“ソニー ハイビジョンクオリティ”を
すべての分野で強く推し進めていく


ソニーマーケティング(株)
代表取締役社長
宮下次衛氏



すべての商品をハイビジョンに、という命題のもと、液晶テレビ「ブラビア」を中心に、プロジェクター、BDレコーダーなどすぐれたハイビジョンの商品を連打しているソニー。さらに注目の有機ELディスプレイの商品化を世界で初めて実現、あらためてその技術力の高さを周囲に見せつけた。快進撃をつづけるソニーマーケティングの代表取締役社長 宮下氏にお話しを伺った。

インタビュアー:音元出版社長 和田光征

■ 金賞はブラビアの最高峰テレビ&プロジェクター

―― このたび御社はビジュアルグランプリ2008において、液晶テレビブラビアのX5000シリーズ、W5000シリーズ、そしてプロジェクターのVPL-VW200が金賞を獲得されました。まずはご感想をお聞かせください。

宮下 ブラビアのXシリーズは、ソニーにとってトップステージモデルといった位置付けのラインナップです。皆様から高い評価をいただけているということは、誠に嬉しい限りです。

プロジェクターのVW200はまだ市場に出ていませんが、特約店様からは高い評価をいただいておりますし、銀賞を頂戴したVW60は既に市場で高い支持をいただいています。今回、これらのプロジェクターが賞をいただいたということは、私たちとってブラビアと同じぐらい大変喜ばしいことです。

日本におけるプロジェクターのマーケットというのは、まだアメリカに比べてそれほど大きくはありませんが、我々は間違いなく日本でもホームシアターの時代が来ると思い、このような商品をつくっています。それも同時に評価していただいたのかと、二重の意味で大変光栄です。

ビジュアルグランプリ2008 金賞
液晶テレビ“BRAVIA”「KDL-52X5000」「KDL-46X5000」「KDL-40X5000」。フローティングデザインと6色のカラーオーダーを採用。フルHD倍速パネルを搭載した
ビジュアルグランプリ2008 金賞
液晶テレビ“BRAVIA”「KDL-52W5000」「KDL-46W5000」「KDL-40W5000」。フルHD倍速パネルを搭載したWシリーズ
ビジュアルグランプリ2008 金賞
SXRDプロジェクター「VPL-VW200」。120Hz表示に対応した上位モデル

―― プロジェクターも今年のモデルからブラビアという名前を出しておられ、テレビとともにブラビアシリーズの最高峰がすべて金賞を取ったという形になりました。


ブラビアのXシリーズでは、まず倍速フルHDパネルになってスポーツなどの動きの激しい映像に対応できるようになったところと、静止画の画質までもとことんこだわりぬいたというところが高く評価されました。

ところで、御社ではデジタルカメラとしてサイバーショットと一眼レフのαがありますが、それで撮った画像をテレビで大きく美しく見るということですね。その訴求のポイントについてお聞かせください。


宮下 私どもは、コンパクトサイズのデジタルカメラとデジタル一眼レフカメラ、またディスプレイも手掛けている数少ないメーカーの1つです。

デジタルカメラの画像はプリントアウトされることが多いと思われますが、テレビそのものが高精細になってきた中で、デジタルカメラの画像の美しさを大画面テレビでも、楽しんでいただきたいということが根底にあります。ブラビアに“プレミアム フォト”という機能を搭載したのは、写真独特のしっとり感をフラットテレビ上で再現したいと思ったからです。

デジタルカメラの画像をテレビで見るという一種のカルチャーをソニーとして提案し、定着させたいという気持ちがあります。最近はお店様でもデジタルカメラとフラットテレビを組み合わせたデモンストレーションをしていただいております。デジタルカメラの画像をフラットテレビの大画面で見ることを、お客様は新鮮に感じているのではないかと思います。まだスタートしたばかりですが、新たな写真文化にしたいと考えています。

―― またプロジェクターについても伺いますが、VW200はVW100からの久々のモデルチェンジということで、金賞という評価をさせていただきました。そして銀賞としてVW60を選ばせていただきました。今年のプロジェクター新商品の中では早めに市場に出たので、店頭での立ち上がりも好調、ビジュアルグランプリでのご販売店の票にその結果が出ました。

宮下 日本のプロジェクター市場は全体としては微減だと思います。テレビのサイズがこれだけ大きくなり、フラット化したことで、ブラウン管の時代にはなかったような46インチ、52インチクラスの大きなテレビが家庭で楽しめるようになりました。少なからずプロジェクター市場に影響を及ぼしているのかもしれません。

しかし、もっと大画面で本格的なシアターを楽しみたいというお客様は必ずいらっしゃいますし、プロジェクター市場はこれから少しずつまた微増の方向になると思っています。プロジェクター独特のしっとりとした映像というのは格別な味わいを持っていますから。


■ エポックメイキングな製品で「技術のソニー」を体現

―― さらに今回、BDレコーダーのBDZ-X90が銀賞となりました。これはモデルチェンジということで、第3世代にあたる商品ですね。機能的にはさらにステップアップして、MPEG2だけでなくMPEG4-AVCでの長時間記録が可能になりました。

今回一緒にAVアンプのTA-DA5300ESを銀賞で評価させていただきましたけれども、両機による次世代のサラウンドの対応を大きく見ております。この2機で、ドルビーTrueHDとDTS-HDという音のHDの方にも対応ができたということ、画もHDで音もHD、というところがようやく実現されたと感じています。

AVアンプは、国内ではこれ1モデルのみの発売かと思いますが、ここからHDオーディオへの対応はいかがでしょうか。


宮下 この商品での反応を見ながら、今後のAVアンプの方向性を検討していきたいと思っています。

ビジュアルグランプリ2008 銀賞
BDレコーダー「BDZ-X90」。MPEG4-AVC/H.264エンコーダーを搭載、画質・音質を高めた最上位機
ビジュアルグランプリ2008 銀賞
AVアンプ「TA-DA5300ES」。独自の高音質ロスレスデコードエンジンを搭載した7.1chモデル
ビジュアルグランプリ2008 銀賞
SXRDプロジェクター「VPL-VW60」。SXRD採用の“ブラビア”プロジェクター

―― さらに銅賞では、ブラビアのJ5000シリーズとして、あえて40インチ1モデルを取り上げさせていただきました。これについては、特にビジュアルグランプリの審査委員長である貝山知弘氏が、この商品こそが今回のブラビアの流れをつくったと認識され、価格に対するコストパフォーマンスのよさも含め、非常に高く評価をされたモデルです。

宮下 大変ありがたい評価をいただきました。

―― さらに技術賞として、有機ELの商品化ということを高く評価させていただきました。御社はさまざまな分野におけるエポックメイキングな第1号機を常につくって来られました。そういうものの1つとして、これは非常にインパクトがあり、その技術力というものを評価させていただきました。

ビジュアルグランプリ2008 銅賞
液晶テレビ“ブラビア”「KDL-40J5000」。独自技術「モーションフロー」を初搭載した40V型
宮下 ソニー(株)社長の中鉢が、ソニーの社長になっての第一声は3つありました。1つはお客様視点に基づいた商品づくり。それを中鉢は「カスタマー・ビューポイント・イニシアティブ」と言っています。

2番目は「テクノロジー・ナンバーワン・イニシアティブ」です。「技術のソニー」をちゃんと復活させよう、技術を求めようというのが2つ目の柱だったのです。そして3番目が「ゲンバ・イニシアティブ」ということで、設計の現場、製造の現場、販売の現場、いわゆる会社としてのオペレーション力をきちんとつけようということです。

今回の有機ELテレビは、まさしく中鉢が言う「技術のソニー」の1つの象徴であり、大きな意味を持った商品だと思っています。この商品によって、「技術のソニー」をお客様にもう一度印象づけることができればと考えております。

―― ブラビアが出たことにより、ここ数年で一気に御社のテレビのポジションが変わりました。この間の、特に国内市場を中心とした成功の要因は何でしょうか。

宮下 まずブランド名を変えたということが1つです。それまでテレビのブランドであった「ベガ」を「ブラビア」としました。さらに、「ベガ」の時にはプラズマと液晶を両方手掛けていましたが、それを液晶に絞って、設計も製造も販売も一丸となって背水の陣を敷いて取り組んできたことが、良い結果を出しているのだと思っています。

