として音空間の密度が高く、同時にスピード感もあるため、まるで音楽に弾力が加わったかのようだった。

沖縄の唄者(うたしゃ)、上間綾乃の最新作『はじめての海』もハイレゾでリリースされた。聴いたのは井上陽水のカバー「海へ来なさい」。X10は、伸びやかな上間のボーカルと力強いピアノ、暖かいコーラスといったこの曲のキーポイントを存分に表現する。特に歌い始める直前の、ふっと息を吸い込む瞬間がリアルで生々しい。

上間綾乃『はじめての海』

次に聴いたのは、ウクライナ出身の実力派ピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァが、マイケル・ナイマン作品に挑んだ『ピアノ・レッスン〜リシッツァ・プレイズ・ナイマン』だ。ピアノ一台で紡がれるミニマルなサウンドスケープ。X10はそのピアノの音色を非常にバランスよく聴かせてくれた。

ヴァレンティーナ・リシッツァ『ピアノ・レッスン〜リシッツァ・プレイズ・ナイマン(Chasing Pianos - The Piano Music Of Michael Nyman)』

また、輪郭が明瞭で音楽がきびきびと躍動しているものわかる。さらに印象的だったのは高域に煌めきが生じていたことだった。まばゆい、と言っては大げさだが、適度な光沢を感じることができた。

フランジタイプのものなど計5サイズのイヤーピース(Oval Ear Tips)が付属

ジャズのヴィブラフォン奏者、ボビー・ハッチャーソン。ブルーノートレーベルで1960年代に数々の名盤を残したアーティストだ。ヴィブラフォンは、つくづく思うが面白い楽器である。クールに響くかと思えば、演奏によっては狂気さえ孕む音色を放つからだ。ちなみに、前者の代表作が『Happenings』(1966年)で、後者はエリック・ドルフィーがリーダーの『Out To Lunch』(1964年)だろう。ともにハイレゾでもリリースされているので聴いてみてはいかがだろうか。

そんなハッチャーソンが実に37年ぶりとなるブルーノート復帰作『Enjoy the View』を発表した。ヴィブラフォン、サックス、オルガン、ドラムスのカルテット。それぞれのプレイが実にビビッドだ。特にオルガン(ジョーイ・デフランセスコ)が凄まじい。フットペダルで低域を奏でながら、時折、稲妻のように高域を割り込ませる。X10はそんなスリリングな演奏を存分に表現してくれる。

ボビー・ハッチャーソン『Enjoy the View』

また、各プレーヤーが押しては引き、引いては押すような奥行きのある演奏をしていることも感じられた。ベテランたちがそれぞれのプレイに耳を傾けながら、息を合わせている、そんな様子が思い浮かぶ。緊張と緩和が一体化したような雰囲気すら漂う。

次ページAK120IIでのハイレゾ音源試聴でX10の実力に迫る

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 XREAL、XREAL Oneが入った「開運福袋2026」を12/11から販売。200セット限定
2 HARBETHの魅力は“声”にあり!色褪せぬエバーグリーンなサウンドを、あえてのアニソンで斬りまくる!
3 5万円で激変、“DCリニア電源”をどう使う?トップウイングの「DC POWER BOX」徹底使いこなし!
4 AVIOT、LDACにも対応した1万円切りの“ピヤホン9”「TE-U1-PNK」
5 mora、ハイレゾ配信12周年キャンペーン第2弾スタート。「ハイレゾ大使」には森口博子が就任
6 『続・太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』#2【後編】- かつしかトリオ『“Organic” feat. LA Strings』リリース記念インタビュー
7 AURAS東京、シアターの常識を覆すかんたん操作&美しいデザインの“エンターテイメント空間”をカスタムメイド
8 LG、リアルタイムAIプロセッサー搭載の4K有機ELテレビ「OLED C5M」
9 【Qobuzダウンロードランキング】ブルーノート東京、夏の風物詩!矢野顕子トリオのライブ盤が1位にランクイン
10 Bowers & Wilkins、「801 D4」を六本木ISETAN SALONEにて特別展示。12/25まで
12/12 10:48 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX