Acoustune「HSX1001 Jin-迅-」レビュー。金属だからこそ到達できた孤高の音を聴く
目が覚めるような鮮烈なサウンドで人気のイヤホンブランドAcoustune(アコースチューン)。彼らが目指した理想の音を完全ワイヤレスイヤホンで実現するために採用した手法が、「金属チャンバー」×「無線モジュール」の組み合わせだった。今夏にはファン待望の交換用金属チャンバーが複数登場するなど、「HSX1001 Jin-迅-」の名の通りにスピーディーなサウンドは一聴の価値ありだ。
無線モジュールと音響チャンバーが分離できる独自構造
ダイナミック型ドライバーによるシングルフルレンジ構成と、音響チャンバー部と機構ハウジング部を分離したモジュラー構造を採用した金属筐体。Acoustuneのイヤホンはその2大要素へのこだわりを貫いてきたからこその魅力を備え、それを愛するファンに支えられている。
であるがその金属筐体が、同社の完全ワイヤレスイヤホン開発における壁となっていたという。金属は電波を遮り無線通信を阻害する。しかし金属筐体でなければAcoustuneが目指す音質に達しない。
だがしかし彼らはその壁を、先に挙げた2大要素のもう一方によって突破。モジュラー構造を活用し、音質に関わる音響モジュール側は引き続き金属筐体とし、そこに樹脂筐体の無線通信モジュールを組み合わせることで、完全ワイヤレスイヤホンとして機能する形としたのだ。
その無線モジュールは、先んじて完全ワイヤレスに取り組み無線技術を蓄積していた、同社サブブランド「ANIMA」との共同開発によってクオリティを確保。すなわち、Acoustuneならではの難しさをAcoustuneならではの手法や資産で乗り越え、まさにAcoustuneならではの完全ワイヤレスイヤホンとして誕生したのが、この「HSX1001 Jin-迅-」となる。
また本機はユーザー自身の手で交換できる新モジュール構造を活かして、別の素材音響チャンバーで別の音質を獲得、バッテリー劣化や仕様の陳腐化には無線モジュール交換で対応、有線モジュールで有線イヤホン化などが可能になるオプション展開もある。将来への期待も膨らむ。
モジュール部は自分で簡単に交換できる仕様だ。音響チャンバーは色褪せることがない一方で、デジタルの部分はトレンドやバッテリーなどの消耗がある。確かに「交換」の意味合いもあるが、オプションで用意されているのは「有線モジュール」や金属素材の異なる音響チャンバーだ。
音の輪郭を強くハッキリと描くアグレッシブな音
まずは標準装備の音響チャンバーに注目だ。剛性と軽量性を兼ね備えるアルミはイヤホン筐体の定番材であり、標準装備として納得の選択。そこに、ポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」振動板採用ドライバーの最新世代を本機向けに再設計したものを搭載。まずは同社のスタンダード的な構成を押さえてきた。


その実力を、対応高音質コーデックLDAC/aptX Adaptiveのうち、今回はLDAC接続でチェックした。やや硬質な音調、キレのよさが持ち味。星街すいせい「もうどうなってもいいや」を聴くと、エレクトリック感増し増しのアグレッシブさが痛快だ。ギターのカッティングのシャキッとした鋭さを筆頭に、音のエッジが効いている。
ボーカルにおいては、サ行をあえて刺し、タ行もあえて立たせることで刺激性や攻撃性を強めた歌い方のその成分、つまりはこの歌の「もうどうなってもいいや」感をより引き出してくれる。中盤の効果音的に響く超低音の、その響きの沈み込みがしっかりしているのもポイント。
総じて現代ハイエンド機らしいワイドレンジ感や解像感を存分に楽しめ、音質特化型として高水準を満たした完全ワイヤレスイヤホンだ。その上に将来の発展性まであるというのだから、長く楽しめる愛機になってくれることだろう。
