サウンドエスパス初優勝! 国内最大規模、エントリー300台超えのカーオーディオコンテスト「ユーロコン」現地レポート
カーオーディオの音質を競う「第12回ヨーロピアンサウンドカーオーディオコンテスト」(通称:ユーロコン)が、6月8日(日)、石川県のこまつドームにて開催された。過去最大の157台、300を超えるエントリーが集まり、磨き上げたカーオーディオチューニングのスキルを競い合った。
カーオーディオコンテストは近年全国で大きな盛り上がりを見せているが、ユーロコンはその牽引役とも言える存在。ヨーロッパのカーオーディオ製品を輸入する5社(佐藤商事、ジャンライン&パートナーズ、トライム、フェリース ソニード、エムズライン)が主催となり、コロナ禍による中断や東西2箇所での開催を挟みながらも毎年開催してきた。
今年からは、韓国のハイエンドオーディオブランドABYSSの輸入を担当する(株)トリアがスタッフとして参加。12回目ともなるとスタッフも非常に手慣れてきて、車両の搬入から審査員の移動の段取りまで、非常にスムーズにイベントは運営されていた。
カーオーディオコンテストが全国各地で開催される中でも、特にユーロコンが人気を集めている理由はどこにあるのか。全国規模の大会であり、全国から音質レベルの高い強豪が集まることはもちろんだが、ドームでの開催となるため全天候に対応できること、そしてなにより審査員のプロフェッショナリズムによるところだろう。
コンテストの前には必ず審査項目や基準を練り直し、よりよい審査のためにどのような課題があるか、運営スタッフも交えて再検討する。コンテストであるため勝者・敗者が生まれてしまうのは仕方ないことではあるが、遠路はるばる参加してくれた方の満足度を高めるためにはどうすれば良いか、何かひとつでも未来に繋がるヒントを渡せないか、スタッフ、審査員一丸となって知恵を出し合うことが、ユーロコンのレベルの高さに繋がっている。
コンテストは、ユーザーカーが参加できるコースとして、価格帯別に分かれた「ユーザープロフェッショナルコース」(S/A/B/C/Dの5コース)、主催する企業別の5コース(その会社の製品を装着していれば参加可能)、それに「アニソンコース」を用意。アニソンコースは第10回目のイベント時に「特別企画」としてスタートしたものだが、大好評を受けていまや定番コース化。昨年に引き続き炭山アキラ氏が審査員を担当している。大友克彦の映画『AKIRA』にも使われる芸能山城組、そして中川翔子の「ACROSS THE WORLD」と、全く違うタイプの2曲が課題曲として選定されていた。
そして、全国の専門ショップのみがエントリーできる「ショップデモカーコース」。今年は23台がエントリーした。この1年間のショップが磨き上げてきた「スキル」が評価される場でもあり、ショップオーナーの視線も真剣そのもの。ここ数年は関西の強豪ショップAV Kansaiが優勝を重ねていただけに、その牙城をどう突き崩すか、各ショップの力量が問われるところである。
主催各社が用意するデモカーも展示されており、エントラントがいつでも試聴できるようになっている。審査員がそれぞれの車につけた点数も公開されているため、審査員が評価した点数と実際の音質を照らし合わせて確認できるのもユーロコンの重要なポイントである。
注目車両をレポート!
いくつか注目の車両についてレポートしよう。AV Kansaiからエントリーの竹松正彦さん。5月には、コンテストに向けてDSPの「勉強会合宿」を主催するなど、自身はもちろんチーム全体のスキルアップに全力を注いでいる。
愛車・ベンツAMGには6ウェイのモレルを装着。6ウェイとはなかなかお目にかかれない本格システム。だがそのサウンドは、複雑なシステム構成を思わせない滑らかで上質な手触り感。「オーディオ的愉悦」に満ちた音、とでもいえば良いのか、解像度高く情報量が豊富だが、バルトークのバイオリンの艶やかさ、マギー・ロジャースの細やかな息のコントロールなど思わず耳を奪われる。休符の静かさも素晴らしくS/Nの良さも美点。カーオーディオのクオリティのひとつの到達点を聴かせてくれた。
同じくユーロコン常連の近藤 彰さん、三菱自動車のデリカ D5でやる気満タンで参加する。モレルのスピーカーをメインに3ウェイで構築しており、特にジェイコブ・コリアーの声の豊穣さは特筆すべきものがある。
モレルを取り扱うジャンラインコースにエントリー、審査員が飯田有沙さんであることを受け、音量も審査員に合わせて少し小さめのレベルで調整。課題曲と審査員に合わせて音を作り込む、「カーコンテストオーディオならではの楽しさと難しさ」を存分に聴かせてくれるサウンドである。
広島から毎年参加している堀田雅雄さん。毎度音を聴かせてもらうのが楽しみな車のひとつである。今回も、アニソンを含む課題曲6曲をたっぷり聴かせてもらったが、何より “歌心” のあるサウンドを響かせてくれる。
マギー・ロジャースの声の深みやリズム感は素晴らしく、しょこたんの歌も新鮮な発見を持って聴かせてくれる。光城精工やサエクの仮想アースなども投入し、さらなるS/Nの向上を狙ったと教えてくれた。聴くたびに発見と進化を感じさせてくれるテリオスキッドである。
