かのジョージ・ルーカスは、「映像と音声は50:50でなくてはならない」と唱え、貧弱だった映画館の音響クオリティを一定水準以上に引き上げるためにTHXを生み出した。音の大切さを示す金言と言えよう。

薄型テレビ時代を迎え、高精細、高画質、低消費電力と、全てが進化したかのようだが、実は、その薄さゆえに音質が犠牲になった。一般的に低音の迫力は、十分な容量と強度を持ったスピーカーボックスが必要となる。技術開発が進んだ結果、一昔前に比べれば薄型テレビの音質は随分向上したが、それ以上に薄型化するテレビのトレンドについて行けていないのが現状だ。シアターラックと呼ばれる、テレビ台の形をしたホームシアターシステムが人気だが、裏を返せばテレビの音が貧弱という証でもある。本音を言えば、テレビ本体の音質が高ければ、壁掛けでも良い音が楽しめるわけで、それに越した事は無い。

 

LED AQUOSは画面を複数のスピーカーユニットが取り囲む「ARSSスピーカー」と新開発サブウーファー「Duo Bass」を搭載。音質にもこだわっている
LXシリーズでは、6スピーカーというこれまでに無く凝った構成の「ARSS」システムが新しい。これは、複数のスピーカーで画面を取り囲み、画面の中から音が出てくるかのように聴かせるというものだ。

映画館のスクリーンには無数の穴が開いていて、セリフを中心とする声や音は、この穴をすり抜けてくる事で、映像と音のマッチングを図っている。それに対して薄型テレビは大画面化に伴い、映像とスピーカーの位置が大きく離れ、違和感を覚えることがあった。特に、ベゼルの細さと省スペースのため、画面下にスピーカーを配置したアンダースピーカータイプでは、この傾向が顕著に表れる。ARSSはこのような問題を鮮やかに解決してくれる。

LXシリーズがARSSを採用した背景を考えてみると、トレンドに流される事なく、映像にふさわしい真の「音」を問うた時、自ずと答えが出たということだろう。

 

またもう一つ特筆したいのは、低音を受け持つウーファーに「Duo Bass」を採用したことだ(40V型を除く)。DuoBassは、スピーカーユニットを背中合わせに結合させ、振動をキャンセリングする技術。キャンセリングの発想自体は珍しくなく、多くのサブウーファーで採用されているが、Duo Bassでは、ユニットをダイレクトに結合する事で、無振動と言っても良いくらい正確にキャンセリングしている。筆者も実際のウーファーに触れてみたが、とても音が出ているとは思えず、感嘆の声を上げてしまうほどだった。

 
Duo Bassの仕組み。二つのユニットを対向配置させ、振動をキャンセルすることができる   従来のウーファーユニット(左)とDuo Bass(右)の比較。容積が飛躍的に上がっていることが一目でわかるはずだ

言うまでもなく、振動はオーディオ信号に濁りを発生させ、音質劣化の原因となる。Duo Bassによる画期的な低振動駆動方式は、シャープが長年培ってきた1ビットデジタルアンプの澄み切った音を曇らせる事なく、高品位なオーディオ再現を可能にする。