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<連載:折原一也の“いまシュン!”ビジュアルプロダクト>

次世代BD「Ultra HD Blu-ray」の詳細をキーマンに聞く(前編)年内発売へ準備着々

2015/08/06 折原一也
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●著作権保護はAACS2.0によるネット認証を導入

Ultra HD Blu-rayでも使われる著作権保護技術「AACS」については、最新の「AACS2.0」が用いられることになった。

現行のAACSとの最大の違いは、ネットワーク鍵配信の採用だ。これはAACS2.0ディスクのオプション仕様となる(AACS2.0対応機器には必須機能)。AACS2.0のネットワーク鍵配信を採用したディスクでは、ディスク内にBD再生に必要な鍵を格納せず出荷され、初回再生時に再生機器からネット接続し、サーバーからネットワーク鍵を取得する必要がある。一度再生を行えば、機器内のセキュアな領域に鍵が格納され、2度目以降の認証は不要だ。

ネットワーク鍵配信の概念図

「ネットワーク鍵のシステムは、海賊版対策として導入されたものです。特に米国ではディスクが発売前に盗まれ、BDの発売前にネットに流出してしまうケースがあったので、映画会社のリクエストによって、万が一、発売前にディスクが盗まれても、発売日にならないと中のデータにアクセスできない仕組みとして策定されました」(小塚氏)

なお繰り返しになるが、AACS2.0採用のディスクであっても、ネットワーク鍵配信の採用はオプションという扱い。ネットワーク認証となれば再生機器も必ずネット接続が必要となってユーザーの混乱を招く可能性があるため、当初は従来と同様、ディスク内に鍵を収録する方法で、プレーヤー単体で再生できるようにしながら、徐々にユーザーの反応を見て採用が進められるだろう。

●リージョンコードは廃止へ

もう一つ、DVDからBDと続いて採用されてきた、ディスク/プレイヤーの発売地域に合わせて再生可否を制限する「リージョンコード」は、Ultra HD Blu-rayでは廃止される。

BDについては米国版・日本版が同一リージョンとなっていたが、欧州版BDなどを輸入して視聴していた人にとっては朗報だろう。

なぜリージョンコードを無くしたのかと思われるかもしれないが、アジアの一部地域で、その地域版の発売より早く米国版の海賊版が出回るケースもあったことも理由としてある。地域制限より正規版を早く入手する手段を提供する、という考え方に転換したためのようだ。

●パナソニックによるBD制作支援体制も進行中

今回のインタビュー取材では、「Ultra HD Blu-ray」規格化に向けてのBDA内での活動はもちろん、実際に「Ultra HD Blu-ray」の作品発売に向けて必要となるオーサリングツールや評価ツール、評価ディスク等の進捗も確認することができた。


「パナソニックとしては「Ultra HD Blu-ray」に関してBDAの規格化のみならず、BDA公式のテストディスク、AACSの認証ディスクの開発、オーサリングツールの開発、ベリファイヤ、オーサリングツール、オーサリングしたデータをデュプリケータに渡すためのインターフェースといったものもすべて開発をして、BDAによる認証を得ています」(森氏)

Ultra HD Blu-rayのハード/ソフト/オーサリングツールなどの開発状況

なかでも具体的な作品発売に向けて進んでいるオーサリングツールについては、米Jargon Technologies社に技術提供し、Ultra HD Blu-ray用商用オーサリングツールを開発中だ。既に6月にはプレビュー版が提供され、7月にβリリース(関連ニュース)、9月に1.0版が完成予定と、実際に映画タイトルの制作ができる体制が整いつつある。

なぜ、米Jargon Technologies社なのかと思う人もいるかもしれないが、同社には元PHL(パナソニック・ハリウッド研究所)のメンバーが在籍していることから、コミュニケーションを円滑に行えることも理由のひとつにあるという。また、オーサリングツール開発メーカーは作品発売後もディスク仕様に対する技術サポートが集中する立場となることもあり、スムーズなディスク制作を支援するため、動作の確認の取れたオーサリング技術の提供を行っている。

米Jargon Technologies社のオーサリングツール「Indigo Ultra」の概要

「米Jargon Technologies社のオーサリングツールのプレビュー段階のもので、ハリウッドの2時間ものの映画タイトルと、日本国内のタイトルのものも、既に試作レベルではオーサリングが進められています」(森氏)と、Ultra HD Blu-rayディスクの年内発売に向けて、着々と準備が整えられているようだ。

Ultra HD Blu-ray規格の全体像の紹介が長くなったが、今回はまださわりしか紹介していない。後編では「Ultra HD Blu-ray」の特に「HDR」関連と、4K/2Kの互換性などについて、これまで明らかにされていなかった情報を含めて詳しく解説していこう。

(折原一也)

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