トヨタのハイラックスとともに参加する金野さん。近年腕を上げる岩手県のオーディオショップ、ラビッドからの参戦である。地方大会にはこれまでも参加していたが、全国大会へのエントリーは今回初で、新たにヘリックスのアンプを投入してコンテストに挑む。
音作りに協力したラビッド店長の佐々木氏も、「自然な音を意識して音を仕上げてきました」と狙いを語るが、まさに楽器の音色のナチュラルな質感が非常に印象的。キアン・ソルターニのチェロの艶やかさ、ジェイコブ・コリアーの声の厚みもじっくり聴かせてくれる。
今年3月に静岡県藤枝市に立ち上がったばかりのカーオーディオショップ・ウィステリア。大手量販店で勤めてきた大塚氏が新たに立ち上げたショップで、純正オーディオからより一歩進んだ提案を積極的に仕掛けたいと熱意に溢れる。
ウィステリアからエントリーした秋月さんの愛車は真っ赤なプリウス。BLAMの10周年記念モデルを活用(トゥイーターはハイルドライバー!)し、ステレオ感を意識したサウンドステージに特に注力して音を仕上げてきたという。ダッシュボード上に、コンパクトだが精緻なオーケストラが展開するさまはなかなか楽しい。
関東勢も負けてはいられない。茨城県のカーショップ・サウンドウェーブからエントリーの飯田直也さん。「アニソン単騎」でユーロコン初参加である。
「これまでもいくつかのイベントに参加してきまして、審査員の先生方のコメントを元に、左右バランスなどアップデートを重ねてきました。今回は(入賞を)取る気できました!」と気合い十分。ディナウディオのスピーカーにアーク・オーディオのアンプを活用、「ACROSS THE WORLD」しており、特にピアノの質感が柔らかく甘美。アニメの世界観をしょこたんの歌声がしっかり盛り上げてくれる。
東京都荒川区のオーディオファクトリー・サウンドプロ。「媚びない音を目指します!」と店長の竹原啓太氏も力強い。
三菱アウトランダーで参加した渡邊さん、こちらもディナウディオのスピーカーだが、アンプはアビスを投入している。アビスは韓国のハイエンド・カーオーディオブランドで、ほとんど “ホームオーディオクオリティ” のアンプを車載に展開する意欲的なブランド。「VERDI evo+」はAB級のトップエンドモデルであり、カーオーディオ世界の次なる世界を期待させてくれる艶やかさが魅力。
そして16時過ぎにはドキドキの表彰式。自分の作ったカーオーディオの音質がどのように評価されるか、緊張の一時である。
今年は福島県いわき市のカーオーディオショップ・サウンドエスパスが大きく躍進した。ディーラーカー部門で初の優勝、ユーザープロコースSでも優勝を果たした。ショップデモカーはフランスのDSで、車内の内装に合わせて製作した、モレルのユニットを「魅せる」菱形デザインもクール。審査を担当した小原由夫氏も「あの車はいいよ。レベル高い」と漏らすほどのクオリティを実現する。客観的かつ冷静なサウンドながら、見通しがよく楽器の位置関係もよく見えるステージ表現の上手さも印象的な車であった。3年連続優勝を飾っていたAV Kansaiは悔しくも涙を呑んだ。
とはいえ、2位と4位にショップデモカーを送り込むなど、AV Kansaiのレベルの高さは健在。5位に青森・イングラフ、6位に鳥取のジパングと、どこが勝ってもおかしくない強豪が接戦を繰り広げた。
また7位には先述のウィステリアがランクイン。ショップをオープンして1年以内で表彰台に上がるというのはまさに大健闘。総額50万円程度、BMWの純正位置からのユニット交換と、比較的手軽にできる施術でこの結果というのは、まさにチューニングスキルの賜物か。今後の躍進が期待できそうだ。
ユーロコンのエントラントのレベルの高さについて改めて感じるのは、「審査員の攻略」にも大変に心を砕いているということだ。帯域バランスや定位の正確性など、「カーオーディオの基礎体力」をしっかりつけた上で、さらに審査員ごとにボリュームはどれくらいが適切か、低域をどこまで出せば良いのかといった違いまでも気を配り、DSPのプリセットを切り替えて高得点を狙っていく参加者も少なくない。コンテストが以前より先鋭化しているという印象だ。
審査員講評において、今回初めて審査員を担当した栗原祥光氏は、“車もオーディオも持ち主に似るところがある” と指摘し、コンテストという場を通じて車好き、オーディオ好きの人たちと対話できる楽しさを改めて強調。唯一の女性審査員、飯田有抄氏も、「オーディオとしての性能が良いことに加えて、プラスアルファとして人間的なところ、それをどう変化豊かに捉えているか」を重視して審査を行ったと振り返る。
一方でアニソンコースを担当した炭山氏は「愛に打たれた!」とコメント。「(ぐるぐる回る)AKIRAの音を車室内全部に回すのだ! あるいはしょこたんを思いっきり鳴らすのだ!」という作り手の愛が炸裂していた車を評価したとコメントした。
今年もさまざまなドラマが生まれたヨーロピアンサウンドカーオーディオコンテスト。ここで得た確かな “成果” を元に、次なるステージにどう挑むか、音質への終わりなき旅は続いていく。






