また液晶デバイスの製造に関しても、サムソンさんとの合弁であるS-LCD社が、当初のスケジュール以上にしっかりと立ち上がってきていました。我々にとってキーとなるデバイスが安定的に入ってくることが、大きな強みになっていると思います。


■ 画はもちろん、音も周辺機器もハイビジョンクオリティを訴求

―― また御社では、フルハイビジョンで勝負していくということを以前から表明されていました。技術のソニー、それから、モノにこだわる、画質・音質にこだわるソニーというのがテレビでまず実現され、併せてその周辺機器とともにハイビジョンの世界が本当の意味で完成したということが、今回の結果にもつながったと思います。

ビジュアルグランプリ2008 特別賞
世界初の有機ELテレビ「XEL-1」の商品化に対して
宮下 我々は国内において「ソニーハイビジョンクオリティ」というキーワードを展開して参りました。でも、何か物足りない気がしていました。それはやはり、お客様から見て、お求めやすい価格帯と豊富なラインナップが揃ったBDレコーダーが、なかったことだと思います。

それがこの秋には、お客様のご要望にこたえられる手の届きやすい価格帯であり、ラインナップの増えたBDレコーダーが登場しました。今回のラインナップは、お店様から見るとお客様の使われるスタイルに合わせて提案しやすい商品です。今回のBDレコーダーが出て、やっと念願の「ソニーハイビジョンクオリティ」が、本当の意味で完成しつつあるという実感を持っています。

―― そして御社はハイビジョンクオリティで、全部の商品を統一されてきました。これからはハイビジョンしかつくりませんというほどの意気込みのせいか、お店の方もお客様も含め、ソニーが戻ってきたという声をよく聞きます。

宮下 ありがとうございます。「ソニーハイビジョンクオリティ」の展開というところでは、ハイビジョン製品のラインナップの充実に加え、「ブラビアリンク」によってテレビ側のリモコン1つでBDレコーダーもオペレーションできますし、5.1chシアタースタンドなどテレビにつながるものはほとんど操作できるという世界を実現できたことも大きな理由だと思います。昨年までは、「ソニーハイビジョンクオリティ」と言いながら、1つのリモコンでそれらの機器が操作できないといったもどかしさがありました。

―― テレビが薄型大画面になって、その使われ方や家庭内での役割が大きく変わってきています。今後のテレビの方向性についてはいかがでしょうか。

宮下 テレビ画面が大きく、しかも高精細になっていく中で、世の中に散在している情報をテレビに集め、それをお客様に楽しんでもらいたいという気持ちが根底にあります。

「アクトビラ」はその気持ちの1つの方向性を示しています。夏以降発売させていただいているブラビアは全て「アクトビラ」対応になっており、購入されたお客様のうちネットワークにつないでいるお客様が10%ほどいらっしゃいます。現状では地上波放送、もしくはパッケージメディアや自分の録画したもので十分という方々が多いですが、次の楽しみ方であるネットワーク接続の提案はメーカーの役割であり、間違いなくその方向に向かうと思っています。

すでに10%の方がネットワークにテレビをつなげているというのは驚きです。将来的にはかなり明るいと思っています。

―― いよいよ年末商戦が始まります。抱負をお聞かせください。

宮下 私どもとしましては、家庭中の映像をハイビジョン一色にしたいと思っています。これから店頭での提案やさまざまなプロモーションなども、「ハイビジョン=ソニー」を全面に出していきたいと思っています。

―― これからも益々期待しています。ありがとうございました。

宮下次衛氏 プロフィール
1950年8月1日生まれ。鹿児島県出身、九州大学経済学部卒業。73年4月ソニー商事(株)入社後、四国ソニー販売(株)代表取締役常務、ソニー(株)国内営業本部ゼネラルオーディオ営業部統括部長、ソニーオブカナダ副社長、デジタルテレコミュニケーションビジネスセクタープレジデント、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)常務取締役を歴任。03年4月に現職であるソニーマーケティング(株)代表取締役社長に就任し、活躍中。


【関連リンク】
 ソニーマーケティング(SonyDrive)
  http://www.sony.jp/