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プレーヤー/プリメイン/真空管アンプで3本勝負

創業90周年。ラックスマン”歴史的銘機”と最新モデルが対決

公開日 2015/08/19 10:30 大橋伸太郎
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続いてD-06uでCDを再生する。ここには“最新のラックスマン”というだけでなく、ピュアオーディオの現在がある。CDは長くオーディオ再生の中心にあったが、ハイレゾファイルが登場したことで、もやは最上のフォーマットと言えなくなって久しい。しかしD-06uのCDの再生音質は、ハイレゾに迫る解像感と質感を備えている。

試聴はラックスマン本社の試聴室にて行った。スピーカーにはB&W 802 Diamondを組み合わせた。ディスクプレーヤー対決では、プリメインアンプには「L-590AXII」を用いた

CDに収録された音楽データは、CDフォーマット用に加工されたものと言ってよい。しかしD-06uの再生音からは、CDスペックに止まることなく、32bit DSPを駆使してスタジオレベルの原音を復元しようという明解な目標が伺える。この日聴いたディスクの1つが『アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳』(ESSW-90067・SACDハイブリッド/CD層を試聴)だったが、D-06uで聴くと楽器の定位の収束度、肉声の分解能が大きく進化している。ソロ楽器(独唱)とバックのオーケストラ、合唱との遠近感もセンチメートル単位で表出し、揺らぎがない印象。そして解像力がD-500X’sと桁違いだ。CDプレーヤーとしてのこの進化の背景には、国内メーカーとして最も早い時期にUSB-DACを製品化した経験から得たものも伺える。

それに比べると、D-500X’sは楽音が豊麗で、エコー成分を豊かに引き出している。オーケストラの雄大でたっぷりとした低音からは「アナログに比肩できるデジタルを」という開発者の意思が伝わってきた。

デジタルプレーヤー新旧2機種の比較で浮かび上がってきたのは、ラックスマンの音調がかつての「肌触りのいい美音」から、「ニュートラル」あるいは「リファレンス」志向へ変わっていることだ。しかし両機から一貫して聴き取れたのは、音楽が上滑りにならず「体温を持った演奏家の肉体がしっかりと見える」ことだった。

▼開発者に聞く

大橋氏 D-500X'sは1990年発売ということで、CD登場から10年も経っていない時期の製品です。開発された際にはどのようなビジョンをお持ちだったのでしょか。

長妻氏 このCDプレーヤーは私がラックスマンに入社して手がけた2機種目の製品でした。当時、“CDクサい”音が嫌われる風潮がありましたが、ラックスマン社内では特にそうした考えが強かったので、より音のほぐれた、表現力豊かなサウンドを狙いました。音を塊のようなものから、いかにほぐすかということが命題だったのです。


「D-500X’s」と「D-06u」それぞれの開発当時の背景を回想する長妻氏。D-500X'sにおいては「音をほぐす」ことをテーマにしたという
大橋氏 音をほぐすために、実際にはどのような手段を取られたのでしょうか。

長妻氏 D-500X'sは4倍オーバーサンプリングに対応したフィリップス製のラダー型DAC「TDA1541」を採用し、ダイナミック・エレメント・マッチングを用いることで、ゼロレベル付近のグリッジが基本的に出ない設計が実現できました。これにより細かいノイズを除去して音をほぐしていこうというアプローチを取りました。アナログフィルターについては、急峻にフィルターをかけてS/Nを向上させるのが一般的でしたが、それでは耳に圧迫感を与えてしまいます。そこで、減衰率のゆるやかな一次フィルターを3段繋ぐという手法をとりました。

大橋氏 最新のSACDプレーヤーである「D-06u」についてはいかがでしょうか。

長妻氏 D-06uの開発時には「ニュートラルな音質」という目標を持っていました。最上位モデル「D-08u」は横綱相撲というか、かなり押し出しの強いサウンドですが、D-06uは色づけのない方向を狙ったのです。そしてSACDに加え、USB-DACでスタジオクオリティのハイレゾ音源を再生できるということは、このニュートラルな音作りを行う上で非常に役立ちました。CDでは“実際の音”を想像する必要がありましたが、ハイレゾ音源には“この音が正解だ”ということが判断できるだけの情報量が含まれていますので。

大橋氏 D-06uに先行して単体USB-DACも手がけていましたが、そこでの経験も活かされたのでしょうか。

長妻氏 その通りです。単体USB-DACを手がけた経験がなかったら、こうもすんなりとD-06uの音作りはできなかったと思います。

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