タイトル画像
 
ユーザーレポート
惣野正明さん(東京都目黒区在住)
見出し
惣野邸のAGS
惣野邸のAGS。リスニングポイント後方の壁面前に設置

まずは、AGSの効果を開発当初の段階より評価され、いち早く導入を決めた惣野正明さんである。オーディオファンである以前に音楽ファンの惣野さんは6年間のニューヨークに滞在中、毎夜のようにライブハウスに足を運んだという。

そんなご自身にとって理想のオーディオルームはライブハウスの音場を再現すること。そのため、オーディオ装置と同様に部屋の重要性を理解し、スピーカーの位置や向きの調整から、自作や市販のルームチューニング材を駆使するなど、ライブハウスのかぶりつき席の音場に一層近づけるための試行錯誤を続けていた。

そんな惣野さんの部屋における一番の悩みがリスニングポイントでピアノの低域の和音がつまって聴こえることであった。そこでAGSに興味を持ち、奥行60cmの柱状拡散ユニットを部屋の後方面に導入したのが昨年夏のこと。低音域のディップが見事に改善され、聴感上でも顕著な効果を確認。測定でも55Hzおよび100Hz付近のディップが大幅に改善されている様子がわかった。

上記のようにAGSの導入後、部屋の前面にも柱状拡散体を設置できないかと惣野さんは考えた。その要望を受けて、日東紡音響エンジニアリングが新たに開発したのが、今回紹介する「アンク」である。ここでは惣野さんから同製品を導入するに到る経緯とその効果について伺ってみることにした。

 

【惣野邸について】


自由ヶ丘近郊の閑静な住宅街にあるオーディオマニアの間では“メッカ”として知られる約40畳のオーディオルーム。オーナーの惣野さんはJBLユニットによるマルチアンプ駆動スピーカーの使い手としても有名で、左右各々5つのユニットを10台のパワーアンプ(Viola Bravo / Legacy)で駆動し、オーディオ再生には限界がないと思わせるほどの音響空間を実現している。

 
導入プラン1
部屋の前面、スピーカーの間に4枚設置

従来の拡散材と入れ替えが可能で癖が乗らずフラットな特性を実現

田中伊佐資さんのレポートにも記載があったように、定在波が出て悩んでいた時期に、AGSを部屋の後面に導入して効果があったので、その効果をさらに高めたいということで、部屋の前面への対策を計画しました。

しかしながら、厚さが60cmもあるAGSを、部屋の横や前に設置することはできません。そこで、従来から設置していた60W×120H×23Dcmの既製品のスリット型音響拡散材と入れ替えできるサイズの柱状拡散体を日東紡音響さんに依頼しました。そうして出来上がった製品を、まずは合計240cmの幅に計4枚のパネルを設置しました。

前方壁面中央に導入されたアンク
前方壁面中央に導入されたアンク(4基)

これにより、私の部屋は後面のAGSと前面に設置した新しい拡散体で挟み込むような環境ができ、前後方向の定位感や距離感がわかりやすく出るようになりました。また、以前設置していたルームチューニング材のような癖も乗りません。

聴感的にも特性的にも低域〜高域までフラットになり、部屋全体にわたって癖が乗らなくなりました。中高域の鳴きもなくなり、聴きやすく、音色も良くなったのです。

部屋にエネルギーがみなぎったかのように音楽が弾み出したことから、この製品を「ANKH(アンク)」(古代エジプト語で“生命の源”)と名付けたところ、日東紡音響さんに製品名として採用していただけるようになりました。

 
導入プラン2
左右の一次反射面に1本ずつ設置

今まで対策を悩んでいた部分 − ボーカルや楽器のにじみが取れた

スピーカーから出た音が直接左右の壁に反射する部分に発生する一次反射面は、今まで何も対策をしていませんでした。この部分が音に大きな影響を及ぼすことは分かっていたのですが、何を設置しても癖が出てしまったのです。

