<山本敦のAV進化論 第33回>

オーディオテクニカの“フルデジタル”ヘッドホン「ATH-DN1000USB」開発者インタビュー&音質レポート

山本 敦

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2014年11月26日
オーディオテクニカから、世界で初めて音源からボイスコイルまでフルデジタル伝送を実現したハイレゾ対応のUSBヘッドホン「ATH-DN1000USB」が発売された(関連ニュース)。画期的な商品が誕生するまでの道のりには、開発者たちのどんな挑戦と苦労があったのだろうか。

オーディオテクニカから発売されたフルデジタル伝送対応のUSBヘッドホン「ATH-DN1000USB」

今回はオーディオテクニカを訪ね、本機の商品企画を担当したマーケティング本部 商品企画 コンシューマー企画課 主務の高橋俊之氏、技術本部 第一技術部 一課 AMP/MIXグループの築比地(ついひじ)健三氏にインタビューした。

オーディオテクニカ 高橋俊之氏(左)と築比地健三氏(右)


■オールインワンで手軽にいい音が楽しめるデジタルヘッドホンを目指して

高橋氏は「Aシリーズ」や「ADシリーズ」など大型ヘッドホンのほか、据え置き型のヘッドホンアンプ「AT-HA22TUBE」やDAC内蔵型の「AT-HA26」など、同社のピュアオーディオ系ラインナップの商品企画を担当してきたキャリアを持つ。オーディオテクニカは今年2月、192kHz/24bitのDACとヘッドホンアンプを内蔵するUSBヘッドホン「ATH-D900USB」(関連ニュース)を発売しているが、本機の商品企画も高橋氏によるものだ。築比地氏は「ATH-D900USB」からオーディオテクニカのヘッドホン製品の開発に携わり、今回のATH-DN1000USBが2機種目。主に基板の回路設計やレイアウトなど電気まわりの技術を担当されている。

まずはオーディオテクニカがPCによる音楽リスニング向けのUSBヘッドホンに力を入れる理由から尋ねた。

「ハイレゾを楽しむうえで、プレーヤーやDAC、アンプ、スピーカーなどそれぞれのコンポーネントをバラバラに揃えてシステムを作りあげる楽しさもありますが、一方で“オールインワン”のハイレゾ対応製品で気軽にいい音を聴きたいというニーズを汲み取りたいと考え、ATH-D900USBを開発しました。PCオーディオは難しそうだからと、始めるのを躊躇するという声をよく聞きます。でも、実際にはCDを買ってiTunesなどのアプリケーションで管理し、iPodに転送して聴くという使い方も、十分にPCオーディオと呼んでよいのではないでしょうか。このため、買ってすぐに楽しめる、いわゆる“オールインワン”タイプのDAC・アンプ内蔵型USBヘッドホンというカテゴリーにオーディオテクニカは注力しています」(高橋氏)。

PCにUSB接続して手軽にハイレゾ再生が楽しめる

「PCでハイレゾを聴きたい」というニーズは高まるばかりだ。その「クオリティ」に人々の関心が向いてきたことで、オーディオテクニカはフルデジタルUSBヘッドホンという新たな挑戦に踏み出した。

ヘッドホン側の端子はmicroUSB


■デジタル音声処理技術「Dnote」とは

「かつてのカセットからCDへの変遷を経て、今はデジタル化された音源データをパソコンで管理しながら聴く時代になっています。デジタル化された音源の、そのままの魅力を人の耳に届けるまで、いかに途中のロスを少なくできるかという挑戦のもと、フルデジタル伝送のヘッドホンをつくる計画がスタートしました」(高橋氏)。

ヘッドホンの開発に応用できるデジタル音声処理技術には様々なものがあるが、オーディオテクニカは(株)Trigence Semiconductorの「Dnote」という技術に着目した。高橋氏は「Dnote」との最初の出会いを次のように振り返る。「4年前、法政大学の安田 彰氏(現Trigence Semiconductor会長)によるセミナーに参加させていただいた際、初めてDnoteの技術に出会いました。その後、当社のフルデジタルヘッドホンに活かせる手応えを得たのは今から2年ほど前でした」。

Dnoteは「DSDに近い概念」だが“マルチビットデルタシグマ”ならではの仕組み

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