HOME > レビュー > オールECLIPSEで作った、富士通テンが考える“理想のドルビーアトモス”。本社新試聴室で堪能

“DSP補正”を廃したサブウーファーにも改めて注目

オールECLIPSEで作った、富士通テンが考える“理想のドルビーアトモス”。本社新試聴室で堪能

公開日 2016/01/19 11:18 編集部:小澤貴信(コメント提供:鴻池賢三氏)
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ECLIPSEのサブウーファーは過渡特性を追求して余計な信号処理を避けた結果、DSPやイコライザー機能を省いたことはもちろん、サブウーファーを使う上では必要な機能とも言えるローパスフィルターも完全にオフにすることが可能になっている。

ECLIPSEの旗艦サブウーファー「TD725SWMK2」

その上で、ローパスフィルターをやむを得ず使用するシチュエーションも考慮し、ここでも独自の工夫が施されている。「ECLIPSEはローパスフィルターを2次フィルターで処理しています。一般的なサブウーファーでは3次以上のフィルターを用いて急峻にハイカットを行っていることがほとんどなのですが、これだと立ち上がりがなまってしまいます。ですからECLIPSEのサブウーファーは過渡特性を最重要視して2次フィルターでのローパスを行っています」(城戸氏)。

ちなみに高次のフィルターを使ってローパスを行うのは高域の“漏れ”を防ぐためだが、ECLIPSEではユニットの特性を向上させることで、高域の漏れを機械的に抑えているのだという。

イコライザー機能や音場補正機能を搭載しないということは、その分、“いい音”を出すための手間がかかる。例えば定在波の問題を解決するには、定在波の影響の少ないポジションを探るという手間や設置スペースの余裕が必要になる。そのことをECLIPSEは否定しない。扱いやすさを優先して音質が犠牲になることは、この価格帯の製品ではふさわしくないとECLIPSEは考えているのだ。

白井氏は「それでも将来的には、電気的な処理も視野に入ってくるでしょう」とも語る。原理主義的にDSPを避けているのではなく、あくまで「現在のDSP技術では音質のトレードオフが避けられない」という判断なのだ。加えて、機械的なアプローチを極める前に電気的な補正に頼ることは、ごまかしにしかならないという考えを持っている。「アナログの世界を極めてから、その先に初めてデジタルのアプローチがあるのだと思います。ECLIPSEのスピーカーはフルレンジを最良の方法として貫いてきましたが、それを究めた上でのマルチウェイ・スピーカーにチャレンジするというのはあり得るでしょう」。この言葉に、これまで築き上げた技術に拘泥することなく、純粋に正しい音を追求するECLIPSEの姿勢が表れている。

オールECLIPSEのアトモスサウンドを堪能する

そしてお待ちかねのオールECLIPSEによるドルビーアトモス再生の視聴だ。詳細な音質レポートは、同日に取材を行ったAV評論家の鴻池賢三氏のコメントを次ページで紹介したい。ここでは記者の感想も記しておく。

オールECLIPSEの[5.1.4]システムで、ドルビーアトモス収録BDを中心に試聴を行った

2Lレーベルの5.1ch収録BDオーディオ『MAGNIFICAT』を、アップミックスでドルビーアトモス再生する。収録されているのは、天井の高い石造りの教会で歌われる聖歌隊のコーラスだ。このソフトはオーディオセッション in OSAKAのシステムでも試聴してそのクオリティに感心したのだが、この試聴室で聴くと、まず広がる空間の大きさと精度の次元がちがう。コーラスは天井のはるか上空まで響いているようで、目をつぶって聴くと、そこに教会の高い天井が広がっているような錯覚さえ覚える。何より、スピーカーの存在をまったく意識させないことには驚かされた。

サブウーファーのチェックには、映画BD『U-571』をアップミックス再生した。潜水艦内の緊迫感が生々しく伝わるのは、一般的なサラウンドシステムではただ「超低音」としか感知できないであろう水中での機雷の爆発音の中に、潜水艦との距離感や、映像とリンクする微妙なタイミングが情報として含まれているから。先ほどの解放感とうって変わった、閉所での生々しい圧迫感を描写してくれるところにもこのシステムのポテンシャルを感じる。

アトモス収録BD『マッドマックス/怒りのデスロード』のおなじみの冒頭シーンは、スピード感溢れるシークエンスのダイナミックかつシームレスな音場の一体感と、トカゲが地面を這う音などの微細な物音の対比が素晴らしい。また、主人公マックスの脳内で囁きあう“声”の浮遊感や遠近感がリアルで、自分の体験のように心象風景に没頭できる。眼前に広がる広大な空間と意識の深層に迫る心理的な声の距離感のコントラストも、他では味わったことのない体験だった。

白井氏はオールECLIPSEのアトモス再生について以下のように説明する。「例えば写真は1つ1つの画素ににじみがなければこそ、拡大しても美しいものです。ドルビーアトモスも同じことで、多数のスピーカーを立体配置することで各chの音を補い合えばいいというのではありません。9個のスピーカーと1基のサブウーファーが、すぐれた過渡応答によって滲みなく波形を再現するからこそ、その集合であえる立体音場もにじみなく精緻に再現できるのです」。この言葉は、ECLIPSEのサラウンド再生における思想を端的に表していると感じた。

オブジェクトオーディオでは、チャンネル数が増えることに加えて、それが立体的に展開するため、位相やタイミングはさらにシビアになる。サラウンド再現はさらに複雑化することは容易に想像できる。ECLIPSEのスピーカーとサブウーファーの優れた過渡応答や正確な波形再現は、オブジェクトオーディオ再生において大きな強みとなる。この点を強く実感させられた試聴となった。

次のページでは、AV評論家の鴻池賢三氏が、このECLIPSE試聴室に構築されたドルビーアトモスのサウンドをどのように分析したのかをお伝えしたい。

次ページ鴻池賢三はECLIPSE試聴室のドルビーアトモス再生をこう聴いた

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