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プレーヤー/プリメイン/真空管アンプで3本勝負

創業90周年。ラックスマン”歴史的銘機”と最新モデルが対決

公開日 2015/08/19 10:30 大橋伸太郎
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デジタルプレーヤー新旧対決
「D-500X’s」vs「D-06u」

CDプレーヤー「D-500X’s」 1990年発売 350,000円(当時)


SACDプレーヤー「D-06u」 2014年発売・現行モデル 580,000円(税抜)

新旧対決の口火を切るのはディスクプレーヤーだ。ラックスマンというと真っ先にアンプが思い浮かぶ方が多いかもしれないが、キラ星のごときディスクプレーヤーの銘機たちを忘れてはならない。アナログ時代のロングアーム対応ロードフリースピンドル方式の「PD441」、ポンプでディスクをターンテーブルに密着させるバキュームディスクスタビライザー方式の「PD350」などは筆者憧れのプレーヤーだった。しかし今回はデジタルプレーヤーに照準を絞り、1990年にラックスマンが満を持して発表したCDプレーヤー「D-500X’s」に登場いただくことにした。

歌舞伎の舞台写真を大きくフィーチャーしたD-500X’sの雑誌広告は忘れ難い。日本の伝統芸能とオーディオの取り合わせは意外性があり、正直見る者を戸惑わせた。しかし、当時のカタログを再見して、この「違和感」こそ狙いだったのではないかと感じた。「高級機広告=技術要素・数値の羅列」という固定概念をひっくり返したかったのではないだろうか。

本機はフィリップスのスウィングアームメカ(CDM-3)とラダー型DACを採用し、トップローディング方式の筐体に包み込んだ大作だ。トップローディングはトレイなどの可動部分を持たないため、不要振動を回避できる。さらに本機はメカニズムをフローティング構造として外部振動の影響も遮断することで、ディスクのトレース能力を飛躍的に向上させた。

ラックスマンの新旧製品のカタログ。手前の過去製品のカタログからは、時代が感じさせられる、手前右が本文中で言及されているD-500X’sのカタログ

ラックスマンの現行ラインナップからは、SACD/CDプレーヤー「D-06u」を選んだ。D-06uはオリジナルのドライブメカ「LxDTM」を搭載し、DAC部にはTI製「PCM1792A」2基をデュアルモノラルモードで使用。USB-DAC機能を内蔵し、最大384kHz/32bit、DSD 5.6MHzまでの再生に対応する。

D-06uは2014年の発売で、同時期に登場したフラグシップ機「D-08u」、および今年7月に発売されたばかりの弟機「D-05u」とラインナップを構成する。雄大なスケール感を持つD-08uに対し、D-06uはシリーズ中で最も緻密さを前面に出した切れ味鋭いニュートラルサウンドを備える。価格のバランスと音質傾向を考慮して、今回はD-06uに白羽の矢を立てた。

まずはD-500X’sを聴いた。投入された物量の凄さとプロ機的な外観から「CDの原器」のようなストイックな音質を想像すると、見事に裏切られる。柔らかくどっしりとした低音に支えられた、艶っぽく濃やかな美音だ。D-500X’sが登場した1990年は、CD登場から7年を経ている。CDが音楽再生の主流となり、デジタルの音調への違和感が薄れた一方で、フォーマットの限界に縛られた音質に物足りなさも感じ始め、スーパーCD待望論が論じられ始めた時期である。D-500X’sは、最上の構成要素を尽くした正攻法のアプローチで、有機的な音質を狙ったのだと想像できる。

「D-500X’s」と「D-06u」の両方の開発に携わったラックスマン株式会社 開発本部 部長 長妻雅一氏。両モデルの開発背景を語っていただいた

だからこそD-500X’sのサウンドは現代のCDプレーヤーとは異なっており、隔世の感がある。4倍オーバーサンプリング処理を行っているとはいえ、D-500X’sが鳴らすのは44.1kHz/16bitのCDのオリジナルサウンド。技巧を弄さず、CDという音楽媒体に徹底的に寄り添うことでその限界の突破を図ったという印象だ。フォーマットの全情報を出し切り、なおかつラックスマンのファンが納得する音楽性(温度感と表現してもいい)を盛り込んだのだ。だから、現代のCDプレーヤーでは味わえない、おおらかな魅力がある。ちなみに試聴した個体は、同社社長の土井和幸氏の個人的な愛機だそうだ。一丸となって本機にかけた当時のラックスマンの思いが伝わるではないか。

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