公開日 2025/06/11 06:30

【インタビュー】心震わせるテレビの超大画面化を牽引するTCL。ベゼルレスの没入感が味わえる強力新商品も登場

TCL JAPAN ELECTRONICS代表取締役社長 蒋賛氏に聞く
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トップインタビュー TCL JAPAN ELECTRONICS

テレビ市場が大きく様変わりするなか、躍進が目を引く中国ブランド。なかでも急伸長する超大画面テレビにおいて売り場で圧倒的な存在感を示すのが「TCL」。2024年の85インチ以上のテレビ出荷台数で世界第1位、Mini LEDテレビ出荷台数で同じく世界第1位を誇る。注目を集める2025年度の新ラインナップの導入が520日からいよいよスタート。日本市場参入から10年、さらに勢いを増すテレビ事業に対する取り組みを、TCL JAPAN ELECTRONICS代表取締役社長 蒋賛(ショウ サン)氏に聞く。<インタビュアー 音元出版 代表取締役・風間雄介>

株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS
代表取締役社長
蒋 賛(ショウ サン)氏

プロフィール/1987年 中国湖南省株洲市生まれ。2012年 湖南大学金融・統計学院の大学院修了。20217 TCLグループ入社、20241月よりTCL日本法人の代表取締役に就任。

 

日本市場参入10年。強力商品を全方位で提供できる環境が整った

―― 2015年に日本市場に参入されてから今年で10年、強みとされる量子ドットを搭載したテレビは2019年の発売から6年を迎えました。ここまでの日本市場におけるブランド認知や販売チャネルの開拓について、振り返りをお願いします。

 2015年に正式に日本市場に参入したときに、最初のカテゴリーとして選択したのはテレビでした。1981年に設立したTCLグループは44年の歴史を有します。その中で、2009年に液晶パネルの開発・製造を手掛けるCSOT(華星光電技術有限公司)というグループ会社を立ち上げ、製造から組み立てに至るまで自社で一貫して行っています。さまざまな研究開発に多くの投資を行ってきたテレビは高い技術力を備えていると自負しており、迷うことのない選択でした。

TCL傘下のパネルメーカーであり、また、開発センターでもあるTCL華星光電技術(CSOT) 

日本市場で正式に販売を開始したのが2017年になります。TCLブランドを少しでも早く浸透させていこうと、日本のテレビを取り巻く環境にも視野を広げ、日本市場に対する研究開発を数多く行ってきました。2Kから始まった商品は、4KQLED 4K、そして2023年には115インチの「115X955MAX」を発売するなど、75インチ以上の超大画面を含め、製品ラインナップを日々拡充させており、お客様に多彩な選択肢をご提供しています。

販売にあたっては代理店様のご協力をいただきスタートしましたが、現在では大手の家電量販店やホームセンター、ディスカウントストアなど、数多くのご販売店にご協力をいただくことができ、日本のお客様に対して全方位で製品を提供する環境を構築することができました。

なお、中国本社では163インチのマイクロLED製品もラインナップしており、テレビについては多岐にわたる技術力を備えています。今後、日本市場においても自信を持ってさらなる展開を進めて参ります。

―― マーケティング活動にも大変力を入れていらっしゃいます。

 お客様にTCLブランドをご認知いただき、より深くご理解いただくための手段として、ブランドマーケティングやプロダクトマーケティングに力を入れています。日本市場では2022年からスポーツ分野におけるスポンサーシップを展開しており、2022年にはフィギュアスケートの紀平梨花選手、20232024年にはサッカーの堂安律選手と弊社アンバサダーとして契約させていただきました。

―― 大きなトピックスとして今年発表されたのが、2032年までのワールドワイド・オリンピック・パートナーシップですね。

 今年220日にオリンピックのトップパートナーとなったことを発表しました。今後2032年までの8年間にわたり、この新しいパートナーシップによる革新的なマーケティングやキャンペーンを展開していくことで、日本におけるブランド認知度もさらに高めて参ります。

2032年までのワールドワイド・オリンピック・パートナーシップを発表した 

TCLには世界中のスポーツを支援してきた長い歴史があります。世界各国でいろいろなスポーツマーケティングを手掛け、アメリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどで多くの選手、チームを応援しています。スポーツマーケティングを通し、TCLのブランド理念や製品をより多くのお客様に知っていただくことが目的で、ここへさらにオリンピックというまたとない機会を得ることができました。

―― 「TCL」というブランドに接するチャンスが一段と膨らんできます。

 マーケティング活動はご販売店のご協力もいただきながら、今後さらに力を入れて参ります。今年下半期からは、来年20262月に開催される「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック」に向けた展開に力を入れて参りますので、どうぞご期待ください。

お客様の要望に応える次元にとどまらず、TCL自らがニーズを創造していく

―― 日本のテレビ市場は大きく様変わりしていますが、そこで見逃せないのが中国ブランドの躍進です。その強みとはズバリなんでしょうか。

 中国メーカーの最大の強みは製造力と研究開発力、それに伴いコストをコントロールする力も備えています。私が日本に赴任してから一年半が経ち、そうしたなかで改めて気づいたのは、日本市場や消費者に対して研究する姿勢がどこも貪欲で、多くの知見を有していること。それが、環境に適応した利便性など製品力にも反映され、日々進化しているものと感じました。

TCL JAPAN ELECTRONICSも日本市場参入から10年、技術力や開発力を積み重ね、どこにも負けない製品であるとの自信があります。ここまで代理店様・ご販売店と共に歩み、成長してきました。お客様の豊かな暮らしの実現へ、さらに多くの選択肢を提供していきたいと考えています。

―― 日本市場における存在感が年々高まるなかで、どのような点を重視して取り組んでこられたのですか。

 お話してきたようにブランディングや販売チャネルの構築ももちろん重要ですが、やはり一番大事なのは「製品」だと考えています。お客様のニーズを探究し、どうしたらより満足していただけるのか。そこでの技術はかなり進歩してきたと確信しています。

CSOTが液晶パネルの開発・製造から組み立てに至るまで自社で一貫して手掛けているのは、お客様をより深く知ることができるからです。消費者に満足していただける製品を提供していくためには、そのニーズにお応えしていくだけではなく、「今ならこんな体験もできますよ」と、TCL自らが新たなニーズを開発していくことが重要であると認識しています。

―― 424日に今年度の新製品として、量子ドットMini LEDを採用した大画面4Kテレビ 「X11K」「C8Kシリーズ」「C7Kシリーズ」「C6Kシリーズ」、4Kテレビ「Pシリーズ」を一挙に発表されました。大きな注目を集めるなか、520日よりいよいよ店頭へ導入され、発売が開始されました。

これまでの液晶テレビの外観を刷新するモデルとしても注目を集める「C8K」。非表示領域を極限まで狭めることで、視野が広がり、瞬時に没入感溢れる映像体験を楽しむことができる 

 テレビで重要となる三大ポイントは「画質」「音質」「デザイン」です。新製品の中から代表して「C8K」についてご紹介させていただきますと、画質については、最大3,840分割のプレサイスローカルディミングという新しい技術を採用し、OLEDの画質に限りなく迫る圧倒的な高画質を実現しています。

音質については、Bang & OlufsenB&O)と共同開発した音響システムを搭載しています。B&OTCLのテレビ専用にスピーカーの設計と高度なチューニングを行い、包みこまれるような音響空間を実現しました。

新たに採用するCrystGlow WHVAパネルは、優れた映像表現を実現いたします。そして、これに留まらず、他のメーカーには真似のできない、非表示領域を極限まで狭めた“ほぼゼロの黒枠”を実現する「Virtually Zero Border」の新技術により、没入感のある視聴体験を提供します。さらに、ボディの薄さのみならず、背面のデザインにも考慮して、空間に映像を切り出したようなレイアウトを可能にします。

―― 店頭で商品を体感されるお客様からの反響が楽しみですね。

大画面の魅力を伝えるお客様とのコミュニケーションがより大切に

―― 強力な新商品が揃いましたが、日本市場において今後、どのような点に重点を置いた展開をお考えでしょうか。

 今後の方向性は、製品についてはかなり進歩してきた手応えあり、次のテーマとなるブランディングとチャネル開拓により力を入れていきたいと考えています。弊社の基本戦略としてまずはラインナップが豊富であること。より多くの選択肢をお客様に提供することを目指していますが、そこで同時に重要になるのがお客様とのコミュニケーションです。

大画面テレビをお客様に選んでいただくにあたり、住環境をはじめとするさまざまなハードルが存在します。しかし、そこで我々が考えていること、お客様に伝えていることは、大型のテレビを楽しむために、必ずしも大きな家や部屋が必要になるわけではないということです。

いろいろなコミュニケーションを通してお伝えしていくなかで、やはり一番のタッチポイントとなるのは、製品を実際に体験していただく店頭です。そこでの体験から、「このテレビ大きいね」ではなく、「大画面で見るって楽しいね」と心の底から悦びを実感していただきたい。そうすることができれば、大画面テレビを受け入れていただくハードルがぐんと低くなります。

