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【特別企画】オーディオ愛好家こそ聴くべきヘッドホン

独ULTRASONE「Edition 11」と伊PATHOS製アンプ、“実は近い” 2ブランドが奏でる極上ヘッドホンサウンド

公開日 2018/11/12 06:00 山之内正
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創業は1994年、社名のロゴマークをそのままヒートシンクに採用するなど、ひと目見たら忘れない個性的デザインがおなじみだが、実は創業時から技術力の高さに定評があり、今日でもその独自技術を基幹に据えた製品群がラインナップの中心を占める。

最大の特徴は管球式プリアンプとトランジスター式パワーアンプを組み合わせたハイブリッド構成にあり、後者は「InPol」と呼ばれる独自の純A級無帰還回路を採用する。真空管プリアンプで高めのゲインを確保し、部品点数の少ないシンプルな回路構成のA級パワーアンプで前段の音を活かしたまま増幅するというアプローチだ。この回路構成の基本はプリメインアンプの第一号機「Twin Towers」に搭載され、進化を遂げながらいまも脈々と受け継がれている。

ブランド名を象ったデザインのヒートシンクを搭載

背面端子部(写真は「HiDac MkII」を組み込んだもの)

「InPol Ear」はPATHOSの独自技術InPolを受け継いだハイグレードなヘッドホンアンプである。標準構成はアナログ入力のみだが、オプションのデジタル基板「HiDac MkII」を組み込むことでUSBとS/PDIF入力が利用できるようになり、DAC内蔵ヘッドホンアンプに進化する。入力に加えて出力もXLRバランスをそなえるほか、プリアウトも付いているので、コンパクトな製品とはいえ機能は思いがけず豊富で用途は広い。

左右に配置されたヒートシンクはプリメインアンプと同様、後段のMOS-FET素子からの放熱を担うもので、ヘッドホンアンプとしてはかなり珍しいとはいえ、本機の個性を際立たせる役割も担っている。

下位モデルの「Aurium」は管球アンプとトランジスターアンプを組み合わせたハイブリッド構成を受け継いでいるが、純A級パワーアンプはInPolとは別の回路構成を採用。ヘッドホン出力はアンバランスに限定されるが、PATHOS製ヘッドホンアンプの良さを手軽に味わえるという点で、こちらも注目に値する存在だ。

「Aurium」¥210,000(税抜)


Edition 11をPATHOSのヘッドホンアンプで鳴らす

InPol Earの電源スイッチを入れ、プリヒートと若干のウォームアップを行ったうえでEdition 11の音を聴く。エソテリックのSACDプレーヤー「K-01」Xをバランス入力につなぎ、まずはCDとSACDを再生した。

振動板が異なるので当然とはいえ、Edition 11からは既存のEditionシリーズとは明らかに異なる音質傾向を聴き取れる。最初に気付くのは周波数バランスだ。ベースやバスドラムなど低音楽器に力強さがあり、オーケストラやピアノは重心の低いバランスで厚みのある音を再現する。

Edition 11をInPol Earで鳴らして、その音を確認した

ただし、低音が厚いとは言っても輪郭や余韻を強調することはなく、音色や質感はナチュラルで誇張がない。立ち上がりが俊敏で音符の速い動きにもたつきがないのは、InPol Earの無帰還アンプにそなわる動特性とバイオセルロース振動板の反応の良さが生む相乗効果であろう。

シンバルなどリズム楽器の高音域も立ち上がりはかなり速めだが、ベースや旋律よりも一瞬前に出るような鋭さではなく、他の楽器と同時に立ち上がってすべての音域の縦線が揃う鳴り方に聴こえる。特定の楽器やリズムが前に出るサウンドは短時間で鮮度の高さを印象付けることができるが、長時間聴くと違和感を感じることもある。ULTRASONEのヘッドホンはS-Logic技術の恩恵もあってそうした違和感を感じさせないが、Edition 11は他のモデルよりもさらにナチュラル志向が強いと言っていいだろう。

Edition 11は他のモデルよりもさらにナチュラル志向が強いと言っていいだろう

振動板やハウジングの一部が共振すると高音のアタックにきつさや硬さが生まれることがあるが、Edition 11はそうした強調感とも縁がない。振動板の固有音を積極的に活かして粒立ちの良さを引き出す手法もあるが、そのアプローチはさじ加減が難しく、チューニング次第で音のバランスが変化してしまうリスクも伴う。一方、突出した解像感はなくても、振動をコントロールしやすい振動板でナチュラルな音調を狙う方がうまくいくケースも多く、Edition 11はその好例と言えるのではないか。

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