HOME > レビュー > 独ULTRASONE「Edition 11」と伊PATHOS製アンプ、“実は近い” 2ブランドが奏でる極上ヘッドホンサウンド

【特別企画】オーディオ愛好家こそ聴くべきヘッドホン

独ULTRASONE「Edition 11」と伊PATHOS製アンプ、“実は近い” 2ブランドが奏でる極上ヘッドホンサウンド

2018/11/12 山之内正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
PATHOSが温もりある伸び伸びとしたサウンドを引き出す

InPol Earの試聴機はDAC基板を組み込んだ状態で届いたので、MacBook Proで再生したハイレゾ音源も聴いてみた。アリス・紗良・オットが独奏を弾くピアノ協奏曲、児玉麻里&桃のデュエットによるチャイコフスキーなど、空間情報が豊富な音源をEdition 11で聴くと、楽器の周囲に広がる余韻に柔らかさが感じられ、歯切れ良いピアノのフレーズがクールな音色に寄り過ぎないことに気付いた。ジャズのライヴ音源もサックスなど旋律を奏でる楽器自体が十分に温まって伸び伸びと鳴っている雰囲気が伝わり、良い意味でウォームな感触がある。

自身のリスニングルームでサウンドを確かめる山之内氏

その感触が一番マッチするのはヴォーカルで、女声、男声を問わず中低音に潤いがあり、ソプラノも高音が痩せ細ることがなく、血の通った温度感を伝えてくる。同じ曲を手持ちのUSB-DACとヘッドホンアンプで聴くとそこまでの温度感は感じられなかったので、その温度感はInPol Earが引き出したものであることは間違いない。

複数の仕上げを用意しているInPol Earだが、今回は木目仕上げを用意。Edition 11ともマッチする

ここまでは付属ケーブルを用いたアンバランス接続で聴いたが、最後にバランス接続の音も確かめるために、ケーブルブランド Brise Audioが独自に手がけているEdition 11向けのXLR 2pin仕様のバランスケーブルを用意して、Edition 11とInPol Earの組み合わせに使ってみた。

音調の変化はほとんどなく、重心の低い周波数バランスも大きくは変わらないが、さきほど紹介したアコースティックなハイレゾ音源では余韻の表現に変化を聴き取ることができた。バランス接続では楽器の間を満たす空気の密度感が上がり、ヴォーカルは声の音像の微妙な動きが前後も含めて見えてくる。InPol Earの無帰還アンプは空間描写の精度が高いこともあり、アンバランス接続でも立体表現はかなり次元が高いのだが、バランス接続はその良さをさらに引き出せる可能性を感じさせた。

BriseAudioが手がけるedition 11専用のヘッドホンリケーブル「BHP-USe11」。写真のようなバランス仕様も用意する


Auriumもスケールの大きさと豊かな音場表現を引き出してくれた

Auriumの再生音についても簡単に紹介しておこう。大型ヒートシンクが省略されているので筐体はコンパクトだが、トップパネルから突き出した2本のECC88の存在がハイブリッドアンプであることを気付かせてくれる。3.6W(16Ω)とInPol Earに準じる出力を保証していることもあり、Edition 11との組み合わせで十分な駆動力を発揮。スケールの大きさと飽和感のない伸び伸びとした音場表現は期待を大きく上回るものだった。

小型ながら純A級アンプを積んだAuriumも、上位機直系のサウンドを聴かせてくれた

本機もNFBをかけない純A級アンプを積んでいるため、InPol技術こそ省略されているが、音調はかなり似通っている。情報量と音色の純度を比べると上位機種が優位に立つものの、Edition 11との相性の良さは疑いようがない。



ドイツを代表するヘッドホンとイタリアの個性派アンプは意表を突く組み合わせと考えがちだが、ULTRASONEとPATHOSの両社はアルプスを挟む位置関係にあり、距離も意外に近い。アルプス越えのルートを介して南ドイツと北イタリアは古くから強い結び付きがある。そうした地理的背景や親和性の高い文化に思いを馳せながら、ナチュラルで反応の良いサウンドを堪能してみてはいかがだろうか。

(山之内正)


特別企画 協力:タイムロード

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE