HOME > レビュー > 超弩級イヤホンがこの価格で!?「音色を個人最適化」できる注目機、final「TONALITE」徹底レビュー!

PR開発陣直撃インタビューもお届け

超弩級イヤホンがこの価格で!?「音色を個人最適化」できる注目機、final「TONALITE」徹底レビュー!

公開日 2025/11/22 07:00 折原一也
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

 インタビュー:TONALITEに込めた想いを開発陣に直撃

2022年からのJDH(自分ダミーヘッド)のサービス提供を経て、ついにアプリによる個人最適化を実現したfinal「TONALITE」。この「DTAS」技術は、どのような思想とプロセスを経て生み出されたのか。final開発陣を直撃した。

開発陣によれば、パーソナライズに向けた技術構想は、2013年頃から始まる長いストーリーがあるとのこと。そのポイントとなるのは同社 R&Dによる「Immersive experience」に向けた取り組みだという。

世界的な研究水準を誇る「空間」の再現から、イヤホンの「音色」への取り組み、そしてその両立という難題を「物理と数学で殴り倒す」という所へとたどり着いたfinal開発陣の執念の物語だ。

なぜ「音色」に着目? そもそも音色とは何?

「DTAS」の出発点は、finalでチーフサイエンティストを務める濱崎公男氏による、「空間」に対する研究からスタートしている(※編集部注:濱崎氏の崎は「たつさき」)

オーディオにおける個人性適用の研究は、多くの場合、個人の頭部伝達関数(HRTF)を測定し、スピーカー聴取の「空間」をイヤホンで再現することを目指してきた。だが、開発陣はこのアプローチの限界を早くから認識していたという。

「空間オーディオの手法は、確かに空間は非常に再現できます。しかし、肝心の『音色』が悪くなるケースが多い。いくら空間の再現が良くても、自分の好きなボーカルが微妙な音で聞こえてきたら、音楽も耳に入ってこないですよね? 結局、聴き疲れして、すぐに空間オーディオの機能もオフにされてしまう」

そこで見てきた答えが「音色」の重要性だ。だが、ここで語る「音色」とはモニターヘッドホンを想像するような、ハードウェアとしてフラットを目指した音という意味ではない。

finalの濱崎氏(写真左)と同社社長の細尾 満氏(写真右)

音源から放射され、鼓膜に到達する音波に対して、ヒトの身体形状が与える影響を計算した上での、人の感じる本当の「音色」――これがfinal R&Dによる「Immersive experience」の到達点だ。

とはいえ、「音色」という感覚的な領域を、どのように技術で制御するのか。

「今までは、音色は技術的に解けないと思われていた領域です。特に定義が難しい。我々はそこを、感覚的なチューニングではなく、『物理と数学で解決する』というアプローチを取りました」

finalが10年近くを投じて確立した独自の数理モデル、これは東学院、九州⼤学大学院などから同社に社してくるような優秀な開発者達による研究開発成果。その最大の功績は、これまで不可分とされてきた「音色」と「空間」の知覚を、数式上で記述し、独立して制御できるようになったことだ。

「TONALITEは、まず2chステレオ再生において、この『音色』の個人性を徹底的に適用することにフォーカスしたモデルです」

原価を考えない(!?)破格の価格設定

ZE8000とJDH(自分ダミーヘッド)を知るユーザーにとって、最大の関心事は「TONALITEによるパーソナライズは、JDHと比べてどうなのか」という所だろう。

JDHでは、高精度な測定を行い、その結果からスパコン級の計算が終わるのを待つ都合、測定と受け取りで2回、finalへ足を運ぶ必要があった。「DTAS」はそれをアプリで簡易化した分、音質はトレードオフになっているのではないか。

そんな問いに対し、開発陣の答えは明快だ。

「パーソナライズの総合的な結果は、TONALITEの方が良いですね。スキャンの精度自体はJDHの方が多くのことをやっていますが、それをどう計算に反映するかという処理(数理モデル)が進化しています」

「そして何より、ハードウェア、ドライバーが劇的に進化しています。これは有線フラグシップのA10000開発で得た知見が活きており、特に低域の表現力が格段に向上しています」

開発スタッフの平井陽大氏(写真左)と湯山雄太氏(写真右)

スマホアプリを使って個人の聴こえ方を測定・最適化するという手法は世の中にいくつか存在するが、TONALITEの「音色」の個人性適用は全くの別次元。約30分という時間をかけてじっくり測定した詳細なデータがアプリを通してサーバーに送られ、そこで演算、調整された結果が反映される。全く簡易的なものではないのだ。

そのサーバーの維持にも資金がかかるため、当初は月額課金化も検討したそうだが、思い切って無償での提供を決断。A10000の知見も投入され、ハードウェアの作り込みもまさに超弩級だ。

「TONALITEは一般販売価格39,800円を予定していますが、もし普通の会社でROI(投資に対する利益率)で計算をしたら、この価格で出せるような原価ではありません。この技術を知ってほしい、広げたいという思いが先にあって。社長(細尾氏)が『新しいことをやるには、細かな計算は後回しでいい!』と(笑)」

finalの研究開発による技術的成果と、これまでの知見を応用したハードウェアとしての高い完成度。これらを考えると、「TONALITE」の価格設定は、まさに破格と呼ぶ他ない。

純粋に高音質な完全ワイヤレスイヤホンを探しているポータブル・オーディオ愛好家も、これまでにない音色の世界を是非体験してみてほしい。

(提供:final)

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE