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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第150回】田村ゆかりさんに捧ぐ!ラジオ「いたずら黒うさぎ」歴代OP/ED曲をオーディオ目線で語る

公開日 2016/03/25 10:45 高橋 敦
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▼YOURS EVER(ベストアルバム「Sincerely Dears…」より)

2007年04月21日から2007年09月29日のED曲。ゆかりさんの歌とそれに寄り添うピアノから始まる、歴代ED曲の中でも特に静かな印象の曲だ。

YOURS EVER(ベストアルバム「Sincerely Dears…」より)

ゆかりさんのバラードとなればゆかりんコーラス大活躍!…とはならず、この曲は最後まで静かに歌われていく。ベストアルバムにおける唯一の新曲にしてそれがアルバムのエンディングでもあり、何か特別なメッセージ性を感じさせる曲だ。

主な編成としては、ボーカルとピアノ、パーカッション、ストリングス、ベースとドラムス。サビでは主メロの下にハーモニーが重ねられ、二番からはエフェクトで音を揺らしたギターも入る。

活躍が際立つのはベースとピアノだ。ピアノは冒頭から柔らかな音色で歌に寄り添う様子が印象的。しかし間奏部分、ペダルを踏んだアルペジオでその柔らかな音色を重ねに重ねていくそこにおいては、「ここがこの曲のクライマックスでこの曲の主役はピアノだったのか!?」と思ってしまうほどの活躍を見せてくれる。

ベースは最初のサビから入ってきてその時点ですでにいい感じなのだが、特に際立つのは二番からのメロディアスなフレーズ。この曲は編成がシンプルで、ピアノは主には歌のサポートに注力しており、ギターも控えめだ。ベースが動く余地は大いにある。というか積極的に動いて歌メロに対してのカウンターメロディやらコードの流れを打ち出す役割やらを積極的に果たしていくべき曲。その要求に応える素晴らしいベースラインだ。

また音色を含めて演奏のニュアンスも見事で、ピアノが歌のすぐ近くに寄り添うのに対して、このベースもまた柔らかく優しい雰囲気で、しかし隣ではなく少し後ろから、そっとぐっと支えているように感じられる。

そのニュアンスは、ピッキングやフィンガリングのタッチはもちろん、音を滑らかにつなぐスライドの入れどころや、同じ音程の音をいくつかのポジション(別の弦の別のフレット)で弾ける場合にどのポジションを選ぶことでより優しい音にできるかだとか、そういった繊細な選択の積み重ねで生み出されているものだろう。

ゆかりさんのボーカルも、やはりとても繊細に歌われている。いやゆかりさんの歌が繊細なのはいつものこと、どの曲でものことだが、この歌は静かで音数の少ない曲なので特に、ゆかりさんの歌の姿がほんの少しの動きまでとても見えやすいのだ。

ということで音の柔らかさを表現しつつ、微かな表情まで描き漏らさない、そんなオーディオシステムで聴きこんでみたくなる曲だ。さらりと書いたが難易度は高い。強いて言えば例えば、真空管を搭載してその音色感は生かしつつ、しかし懐古的ではなく現代的に磨き上げられているアンプ。そういった方向性のものなどを組み合わせるというのは、可能性を感じられるアプローチだ。

さて、ベストアルバムはよく「宝箱」に喩えられるが、この曲の歌詞にもその言葉が託されている。
「宝箱を運ぶ様に一緒に歩いてゆけたら」
「宝箱に想い出を一緒に増やしてゆけたら」

と。

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