超弩級イヤホンがこの価格で!?「音色を個人最適化」できる注目機、final「TONALITE」徹底レビュー!
音質レビュー(1):個人最適化前でも「他とは一線を画す高音質」
実際にfinal「TONALITE」のサウンドを体験していこう。
まずはDTASでパーソナライズを適用しないデフォルトの音質「General」の状態で試聴する。
「なぜデフォルト?」と思うかもしれないが、実はこのデフォルトには、JDHサービスで蓄積された500人以上のデータベースや有線フラグシップA10000の技術知見を基に構築された、いわば「汎用的な最適解」のサウンドが設定されているのだ。
そんな「General」の設定で音楽を聞き始めると……この時点で他のワイヤレスイヤホンとは一線を画す高音質だ。
ダイアナ・クラール「夢のカリフォルニア」では、究極のアコースティック志向のサウンドとでも呼ぶべき所だろうか。歌声の解像度の高さは当然として、とにかくアコースティックギターとピアノの音が生々しいのだ。
弦を弾くその弾力感すら立体的に見通すようなリアルな鳴りが空間上に再現され、ピアノの音階も、その高低以上の実体を持つ。そしてウッドベースの低音の音分離が精緻で、深く分解能の高く低音の見通しも凄まじい。

次の試聴曲には、あえてジャンルを電子音楽に振り切りYOASOBI「アイドル」を聞き始めると……まず音数の多い楽曲を個々に鳴らす分解能から突き抜けている。
ボーカルはシャープかつクリアに分離するが、それでいてアタックに全くキツさがなく高音パートまで美しく伸びる。
そして中高域を占める電子音は音の混濁なく余裕のすぎる再現性で全てを出し切る――解像度そのものだけでなく、歌声も電子音も音の純度があまりに高い。そして、 “普段認識できないほどの重低音の階調” と形容したくなる低音の情報量――まさに異次元だ。
Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」のサウンドも印象的だ。強烈な重低音で知られる楽曲だが、TONALITEで聴くと、この重低音を完璧に制御し切る形で情報量を伴い鳴らし切る。そして、男性ボーカルがラップ、コーラスと移動する音楽的な構成を見通せる立体的なサウンドの全貌が見えてくる。

音質レビュー(2):個人最適化すると「もう戻れなくなる」サウンドに
そしてfinal「TONALITE」の真価が発揮されるのはDTASによるパーソナライズ後のサウンドだ。パーソナライズは、スマートフォンの「TONALITE」アプリの指示に従い、自宅で一人で実行が可能だ。
測定用マーカー付きのヘッドバンドを付けた状態でカメラ撮影による頭部の3Dスキャン、イヤーピースの有無を含めた耳穴の物理特性の測定、ステップ毎にサーバー上で物理計算という形で進めていくため、トータルの所要時間は約30分。これを経て最適化されたプロファイル「Personalized」が利用可能になる。

実際に「Personalized」の音質を聴くと……まず分かることは「音の空間的な分離の良さ」「アタックの質感」「音色の生々しさ」が向上すること。
「高域が伸びた」「低域が増えた」といった周波数特性上の変化ではなく、「Personalized」を基準として音を聴き込むと、あれほど高品位に感じられたデフォルトの「General」が荒削りに感じられるほど。
ただし、「General」と「Personalized」では音傾向として大きな変化ではないのだが(ゆえに「DTAS General」のサウンドも音質レビューとして有効)、「Personalized」は「音が自分に馴染む」とでも形容するべき変化をもたらす。
なお、DTASのプロファイルはアプリ内のメニュー「My Profiles」から、Ref-/Reference/Ref+の3段階で調整可能。
Referenceではまさに想定通りの効果、Ref-ではGeneralとPersonalizedの中間と呼ぶべき適度に元の音源の特徴を感じるサウンド、そしてRef+ではより強く体に馴染むような具合。これは楽曲に応じて使い分けても良い効果だ。
デフォルトのGeneralで聞いても圧倒的な低歪みで唯一無二のサウンドなのだが、そこからPersonalizedも試すと、戻れなくなる――。「これが自分にとって違和感のない自然な音色ということか」と、聴くほどに感心してしまうサウンドなのだ。
