液晶テレビ「50年ぶりの革命」の真価とは

「AQUOS クアトロン」は一体何がすごいのか − 革新的な技術の全貌に迫る

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2010年11月08日

山之内 正が観た新AQUOSインプレッション


想像以上に奥が深いクアトロンの映像表現

LXシリーズで映画の忠実再生を目指すなら、2つの映画モードと「フォト」モードがお薦めだ。後者は色温度の設定を低めに変更すればフィルムに適した色調と自然な階調再現を引き出すことができる。今回は、正確な階調再現を実現しつつ4原色技術のメリットが引き出せる「映画(クラシック)」モードを中心に視聴した。

クアトロンパネル最大の特徴である精細度の高さと優れたコントラストは、『きみに読む物語』のチャプター2、ノアとアリーが出会うシーンに見事に現れている。夜空を背景に浮かぶ色彩が鮮やかな夜の遊園地でノアが強引にデートを迫る場面だ。ここで二人の顔から生き生きとした表情が読み取れるのは、肌色を中心にした中間輝度領域が不自然に沈み込むことがなく、自然な明るさと艶やかさを確保していることに理由がある。背景の夜空が深く沈み込む一方で紅潮した肌や目の輝きには力があり、両者の対比が際立つ。同じ場面をCCFLバックライトの従来モデルで見ると、映像から伝わるべき高揚感が一歩も二歩も後退していることに気付く。従来の映画モードでは平均した仄暗さのなかに重要な情報が埋没してしまうのだ。

濃密さと透明感を両立させた色彩表現は、クアトロン最大の美点に挙げるべきだろう。黄色や赤にはコクと深みがあり、撮影監督が意図するノスタルジックな描写を狙い通りに再現。その半面、原色にも過剰な「濃さ」はなく、純度が高く、抜けがいい。なかなか両立が難しい表現だが、クアトロンはそこに大きな強みを発揮する。

この作品のカメラは人物を立体的にとらえる手法が見事で、ノース・カロライナの自然描写の美しさとあいまって印象的なシーンがたくさんある。その立体感を引き出すうえで大きく貢献しているのが、1.3倍に増えたサブピクセルを活用する「フルハイプラス回路」の存在だ。前述のナイトシーンでは細部に及ぶコントラストの高さで被写体を引き寄せる効果を見せたが、明るい場面では背景との対比でフォーカスの精密さを際立たせ、その結果として目を見張るような立体感を引き出している。

さらに、たんにディテール描写のきめが細かいだけでなく、映像の説得力に差が出ることが肝心な点だ。たとえば、LXの映像は表情のごく僅かな変化さえも克明に伝え、静的なシーンでも緊張が途切れない。目の表情の変化や筋肉の緊張など、漫然と見ていると見逃してしまうような細かい変化が自然に浮かび上がってくるのだ。既存のエンハンス処理だけでは、ここまで緻密なテクスチャーを引き出すことは不可能だろう。

『シャネル&ストラヴィンスキー』は、『きみに読む物語』とは対照的な映像で陰影の豊かさを強く印象付ける作品だ。モノトーンのファッションとインテリアが重要なカギを握り、明暗のコントラスト描写と暗部階調の忠実な再現力が問われる。多くの場面でココ、イーゴリ二人の表情が台詞以上に多くを語るので、この作品においても、映像の描写力はきわめて重要な意味を持つ。

今回観た場面では、ほとんど口を開かないにも関わらず、ストラヴィンスキーの揺れ動く心理が確実に伝わってきた。モノトーンの暗い室内シーンにも驚くほど多くの情報が埋め込まれている。その事実にあらためて気付かせてくれることからわかるように、クアトロンの映像表現は想像以上に奥が深いのである。



鴻池賢三が感じた「クアトロン」の実力

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