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<山本敦のAV進化論 第39回>ハイレゾの可能性を広げる

1Mbpsでもハイレゾ伝送、新ロスレスフォーマット「MQA」をメリディアン創設者に聞く【試聴レポート有】

公開日 2015/01/14 10:40 山本 敦
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「MQAはロスレスでありながら、従来よりもさらに圧縮効率の良いエンコーディグ方式を使っています。音楽のエッセンスを“Encapsulation=カプセル化”して、ハイレゾのリニアPCMファイルをより小さなサイズのリニアPCMファイルにエンコードします。私たちはこれを“オーディオ折り紙”と呼んでいるのですが、ハイレゾのマスター音源もビットレートをCD品質と同等以下の約1Mbpsにまで“折り畳んで”小さくすることができます。独自にエンコードしたファイルをMQA対応のデコーダーで処理すれば、元の演奏を忠実に再現したリアルな音楽体験が可能になります。エンコードプロセスでは何も足し引きすることなく、ロスレスで正確に圧縮をかけるところがMQAの技術的な特徴です」。

会場に用意された音源のリスト。ビットレートはダウンロード版が1.5Mbps前後、ストリーミング版が1Mbps前後のFLACファイルになっている

MQAの「A」は「Authenticated(=お墨付きを与える)」という意味だが、その音楽ファイルがMQAのエンコード処理によって制作され、対応するデコーダーによってきちんと再生されているものであることに「お墨付きを与える」ための仕組みも作られた。

「メリディアン・オーディオではMQAの採用スタジオにエンコードシステムを納入する際に、しっかりと仕様の手引きを行います。MQAでエンコードされたファイルは、それがマスター音源のクオリティを正確に再現するものであるということを、スタジオエンジニアやアーティストが認めた場合に、メタデータの中にそれを証明するフラグを書き込んでもらいます」。

「そしてデコーダーを搭載する機器側でフラグを読み取ると、オーディオ機器の本体に搭載されているLEDランプが点灯したり、パネルに表示を出したりなど、そのファイルがMQAプロセスで制作された「お墨付き」データであることをユーザーが視覚的に見分けられるようになっています」とスチュワート氏。ちょうどPonoMusicの再生システムが採用している「Pono Symbol」のコンセプトと仕組みに近いもののようだ。

■日本でMQAが楽しめるようになるのはいつなのか?

MQAの技術にはミュージックレーベルやディストリビューター、ストリーミングサービスなど様々なコンテンツ制作サイドが強い関心を抱いている。今回のCESで発表された「TIDAL」は、昨年10月からCD品質のロスレス音楽ストリーミング配信をアメリカ、カナダ、UKの各地域でスタートした。月額利用料金19.99ドル(約2,400円)で、約2,500万タイトルが聴き放題。2015年前半にはMQA対応のロスレスストリーミング配信がスタートする予定で、メリディアンのデジタルミュージックシステム「Sooloos」などを使って楽しめるようになる。

さらにメリディアン・オーディオの広報担当者によれば、TIDALは2015年の後半までにワールドワイドでサービスの提供を検討しているという。日本ではハイレス・ミュージック(株)がメリディアン・オーディオの製品を取り扱っているが、ヘッドホンアンプの“Prime”「PHA-1」(関連ニュース)がMQA対応アップデートを予定している。ハードとともにMQAの音源が楽しめる日が来るのもそう遠くなさそうだ。

ヘッドホンアンプ「PHA-1」(写真上段)もアップデートでMQA対応を予定する

CESの会場では、メリディアン・オーディオのデジタルミュージックシステム「Sooloos」とDSP搭載スピーカーシステム「DSP7200」の組み合わせによるMQA音源のデモが体験できた。MQAの効果を非対応音源と比較するデモではなかったため、MQA音源単体のインプレッションを報告するが、立体感とディティールの解像感が極めて豊かなサウンドで、音像の広がりも、これまでに聴いたハイレゾ音源とは別種の感覚だ。特に楽器の音は正確に揃ったアタックと明瞭なセパレーションを特徴としており、ビビッドで鮮度の高いリアルな音が再現される。

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