「フルハイビジョンビッグバン」が完成
前向きに体を動かしながら提案し続ける


松下電器産業(株)
パナソニックマーケティング本部本部長
西口史郎氏

プラズマテレビ
VIERA
PZ750SKシリーズ


ビエラ「PZ750SKシリーズ」が特別金賞を獲得した松下電器。11月には新ディーガ(DMR−BW900が金賞を受賞)を市場へ投入し、同社の提唱する「パナソニックフルハイビジョンビッグバン」がいよいよ完成した。フルHDの世界がより身近になり、市場のさらなる活性化へも期待を集める。本家“ビエラにリンク”にも次々に新しい広がりを提案するパナソニック。西口史郎本部長に話を聞く。

インタビュアー:音元出版社長 和田光征

業界標準となったリンク機能。新提案でさらなる広がりを実現

―― ビエラ「PZ750SKシリーズ」が特別金賞を受賞しました。おめでとうございます。

ビジュアルグランプリ2008特別金賞
PANASONIC フルハイビジョンプラズマテレビ PZ750SKシリーズ(写真は50V型の「TH-50PZ750SK」)。
人に見やすい、人に使いやすい、環境を考えるのヒューマンコンセプトを大きく進化させた「ビエラ」の最上位シリーズ。3ウェイ6スピーカーによる迫力のサウンドを実現。“ビエラにリンク”では、アクトビラのビデオサービス、ドアホンへとリンクワールドを拡大した

西口 よりキレイに、より使いやすくということを徹底して行って参りましたが、この秋にはもう一段ステップアップを図ろうと、フルHDのラインナップを、プラズマを中心にして一気に拡充しました。その根幹となるPZ750SKシリーズが特別金賞を受賞できたことは大変うれしく思います。フルHD画質を極めるべく、レコーダーのディーガやSDムービーも強化し、その相乗効果も発揮される中での中核モデルの受賞に、喜びもひとしおです。

PZ750では、画質に対していただいていた様々な要望やご意見を検討し、よりよい画質作りを目指しました。操作性という観点からも“ビエラにリンク”が大変好評をいただいていますが、各社からも同様の提案が相次ぐ中で、ずっと提唱してきたリンク機能が業界標準にまでなってきたことは、本家として素直にうれしく思います。と同時に、そこでの競争を勝ち抜いていくために、さらにリンク機能を広げていこうということで、今回は、アクトビラでのフルハイビジョン映像の対応と、認識が高まりつつあるセキュリティ面でのドアホンへの対応で、「こんなこともできるんです」という提案をさせていただきました。特に当社の強みでもあるドアホンは、他メーカーでは真似のできないところです。画質のみならずリンク機能においても、業界を先頭を切って引っ張れる商品になっています。

―― テレビが、“見る”テレビから“使う”テレビへどんどん進化していく中で、御社の掲げられる「ヒューマンビエラ」という思想は、とても大切なものだと思います。審査会でも高く評価されました。

西口 商品づくりのポイントをどこに置くのかということです。お客様の立場に立ち、使っていただくときのことを常に一番に考え、商品づくりに取り組んでいます。テレビは常に家族で楽しむ商品ですから、人にやさしくなければなりません。例えば、目を刺激しすぎないですとか、お客様にとって本当に大事にしなくてはならないところに主眼を置いて商品づくりを行っています。それを「ヒューマンビエラ」というキャッチフレーズで展開しています。ここまでトータルで評価をいただけたことを、大変うれしく思います。

ビジュアルグランプリ2008金賞
PANASONIC フルハイビジョン液晶テレビ「TH-37LZ75」
「フルハイビジョンIPSαパネル」「フルハイビジョンWスピード」「フルハイビジョンWコントラストAI」の搭載により、斜めから見ても鮮明な、くっきり緻密で立体感豊かな映像を実現。動画解像度は600本以上。もちろん、ビエラにリンクに対応する

―― ビエラでは、37V型液晶テレビの「TH−37LZ75」も金賞を受賞しています。

西口 当社では、大型はプラズマ、中小型は液晶という棲み分けに変わりはないのですが、37V型というカテゴリーが市場でも広がりを見せはじめています。そこで、フルHDを要望するお客様に対し、液晶でお応えしていこうと導入させていただいたのがこの商品です。さきほどのヒューマンビエラのコンセプトは、もちろんプラズマテレビに限ったことではありません。視野角や動画応答性など、コンセプトに則った商品づくりにより、市場での販売実績も上がってきています。

―― 現在は、37V型というのが、ちょうど分岐点のサイズですね。

西口 フルHDのコンテンツを見ていただくと、37V型でもその差がはっきりとわかります。ボリュームゾーンでもあり、フルHDの画質をお求めのお客様と、お買い求めやすい価格を志向されるお客様と、両方の市場に対応する商品施策がこのサイズでは必要だと思います。

■フルHDの画質に匹敵する音質とその楽しみ方を提案

―― 薄型テレビは、スリムデザインを研ぎ澄ます一方、音質面でのご苦労もおありかと思いますが、ビエラでは、音に対するこだわりを強く打ち出されているのも大きな特長のひとつですね。

