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「赤いシリコンバレー」を訪ねた

優秀すぎて話題、超小型DAP「M0」はここで生まれた − 中国・深センのSHANLINGを訪問

2018/08/14 鴻池賢三
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ハイエンドの「シャンリン」がポータブルに進出したわけ

今回の試聴を通して、これほどのハイエンドブランドがポータブルに進出した理由が気になった。Chen氏によると、世界的にハイエンドオーディオ市場は縮小傾向にあり、伸びゆくポータブル市場への移行を考えたという。最も活況なヘッドホンは横目で追いつつも本業ではないので手を出さず、シャンリンの技術が活かせるヘッドホンアンプやDAPに注目したのが3年前。現在好評のDAP「M0」以前に、M1、M2, M3, M5などを送り出して来た。

ハイエンドオーディオが下火なのは寂しいが、ライフスタイルやリスニングスタイルが変化しているのは紛れもない事実。ハイエンドオーディオブランドが、多くのユーザーの手に届きやすいポータブルに進出することで「良い音」が広まれば、それはそれで「良い事」かもしれない。

M0はココが違う!

シャンリンのDAPが支持される理由は、ずばり音質だろう。今回、エンジニアにも会うことができた(企業秘密のため顔出しNG)が、据置のハイエンドもポータブルも、同じエンジニアが設計しているという。しかも同じ熱量を注いでいるというから驚きだ。


記念にハイエンドプリアンプP600とM0の2ショット。M0の起源はハイエンドにあり。
今回の試聴を通して、同社の据置ハイエンド製品とM0に共通点を見いだす事ができたが、その片鱗は外観からも窺える。M0は精密に加工された金属筐体とボリュームツマミが価格以上の出来映えだが、写真のようにハイエンド製品と重ねてみても違和感がなく、源流が同じであることが理解できる。

もう一点、M0が高評価を得ているのは、従来モデルに対して飛躍的に操作性が向上している点である。過去モデルでも音質で一定の評価を得てきたが、操作性についてはユーザーの不満が少なくなかった。M0では、インパクトのある超コンパクトサイズを狙いつつ、タッチ操作のフィーリングや応答性能が良好。パーフェクトと言えない部分もあるが、実用上大きな問題は感じない。

Chen氏によると、M0はソフトウェアをイチから内製している点で、従来モデルと全く異なるという。ソフトウェアを外注すると、内部が分からず細かな指示もできないので、理想的な製品に仕上げるのは限界があったという。M0では思い切ってソフトウェアエンジニアを新規に雇用した。結果、操作性の向上に加え、Bluetooth受信機能の追加が実現し、音質向上も果たしたという。

もし今までシャンリンのDAPに良いイメージを持っていない読者なら、ぜひM0をチェックしてみて欲しい。見た目は超コンパクトだが、シャンリンの本気が凝縮されているのだ。



今回はM0がきっかけでシャンリンを訪問したが、据置型オーディオもなかなか興味深い。

中国深センと言えば、「世界の工場=安価に大量生産」的なイメージを持つ読者も多いと思うが、シャンリンに関しては、オーディオと音楽を愛するエンジニアが、丁寧に育ててきた温かさを感じた。

M0の成功を機に、ハイエンドの風格を感じられる素晴らしい音を、ポータブルオーディオとしてより多くのユーザーに届けて欲しいと思う。実際、M0は約15,000円という価格も驚きだ。アジアが誇る「良い音」に触れてみてはいかがだろうか。

(鴻池賢三)

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