そこでアンクを2本左右に設置したところ、これが見事にハマり、ボーカルや楽器のにじみが取れて、非常に聴きやすくなりました。

高さに関しては120cmのものと、特注で作って頂いた60cmのものを連結して180cmにしてもらいました。といいますのは、120cmですと僕のスピーカーの場合、高域部分が高さ的にカバーできないのです。他のルームチューニング材でもそうだと思いますが、スピーカーの高さをカバーするサイズのものを使用した方が、その効果は最大限に発揮できるはずです。

スピーカー左右の一次反射面に導入されたアンク(120cm高と60cm高を連結)
スピーカー左右の一次反射面に導入されたアンク(120cm高と60cm高を連結)

今まで一次反射面をどうしたらいいのか悩んでいましたが、アンクがこの問題を一挙に解決してくれました。

 
導入プラン3
前面のコーナーに専用モデルを各1枚設置

もっとも顕著な効果を発揮 − 全体の定位感がさらに向上

部屋のコーナーについても、音質に大きな影響を及ぼすことはわかっていましたが、オーディオルームに関する雑誌の記事などを読みますと「吸音しなさい」と書いてあります。そこで部屋のコーナーに関しては、吸音材をさんざんテストしたのですが、いずれも奥行きや広がりが狭まって、音がセンターにかたまってしまうのです。それが嫌なので外すのですが、そうすると定在波がたまってしまいます。

そこで一次反射面で効果を発揮したアンクをコーナーに使ったら、必ずプラスの効果があるはずだと思いました。実際に図面を描いてコーナー専用を作ってもらい、設置してみたら非常に当たりました。前後左右がスーッと広がり、かといってセンターが薄くなるわけではありません。全体の定位感もさらに良くなり、びっくりするほどの効果を発揮しました。このコーナー専用アンクは特に効果があるので、ぜひとも皆さんに試していただきたい製品です。

部屋の前方両隅にコーナー型ANKHも導入
部屋の前方両隅にコーナー型ANKHも導入。コーナーの適切な拡散による音響効果は予想以上に大きいことを実感

アンクは部屋の前後や一次反射面、コーナー等に適材適所で設置することをお薦めします。

今後は、後面のコーナーにもAGSまたはアンクを設置したいですね。ここまで対策したら、部屋の全面にAGSを配置している日東紡音響さんの千葉の試聴ルームほど完璧ではないにしても、事実上、十分なルームチューニング効果が得られるのではと思います。

現状のリスニングポイントにおける伝送周波数特性データでも、50Hz〜5kHzまでほぼフラットに近づいてきました。「部屋の特性はフラットがいいとは限らない」と言う方もいるようですが、ぜひとも一度フラットな状態の部屋で音楽を聴いていただきたいと思います。

測定データ
惣野邸での最新の測定データ(現状のリスニングポイントにおける伝送周波数特性)。50Hz〜5kHzまでほぼフラットに近づいた様子がうかがえる

オーディオの雑誌によっては部屋のチューニングは何もしないのがいちばんいいと言っている評論家がいますが、それは全くの嘘だと思います。日東紡音響さんのようにしっかりしたコンサルティングをしているメーカさんにお願いした上でルームチューニングをすれば、普通の部屋よりはずっと良くなることは断言できます。特にミュージックラバーの方にはぜひともお薦めしたいですね。

 
惣野さんのコメント
費用対効果を考えれば割高感はナシ

1枚あたりの音響効果は非常に大きい

アンクやシルヴァンの価格は高いと思われる方が多いかもしれませんが、1枚当たりの音響効果が非常に大きいため、実際にこの効果を体感すると割高感はありません。

例えば、コーナー型アンク一組だけでも相当な効果が得られますので、決して高くはないと思います。日東紡音響さんの対応は親切で頼みやすいので、是非、試聴を希望されたらいかがでしょうか。

 
戻る
インデックスへ
次へ