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【連続レビュー第1回】

マークレビンソンから待望のデビュー、USB-DAC内蔵プリメイン「No585」を角田郁雄が聴く

公開日 2014/10/20 10:45 角田郁雄
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次はCDを再生してNo585のサウンドを確認する。試聴したのはブルーノ・ワルターによる『交響曲第1番「巨人」(平林直哉復刻)』の終楽章だ。このディスクは30cmアナログテープを、ノイズリダクションを使わずにダイレクトに44.1kHz/16bitにトランスファーしたもの。冒頭では、鮮度の高い壮大なシンバルの響きがステージに広がり、CDとは思えないスケール感に溢れた重厚な弦楽パート、管楽器パートの演奏が堪能できた。弱音を極め、壮大な力感を示すNo585は、CDを中心として、クラシックを聴かれる方も見逃せないサウンドと言える。

【CD】ワルター&コロンビア交響楽団『マーラー:交響曲第1番「巨人」(平林直哉復刻)』(CD、GS-2014、GLAND SLAM RECORD)

DACの分解能とダイナミックレンジの広さをアンプ部が最大限引き出す

次にMacBookPro(SSD搭載)とNo585のUSB入力を接続して、ハイレゾ音源の再生を行った。ミュージックプレーヤーには、Audirvana Plusを用いている。

パソコンと組み合わせてのUSB-DAC再生も確認した

最近、Blue Noteの往年のアルバムが気に入り、かなりの数をダウンロードしているのだが、その中からハービー・ハンコック『Maiden Voyage』(192kHz/24bit FLAC)を再生した。冒頭では中央付近からピアノとベース、そして左からはシンバルの小刻みで弾むようなリズムが聴けるが、その音には、デジタルというよりもアナログレコード、むしろアナログマスターに近い、目の覚めるような鮮度の高い倍音が聴ける。それゆえに左右に展開するフレディー・ハバードのトランペットとジョージ・コールマンのテナーサックスの響きの対比は、時折シャープな音圧を示し、鮮やかとしか言いようがない。ES9018の分解能とダイナミックレンジの広さが、搭載するアナログプリアンプとパワーブロックの威力とともに、フルに発揮していることが理解できる。

【FLAC・192kHz/24bit】Herbie Hancock『Maiden Voyage』(Blue Note Records、e-onkyo music)

【FLAC・192kHz/24bit】Freddie Hubbard『Ready For Freddie』(Blue Note Records、e-onkyo music)

さらにフレディー・ハバード『Ready For Freddi』(192kHz/24bit FLAC)も再生。トランペットのフレディー・ハバード、テナーサックスのウェイン・ショーター、ユーフォニウムのバーナード・マッキーニによる“3管”が繰り出す流れるような芳醇な響きに驚嘆する。同時に、アナログでも再生の難しいマッコイ・タイナーのピアノ、アート・デイビスのベースの響きにおいて、透明度、音の厚み、タイトさをきちんと描写してくれることにも驚いた。曲の中間で展開されるエルヴィン・ジョーンズのドラムスのブラシの音もリアルだ。この2枚の作品は録音から数十年を経ているが、No585はルディ・ヴァン・ゲルダーの録音や独特のエコー(エフェクター)の機微までを存分に聴かせてくれ、録音した場所に居合わせたメンバーだけが聴いていた音がいま目の前に再現されているような気さえする。

角田氏は視聴後、No585を“ミュージック・コンソール・アンプ”と表現していた


No585の音楽再現性もさることながら、そのデザインや操作の楽しみにも惚れた。ゆえに、私にとってはNo585を“ミュージック・コンソール・アンプ”と呼びたくなるのだ。またセパレートアンプにこだわらない読者やインテグレーティッドアンプ派の読者にとって、搭載された技術を考えると、価格も極めて適正と言える。長く愛用できるモデルとして、私は推薦する。専門ショップや六本木のハーマンストア(11月以降・予約制)で、その音楽、そしてオーディオコンポーネントとしての存在感をぜひ確認してみてほしい。

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