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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第150回】田村ゆかりさんに捧ぐ!ラジオ「いたずら黒うさぎ」歴代OP/ED曲をオーディオ目線で語る

公開日 2016/03/25 10:45 高橋 敦
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▼優しい夜に。(アルバム「銀の旋律、記憶の水音。」より)

2006年04月08日から2006年11月11日のED曲。この時期には前枠の番組のエンディングトークに対して「『ずらうさ』じゃないよ。『黒うさぎ』だよ」と不満を表明。「冗談じゃない。だったらこっちだってあの番組を『ちゃっちゃかちゃー』で定着させるよ!」と宣戦を布告した。

優しい夜に。(アルバム「銀の旋律、記憶の水音。」より)

それはさておきこの曲では「ゆかりんコーラス」が特に大活躍している。ということでここでやっとだが、「ゆかりんコーラス」についてがっつりと説明しよう。そういう用語が公式に定義されているわけでも広く用いられているわけでもない、僕が便宜的にそう呼んでいるだけの言葉だが。

ゆかりさんの曲では、例外はあるが基本的に、声はすべてゆかりさんの声だ。「声優なのだから自分の声を生かすべき」というお考えからだというが、ファンとしても皆様たしかに、ゆかりさんの声に溢れた音楽は大歓迎だろう。

その声によるコーラスワークの美しさもゆかりさんの作品の大きな特徴のひとつ。便宜上「ゆかりんコーラス」として「コーラス」の一言にまとめているが、実際にはその声の使われ方は、歌の主旋律に重ねるハーモニーや歌の背景を広げるストリングス的なポジションはもちろん、主旋律に対する対旋律(歌メロに対するカウンターの裏メロ)、主旋律と掛け合うツインボーカル、前述のリフのように楽器的パーツ的な役割など、本当に多彩。そしてその多彩さが特に生かされている曲のひとつがこの曲だ。

まず頭っからゆかりさんの「トゥトゥ」というハミングが曲の顔になっている。しかも何声かを重ねたハーモニーを左右に配置し、その響きが音場の奥に遠のくように響いていくという、ハーモニーのアレンジにしてもそのミックスにしても工夫を凝らしたものだ。ゆかりさんと制作陣が「ゆかりんコーラス」に力を入れているのことが伝わってくるし、実際それによってこのハミングのイントロだけで一気に曲に引き込まれる。

このハミングはこの後も、少しの変奏もありながら繰り返し印象的に用いられるので、これも「ゆかりんコーラスによるリフ」という解釈でもよいかもしれない。

Bメロでは「Love Song」「sweet home」という掛け合いの歌詞とメロディが、主メロの後ろから包み込むような多層ゆかりんコーラスで届けられてくる。

サビになるとその後ろにはまたハミングが重ねられ、それがそのまま残って間奏へとつながることで、優しく揺れるリズムを途切れさせることなく、曲が進められていく。リフ的なフレーズがサビの裏メロにも使われるパターンはこの後に紹介する曲でも登場するが、そのリフ的な裏メロフレーズがゆかりんコーラスだというのがこの曲のポイント。あとリズムといえばそういえば、この曲も「ファンタジックな三拍子系」だ。

そして最後には、主メロを歌っていたゆかりさんではなく、ゆかりんコーラスの方が主役となってこの曲は終わっていく。

というように「ゆかりんコーラス」その魅力を特に存分に楽しめる曲のひとつがこの「優しい夜に。」だ。なのでオーディオ的にもその堪能を重視していきたい。そこでここでは良質なスピーカーシステムでの再生をおすすめする。というのも「その響きが音場の奥に遠のくように響いていく」のような奥行きの表現は、ヘッドホンやイヤホンが最も苦手とするところ。そこはスピーカーでないと難しいのだ。

なお「ゆかりさんの曲では、例外はあるが基本的に、声はすべてゆかりさんの声」の「例外」としては、名誉チェケラッチョのmotsu氏を挙げることができる。田村ゆかり feat. motsu from m.o.v.e「You & Me」「パーティは終わらない」は、ライブではmotsu氏のラップパートが観客大合唱になることでおなじみだ。

次ページ次でやっと折り返し地点、「天使のお仕事」

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