「『大画面で見るって楽しいね』と心の底から実感していただきたい」と訴える 

製品の研究開発と同時に、その魅力をお客様にどう伝えるかがとても大切です。例えば、大きな画面だと画質が悪いといったイメージをお持ちの方も少なくないようですが、大きな画面にすることで、さらなる価値が手にできることを知っていただきたい。また、大きなテレビには大きな部屋が必要、うちには導入できないといった認識に対しても、TCLでは研究開発による適切な視聴距離を導き出しており、98インチなら約3メートルあれば十分快適に視聴できますし、75インチなら約2.3メートルが目安になることをお伝えしたいです。

―― 超大画面化やさらなる高画質化が急速に進展していることから、正確な情報が多くのお客様に十分に届いていない可能性は否定できないですね。

 大きいテレビだと目が疲れやすいと考えていらっしゃる方もいますが、実はそうではありません。大きくなることで見やすくなりますし、むしろ、スマホなど小さなスクリーンをずっと見続けている方が、目に対する負担が大きく疲れてしまいます。

今後、お客様に対して、このような大画面の魅力や正しい知識を、実際の体験を通して知っていただくことが非常に重要だと考えています。今、日本のテレビ市場は大きく変化しています。市場規模そのものにはあまり変わりはないものの、サイズ別構成比に変化が起きていて、75インチ以上の大画面が急成長しています。そこではTCLが約25%の数量シェアを占め、けん引役をつとめています。

―― 大画面の魅力の啓発へ向けて、先ほどお話しいただいたスポーツマーケティングのほかに、どのような施策をお考えですか。

 大きく3つのテーマに力を入れて取り組んでいます。1つ目はインフルエンサーへの対応です。実際に商品を体験して、魅力を拡散していただきたい。TCLというブランドをまだご存じない方も少なくありませんから、TCL製品をより多くの方に知っていただく機会になると考えています。

2つ目は、TCLが信頼できるブランドであることを、これはオンライン、オフラインを問わず、地道に勝ち得て参ります。そして3つ目に挙げるのは、店頭においてTCLの製品をより多く展示いただけるように強化していくこと。お客様とのタッチポイントを増やし、体験していただける機会を充実させていくことは、TCLを皆さんにもっと選んでいただけるブランドとしてさらに成長させていく土台になります。

新規商品ジャンルにも虎視眈々。プロジェクター、エアコンが導入間近

―― 冷蔵庫、洗濯機などテレビ以外のカテゴリーも順次、日本市場への導入が進んでいます。今後の展開についてお聞かせいただけますか。

 TCLグループは、テクノロジーとインダストリーの2つのグループに大きく分けられます。テクノロジーの下には先ほどお話したCSOTや、TCLセントラルという半導体を製造するメーカーがあります。売上げは昨年の実績で、テクノロジーが3.2兆円、インダストリーが3.1兆円、合わせてグループで6.3兆円になります。

インダストリーの商品カテゴリーは非常に多岐にわたり、映像機器のテレビとプロジェクター、音響機器のサウンドバー、モニター、白物家電も冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど多くのジャンルにわたります。

日本市場には昨年、モニターを導入しましたが、弊社の研究スピードは早く、今年末までにはラインナップが揃えられる予定です。また、早ければ今年の7月から8月に、日本でも人気が上昇しているプロジェクターの市場導入を計画しています。

日本市場初となる量子ドットMini LED液晶モニターを昨年11月に発表。今後、ゲーミングモニターのラインナップもさらに拡充していく構え 

白物家電では、エアコンを日本の規格を満たすように現在、研究開発を進めているところで、今年末の導入を目指しています。すでに導入している冷蔵庫、洗濯機については、多くのお客様から高い評価をいただいており、今後、大型や高付加価値の製品ラインナップを拡充していく計画です。

TCLは総合家電メーカーですから、日本市場において高い評価をいただいているテレビのみならず、今後もさらに導入する商品ジャンルを拡大し、総合家電メーカーとしての実力を示していきたいと考えています。

―― 日本市場におけるさらなる躍進へ、意気込みをお願いします。

 TCLは今申し上げましたように、テレビのみならず、いろいろな製品を手掛ける総合家電メーカーです。今後日本市場において、エアコンやプロジェクターなど新ジャンルの製品を順次展開していく方針です。

TCLには総合的な技術力があり、日本のお客様により多くの素晴らしい体験を提供していくことができると確信しています。そして、製品による体験だけにとどまらず、今後はさまざまなサービスをさらに充実して参りますので、どうぞご期待ください。

そして、TCL JAPAN ELECTRONICSのみならず、TCLグループとして、今後も技術開発により革新を重ね、お客様により多くの素晴らしい選択肢を提供できるよう、全力で取り組んで参ります。

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