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『メアリと魔女の花』UHD BD化でこだわった“自然なHDR”。「ポニョフィルター」も活用した制作の裏側

公開日 2018/02/16 12:55 編集部:小野佳希
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この作業の何が凄いのか。奥井氏は「一般的に多い、SDRのマスターデータしかない場合、グレーディングツール上で手作業でマスクして、明るい部分だけ抽出してそこを持ち上げるくらいのことしかできない」と、今回のケースとの差を説明。

「特に(今回の『メアリと魔女の花』のような)手描きアニメーションの場合は元のマスターデータにHDR情報を何も持っていない。実写や3DCGの場合はそうした情報を持っている場合が多く、HDR化作業も比較的やりやすいのだが…」と言葉を添える。


柏木氏は「通常はHDR化の作業の段階でマスクデータがない作品がほとんど」とコメント。「その場合、輝度を上げたくない部分も上がってしまったりなどといった問題がどうしても起こる。そこをグレーティングツールの機能でマスクをかけたりなどで対処するわけだが、やはり限界がある。言葉は悪いが、どこかで諦めないといけない部分はある」と語る。

そこで今回は奥井氏が「事前にすべてのシーンを調べて、スタジオポノックの制作スタッフに『このシーンではこういうマスクが欲しい』という要望を伝え、マスクデータを書き出してもらった」とのこと。そして「そこから返ってきたマスクデータをグレーディングの現場に持ち込み、劇場公開用マスターデータをベースにHDR空間に広げていく作業を行った」という。

これに対し柏木氏は「(必要なだけマスクデータがちゃんと揃っている)今回は諦めようがない(笑)」と語り、そうした状況で作業できたため「妥協していない自然なHDR映像ができた」と述べた。


■UHD BD版“ポニョフィルター”も活用

2Kマスターから4Kへのアップコンバート作業にもこだわりが詰まっている。「劇場用2Kマスターの制作でも行う作業なのだが、映画らしさと画の柔らかさを演出するために映像に後からフィルムグレインやジッターを付加するという行程がある。これを2Kで実施してからアップコンバートするのか、元の映像を4Kアップコンバートした後に付加作業するのかでも違いが出るが、今回は後者を選んだ。柏木さんにいろいろ試行錯誤してもらったおかげで最良の状態になったと思っている」と奥井氏は語る。


この言葉に対し柏木氏は「どちらの方法にするか、最初は迷った」とコメント。「アップコンバートしてからの付加作業のほうがいいと予想していたのだが、これまで実際にやってみたことはなかったのでどうなるか分からなかった。頭から最後まで流してちょうどバランスがよくなるようにフィルムグレインの量も細かく調整しての作業だった。IMAGICAさんには何度もパラメータ変更をお願いし、テスト映像を出し直してもらったりして非常に助かった」と述べる。

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