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<山本敦のAV進化論 第39回>ハイレゾの可能性を広げる

1Mbpsでもハイレゾ伝送、新ロスレスフォーマット「MQA」をメリディアン創設者に聞く【試聴レポート有】

2015/01/14 山本 敦
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ヘッドホンリスニングのデモはヘッドホンアンプ「PHA-1」と、AUDEZEの「LCDシリーズ」による試聴を体験。TIDALがリリースするMQA音源のデモを聴くことができたが、こちらも比較対象として用意されていたソースがMP3だったため、MQA単体のインプレッションを述べるに留めておく。クラシックは弦楽器の響きのふくよかさが段違いに良く、高域の繊細さと透明感は格別。SNも非常によく、ダフト・パンクのチューンは低域の俊敏なアタックと、彫りが深くディティールを緻密に描き込むサウンドが生々しい実体感に溢れていた。

ヘッドホン再生によるMQAのデモシステム

インタビューの最後、MQAの展開に向けた期待感をスチュワート氏に語ってもらった。「私たちはMQAが、これからの音楽文化の発展にそのものに大きく貢献できる可能性を持っていると信じています。スタジオは後世に残る最高の録音作品をつくることができるようになるでしょう。多くの音楽ファンがスタジオの音をそのままに、手元の据え置きシステムやポータブルオーディオで楽しんでもらえると期待しています」。

■ハイレゾ音楽ストリーミングの拡大にも期待

メリディアン・オーディオでは、MQAの技術を広くライセンス提供する考えを示している。ソフトウェアベースのデコーダーも用意されるため、スマートフォンやタブレットなどネットワークに接続して、オーディオストリーミングを直接受けて聴けるデバイスにも、今後MQAが広がることも有り得るだろう。

日本に限らず、いま世界でインターネットのトラフィックが急増し、高速化・大容量化に対応するインターネット・バックボーンの技術革新にも期待が膨らみつつある。日本国内では、IPTVをベースにした4K映像コンテンツ配信や次世代通信「5G」の普及を直近のテーマとして、ギガビットクラスのアクセス環境拡大のため多方面が先端技術の研究・開発に取り組んでいる。

結果として、現在日本は光ファイバーネットワークの普及が世界で最も進んでいる国の一つに成長を遂げており、特に直近の2〜3年の間では急速にインターネットバックボーンの「100G(Gbps)伝送化」が進みつつある。それどころか、世界のネットワーク先進地域では既に100Gクラスのインターネット・バックボーンは成熟期を迎えつつあり、次世代の「Beyond 100G」を模索しながら、200G/400Gクラスの“超高速伝送”を実現するための新たな先進技術の研究・開発にスポットライトが当てられている。

近い将来には一般家庭にもギガビットクラスの通信が安定供給されるようになるだろうし、その頃には4K映像配信のVODサービスだけでなく、ロスレスのハイレゾストリーミングサービスが家庭のオーディオ機器で快適に楽しめるようになるはずだ。

モバイルの方でも次世代の「5G」高速通信技術の研究開発が活発に進められている。さらに高速な通信を安定して利用できる技術が確立すればもちろんありがたいが、他方では現行の4G LTE環境でもキャリアが設けている通信速度制限によって、高品位な映像・音楽のストリーミングサービスを気兼ねなく利用できないという課題もクリアしなければならない。ロスレスのハイレゾストリーミングをLTEなど、セルラー通信を経由してアウトドアでも快適に楽しめるようになるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

さらにはワールドワイドでサービスを展開する海外のロスレス音楽ストリーミングが上陸してきた際、国内のコンテンツプロバイダーがこれをどう迎え撃つのかにも注目したい。e-onkyoなどハイレゾのダウンロード型配信はようやくビジネスとして軌道に乗ってきた感があるものの、MusicUnlimitedやレコチョク Plus、KKBOXといった日本の代表的なサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスは、現在のところ最高音質320kbpsでの展開に止まっている。

まずはCD品質からでも、ロスレス音楽ストリーミングへサービスを次の段階へ進化させることは可能なのだろうか。あるいはロスレスのハイレゾストリーミングは、当面はTIDALをはじめとした海外勢のサービスが、コアなオーディオファンによるコアなユースケースとして居場所を確立するに止まるかもしれない。いずれにしても、その認知拡大のカギは「MQAの音の魅力」にかかっているとも言える。国内でMQAのサウンドが体験できる日が待ち遠しい限りだ。

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