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【特別企画】兄弟機「X11」「X7」試聴も

BAイヤホンの銘機、Klipsch「X10」が復刻! − ハイレゾ音源でその実力に迫る

公開日 2014/09/08 12:03 中林 直樹
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■兄弟機「X11」「X7」はハイレゾ音源をどう表現するのか


さて、X10と同様、iPhone用リモートコントローラーを省いた「X11」「X7」も登場した。シルバー色のX11は、X10と同じBA型ドライバー「Full Range KG 926」を搭載。X10とは異なる新たな素材を採用した新開発のケーブルによりチューニングを施し、フラッグシップという位置づけとしている。

X11

X11でホセ・ジェイムズを聴くと、まず伝わって来たのは低域の太さだ。特にベースはずっしりと重く、音楽にパワーを与えているかのようだ。低域の充実ぶりはヴァレンティーナ・リシッツァでも感じることができた。ピアノという楽器の逞しさすら伝わってくる。以前、あるフリージャズピアニストが「ピアノは最も頑丈な楽器だ」と言っていたことも思い出させるほど、がっしりとした音色だ。

上間綾乃は空間の密度がさらに高まったような印象を受けた。コーラスは厚みがあり、絵具を幾重にも塗り重ねた油絵的なムードを湛えている。

X10との違いを挙げるなら、先に記したように豪快とも言える低域の表現力だ。それはBA型1基から放たれているとは思えないほどである。かといってラフな音にならないところにチューニングの上手さを感じさせる。それに、低域が中高域をマスクしないところも高く評価したい。高域の線も細くなったり、散漫になったりすることがなく、X10よりも音楽全体の密度が高まっているようだ。

一方、X7は爽やかさを追求しているようだ。ホセ・ジェイムズは中域、特にボーカルがすっきりとしている。これをもたらしているのはセラミック製のボディだろう。余分な響きや、滲みが少なく、風通しの良いサウンドだ。後半に登場するエレクトリックピアノの短いソロは、この楽器特有の音の揺れを存分に感じさせてくれた。

X7

ヴァレンティーナ・リシッツァは、やはりX11と対照的な音づくりで、ピアノが晴ればれと響き渡る。中高域にぴたりとフォーカスを当てたチューニングと言える。

最もマッチしたのは上間綾乃の楽曲だ。清々しいボーカルが果てしなく伸びてゆくようだった。沖縄独特のコブシも、その強弱がきっちりと描き出されていた。

今回はX10を中心に検証してみた。そこでわかったのはサウンドもフォルムも、決して色あせていないということだった。その意味で、X10の復活は非常に意義のある、そして素直に喜べる出来事といえよう。

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