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【特別企画】密閉化による音色の変化も見逃せない

STAX「CES-A1」 レビュー&開発者インタビュー。コンデンサー型イヤホンの先駆けを“現代的”にアップデート

2019/02/14 岩井 喬
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耳へ装着するのに20mmという口径は大きいものの、ハウジングの薄さではダイナミック型を圧倒する。大口径ながらの低域の豊かさと、コンデンサー型ならではの薄く軽量な振動膜がもたらす緻密でスピーディーな高域の微小な粒立ち感まで、単一ユニットでカバーできる強みは“SR-001系”のみが有する最大の特長といえるだろう。


SR-002は薄型の専用端子でドライバーユニットと接続する
SRS-002のドライバーユニットはコンデンサー型モデルの中では最小サイズであるが、平面駆動であることや耳元に配置される構造も含め、エネルギー伝達密度の高いサウンドを楽しめることもポイント。そうした点ではスタックス製品のなかでも傾向の異なる音色特性を持つシステムといえる。

装着感はそのまま、充分な水準の遮音性を獲得

密閉カバーのCC-A1を取り付ける前に、イヤーチップだけをET-A1へ変えてみたが、それだけでもヌケ感の良いナチュラルな音伸びが感じられるようになった。ホーンセクションの響きなど、多少音が残るような“こもり”を感じていたが、その点に関しても幾分解消されているような印象だ。

筆者は標準のイヤーチップでも違和感なく装着できていたので、低域から高域までバランス良く聴きとれていた実感があったものの、ET-A1に置き換えたときの透明感、音質変化には純粋な驚きがあった。CES-A1を入手したならば、まずイヤーチップだけ変えて楽しんでみるのも一興だ。

そしてCC-A1を取り付けると、遮音性は一般的なカナル型イヤホンの水準まで一気に高まる。密閉構造となることで振動膜に適度なダンピングがかかり、サウンドは中低域方向にかけタイトに引き締まる傾向に変化。しかし中低域の密度感は損なわれておらず、ボーカルの熱量や口元のハリ、ホーンセクションの立ち上がりについても数段の改善がみられる。キックドラムとベースの描き分けもより良くなり、ピアノの響きも存在感が増してきた。

CES-A1はカナル型イヤホン水準の遮音性と共に音質の向上ももたらした

楽器単体のフォーカスも向上し、音像の輪郭も引き締め良く浮き立つ。オーケストラの旋律も密度感を持たせながらスッキリとまとめ、ヌケ良く爽快な余韻が楽しめた。音場の広がりに関しては幾分抑えられ、中央付近の密度が上がる印象であるが、輪郭感がカリッとしており、個々のパートの明瞭度はしっかりと保たれている。装着感も上々で、大きさの割に重すぎず、重みで外れてしまうようなことはなかった。

CC-A1/ET-A1ともに、イヤースピーカーのハウジングへはめ込むだけで装着が完了する

最新モデルにも見劣りしない、現代的な遮音性と音色を手に入れた

続いてSR-003MK2とSRM-D10での試聴だ。プレーヤーにはソニー「NW-WM1Z」を用意し、USB接続によるデジタル環境での再生を行った。

こちらでも、まずはCES-A1を適用する前のサウンドを確認。SRS-002の穏やかな色合いとは趣の異なる傾向で、DAC内蔵型ならではの解像度の高さや倍音表現の華やかさ、爽快感といった特徴があり、より現代的な音色といえるだろう。

ベースラインの躍動感や密度良く滑らかなボーカル表現、低重心かつナチュラルな描写性は高級モデルに通じる品位の高さが感じられる。11.2MHz音源のボーカルは伸び良く流麗なタッチで、ピアノのハーモニクスも深く上品に響く。

オーケストラの管弦楽器は太さとしなやかさのバランスが良く、余韻もクリアに表現。コンデンサー型だからこその繊細かつ緻密なディティール感とハリ良い輪郭表現、そして中低域の厚みを両立している。ジャズのホーンセクションも粒立ち細かく爽やかだ。

次ページCES-A1との組み合わせでは、よりスピード感溢れるサウンドへと進化

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