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“DSP補正”を廃したサブウーファーにも改めて注目

オールECLIPSEで作った、富士通テンが考える“理想のドルビーアトモス”。本社新試聴室で堪能

2016/01/19 編集部:小澤貴信(コメント提供:鴻池賢三氏)
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ECLIPSEを手がける富士通テン・神戸本社の試聴室が、本格的なドルビーアトモス再生に対応するための改装を実施した。正確な波形再現を追求したECLIPSEのスピーカー&サブウーファーで構築されたドルビーアトモスのサウンドはどれほどの音なのか。またDSP対応サブウーファーが増える中で、DSPをあえて搭載しないECLIPSEのサブウーファーが改めて脚光を浴びるのにはどんな理由があるのか。神戸本社の取材を通して、現在進行形のECLIPSEを確認した。

富士通テンの神戸本社に設けられたECLIPSEの開発試聴室。トップスピーカーを設置するための改装工事が実施された

富士通テン本社に構築された“理想的なアトモス再生環境”

ECLIPSEを手がける富士通テンは、神戸本社の開発試聴室をオブジェクトオーディオに対応させるために改装を実施。この秋より、ドルビーアトモスやDTS:Xなどの本格再生が可能になったとの連絡を受けた。編集部はオールECLIPSEのアトモスサウンドを体感するべく早速神戸に赴いた。そして、オブジェクトオーディオの現状を踏まえつつ、あらためてECLIPSE開発メンバーのお話を伺うことができた。

記者は11月初旬開催の「オーディオセッション in OSAKA」にて、オールECLIPSEのドルビーアトモス再生を初めて体感した。ホテルのホールに一時的に構築された環境ながら、ECLIPSEによるアトモスの精緻な立体音場再現は想像以上のものだった(オーディオセッション in OSAKAにおけるECLIPSEブースレポート)。だからこそ、試聴室として本格的に作り込まれたオールECLIPSEのアトモスサウンドはどれほどのものか、期待が膨らんだ。

富士通テンの神戸本社の開発試聴室は、いわゆるオーディオ専用試聴室というよりは、広大な録音スタジオだ。広さはゆうに50畳はある。前方にはステージが用意され、隣室には録音スタジオが併設されている。実際にミュージシャンを呼んで、この場所で録音が行われることも多いという。同社は“音感教育”として、ミュージシャンが演奏する“生音”と“録音された音”の違いをエンジニアが正確に知ることができるプログラムを用意し、ホーム/カーオーディオにおける音作りにフィードバックしているのだという。

スタジオに入ると、天井から突き出した鉄製ポールに設置された4基のTD510MK2がまず目に入った。ご存じの通り、TD510MK2はかなり大型のエンクロージャーを備えたスピーカーで(質量は1本で約9.5kgある)、天井への設置例というのは専用室でもなかなかお目にかかれない。ちなみにオーディオセッション in OSAKAのブースでは、鉄製の“突っ張り棒”にTD508MK3を設置していた。

トップフロントとして設置された「TD510MK2」。天井に取り付けられた金属製ポールに設置されていた

グランドレベルに用意されたのは5本のTD510ZMK2と、同じくECLIPSEのサブウーファーである。TD510ZMK2とTD510MK2の違いはスタンドの有無のみ。この試聴室ではTD510MK2を9本用いた「5.1.4」のドルビーアトモスが構築されているわけだ。事実上のECLIPSE最新鋭スピーカーであるTD510MK2が9本揃ったということは、同社システムで考え得る最高のアトモス環境が構築されたということだ。なおサブウーファーは、TD510ZMK2に合わせて同クラスのTD520SWを用意するのが一般的だが、ここでは試聴室の広さや視聴人数を加味して、フラグシップモデル「TD725SWMK2」が組み合わされた。

こちらはトップリアとして設置された「TD510MK2」

トップスピーカーのTD510MK2は、床から約2.6mの高さに設置されている。試聴室の天井高は1番高いところで約3.5mあるのだが、ドルビーアトモスの設置基準や試聴室の梁などを加味した結果、この高さに揃えられたのだという。トップフロント・スピーカーは、地上のフロントスピーカーのほぼ真上。トップリアは地上のサラウンドスピーカーの真上よりやや外側に配置され、いずれも設置角度は視聴ポイントに向けられている。どちらかというとフロントハイト/リアハイトに近いと言えるポジションだ。このトップスピーカーの設置位置は「アトモスに加え、DTS:XやAURO 3Dなどの推奨位置をを考慮しつつ、実際の聴感も踏まえてこのポジションを決定した」とのことだった。

サブウーファー「TD725SWMK2」とのクロスオーバーは50Hzに設定。TD510ZMK2とTD510MK2はかなり低い帯域まで再生できるため、スピーカー本来の持ち味を最大限活かすべく、サブウーファーはあくまで最低域のみを担当するように設定されている。急峻なクロスオーバーを避けた理由には、音楽ソースとの相性を重視した結果でもあるという。

定在波の問題は試聴室の設計段階で回避されており、スタジオ用途として残響時間まで計算されている。これだけのエアボリュームを確保しつつ、理想的なスピーカー配置を行ったドルビーアトモス再生環境というのは、国内でも希有であろう。富士通テンは、スピーカーおよびサブウーファーの開発を行う下地として、最新フォーマットに対応した理想的なオブジェクトオーディオ/立体音響再生環境を整えたのだ。

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