約5年ぶりのモデルチェンジで更なる進化

【レビュー】ラックスマン「 L-550AXII」を聴く - 純A級プリメインのミドルレンジ機

大橋伸太郎

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2016年10月04日

描き出す空間の情報量と密度が高い。この価格帯では得がたい個性を備える

試聴は、音元出版の試聴室の中で、ステレオ音楽再生に特化して調音された第一試聴室で行った。リファレンス機器は別記。モニターオーディオ「Gold 300」(インピーダンス8Ω/能率90dB)という比較的鳴らしやすいスピーカーシステムを組み合わせたこともあるが、パワーは申し分なく、聴感上はカタログ定格出力の2〜3倍以上に感じられた。

モニターオーディオ「Gold 300」と組み合わせて試聴した

L-550AXIIを一言で表現すると、いい意味で色(個性)がある、この価格帯で他には得難い魅力的なアンプだ。冷徹かつオーディオ的でなく、入力ソースを弾力的かつ表情豊かに再現する、優れた音楽性を備えるアンプといえよう。その鍵が音場表現力。純A級らしい歪みの少なさに加え、ODNF Ver.4.0の搭載で音の立ち上がり立ち下がりを改善しており、描き出す音場空間の情報量と密度が高く、バックグラウンドノイズの少なさとあいまって深いデプス(奥行き)の音場にすべての音像が明瞭な輪郭でくっきりと現れるのだ。

最初にディスクメディアから聴いてみた。キップ・ハンラハンがリーダーのニューヨークラテン(SACD)は、楽器の立ち上がり立ち下がりの表現、つまりスピーカーシステムのハンドリング能力がポイントだ。エレキべースが量感豊かで深々と沈み弾力的で豊かな生命感を感じさせる。Ver.4.0で帯域が拡張されたことが如実に伝わる。

音場は水平方向の広がりより、縦方向に深い奥行きが現れるのが特徴だ。楽器の輪郭の立体的な切れ込みと艶やかな音色にラテンらしい臨場感を表現する。客観的かつクールに情報を余さず出し切るというより、カラフルな質感描写に音楽性主体の本機のヒューマンな息づかいが感じられる。

「音楽美」を体現する、この価格帯におけるワンアンドオンリーなモデル

サントリーホールでライブ録音された「トゥーランドット」(SACD)は音場の表出が見事。ソリストの歌唱やコーラス、オケ楽音の響きからステージの深さ、ホールの高さ、空気の湿度や温度が伝わるのだ。楽音だけでなく響きの中に潜む音場情報の引き出しが上手い。コーラスの倍音から各種打楽器まで、音色が豊かで鮮烈、ブリリアントだ。透明な空気を曲の進行でさまざまな色彩で染め上げる。

ムーティ指揮、シカゴ交響楽団の「ロメオとジュリエット」(CD)でも深い奥行きのライブ音場が描出され楽器で埋まったステージがビジブルに目の前に現れる。分厚いオケの響きからソロを取る楽器がくっきりと分離し浮かび上がる解像力も秀逸。響きと一体感を保ちながら綺麗にほぐれている。音楽の勘所を知るアンプといっていい。低音の量感は一体型(プリメイン)と思えない厚み。分解能も疎かにされず弓が弦にコンタクトする瞬間の響きの立ち上がりのよさ、トゥッティの歪みのなさ。低音の遅れのなさと生き生きしたレスポンスも心地よく陶酔的である。


試聴には、ラックスマンのUSB-DAC「DA-06」やフォノイコライザー「E-250」も組み合わせた
ハイレゾファイル再生では、アンナ・ネトレプコのオペラアリア(96kHz/24bit)と定番ビル・エバンス・トリオの『ワルツ・フォー・デヴィ』(192kHz/24bit)を試聴。音色の表情はSACD/CDと共通だが、帯域が拡張した分、弾力感としなやかさを保ちながら楽器のきめこまやかなニュアンスがさらに表出する。MM/MC対応のフォノイコを内蔵し、アナログレコード再生では低音をしっかりと支えよく弾む表情豊かな音楽を聴かせる。



ラックスマンのプリメインアンプ「L-550AXII」は、同社が手掛けてきた純A級アンプのノウハウとアンプ技術の最新成果が集約された製品だと言える。この価格帯で傑出した1台で、なおかつ純A級らしいビューティフルな音色というワンアンドオンリーな魅力の製品だ。これまでピュアオーディオに余り関心がなかった音楽ファンにも、一度本機を聴くことを薦めたい。L-550AXIIの価値の本質は、増幅回路の方式やラックスマンブランドの魅力さえを超えて、「音楽美」にこそあるからだ。

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