西口 大前提となるのは、テレビそのもので高音質で楽しんでいただきたいということ。そうした強い思いのもと、テレビに搭載するスピーカーの音も進化を遂げてきました。PZ750シリーズに搭載する竹繊維素材コーンは、音質強化はもちろん、環境にも貢献する技術です。また、以前、事業部ごとに分かれていた当時は、テレビの音質向上という面にも弊害があったかもしれませんが、現在は、パナソニックAVC社ということで一拠点に技術者も集約しており、横連携をとりながら、お互いに学びあう、教えあう環境が構築されています。テレビの音づくりにも、オーディオの音の専門家の意見が取り入れられ、今回も自信をもって、いい音に仕上げることができました。

PZ750SKシリーズに搭載したウーファーユニット。本シリーズは音の良さにもこだわった 一拠点に技術者が集約することで、横の連携がスムーズになったと語る西口本部長

―― デザインと音質の二律背反を、高い次元でいかに実現していけるかですね。

西口 テレビの奥行は極力薄くしたい、横幅は抑えたいという条件の中で、画質もそうですが、特に音質の向上は一番むずかしいテーマ のひとつです。しかし、テレビの音ではどうしても満足できない、或いは、もっといい音で楽しみたいというお客様もいらっしゃいますので、そこへ、ラックシアターというコンセプトを打ち出しました。これまでのホームシアターシステムでは、使用するときの煩わしさから敬遠される傾向がありましたが、その課題をビエラリンクで払拭しました。テレビ感覚で、リモコンひとつで簡単に操作ができます。

テレビ単体でもいい音で楽しめますよ。もっといい音でという方にはラックシアターがありますという二段構えで、今後も音の部分についても、気を抜くことなく追求していきたいと思います。

―― 映像が美しくなると、それに匹敵する“音”が求められてくる。そこへもきちんと焦点を定められているわけですね。

西口 今回は特に、「パナソニック「 フルハイビジョンビッグバン」を大きく打ち出しています。フルハイビジョン、イコール、高画質ですが、音の方も妥協せずに楽しんでくださいというメッセージを強力に発信していきたいと思います。

―― 業界全体の活性化という観点からも、音の方に目が向いてくるのは非常にいいことですね。

西口 これまでは、店頭で音のよさをデモしていただくのが非常にむずかしい面もありましたが、最近では、ラックシアターとの同時展示や、ホームシアターのコーナーを積極的に導入していただくなど、音の良さや魅力を訴求していただくための店頭の環境も整ってきたと思います。

■新ディーガで完成! フルハイビジョンビッグバン

ビジュアルグランプリ2008金賞
PANASONIC HDD搭載ハイビジョンBDレコーダー「DMR−BW900」
新世代システムSI「UniPhier(ユニフィエ)」採用、MPEG−4 AVC/H.264エンコーダー搭載で、世界初で初めて、フルハイビジョンのまま従来比4倍の長時間録画を実現。DVDにもフルハイビジョンのまま録画できる

―― パナソニック「フルハイビジョンビッグバン」では、新ディーガの登場に、市場でも大きな期待が集まっています。これからの市場動向、御社の展開についてお聞かせください。

西口 やはり、ブルーレイ(BD)は早く普及させていきたいですね。ただ、先ほども申し上げましたように、実際に商品を使っていただくお客様の立場に立って考えれば、全てのお客様、全ての使用シーンでBDが最適ということではありません。そこで、DVDレコーダーを含めたラインナップを用意しました。

お客様の要望を調査してみますと、「録画時間」への要望が一番多く、また、「普通のDVDにフルHDで録画したい」という要望もかなり強いことがわかりました。そこで、世界初のフルハイビジョン4倍録り、DVDにもフルハイビジョン録画できるなど、業界に一石を投じる高いレベルの商品内容を実現した、強力モデルとなります。

―― 審査会でも「これは別格だよ」という声が聞かれました。BD、さらにはDVDにも、放送やムービーで撮影した映像が簡単にフルハイビジョンでダビングができるというのは大きな魅力ですね。

西口 いままで「ビエラにリンク!」ということで展開していく中で、ハイビジョンのままディスクに残せるという点店が、唯一十分ではありませんでした。それが、今回のディーガで完全に解消されました。われわれが提唱するフルハイビジョンビッグバンの完結です。

ビジュアルグランプリ2008金賞
PANASONIC フルハイビジョンSDムービー「HDC-SD5/SD7」
高い評価を集めるフルハイビジョン1920記録対応・テルニオン3CCD HD搭載に加え、大幅な小型軽量化により、高画質とコンパクトデザインを高次元で両立した。SD5はグリップ感の高いデザインで安定したスタイルで撮影できるヨコ型タイプ。SD7は携帯性に優れたタテ型タイプ

―― SDハイビジョンムービーも、運動会では大活躍でしたね。

西口 ムービーの歴史は小型・軽量化の歴史です。そこで先頭を切って走るには、SDカードが最適です。コンパクトにできることはもちろん、さらに、メカレスなので温度変化や衝撃に対して強いなど、いろいろなメリットを備えています。さらに、HDC-SD5/SD7では、画質や性能に妥協することなく、一方では思い切りコンパクトにしました。技術者泣かせではありますが、メインユーザーはお母さんですから、そこは徹底して追求しなければなりません。

撮り逃しがない、ミスがないという点もきちんと抑えていかなければならないポイントです。プリレック機能などのフィーチャーも、当初の予想以上に高い評価をいただいています。ものづくりの思想の原点は、お客様の悩みをどのように解消していくかです。SD5/SD7でのこうした機能の高い評価を再認識し、ムービーのみならず、あらゆる商品の開発に対し、こうした思想を徹底していきたいと思います。

■合理性はエコを満足させた上で追求していくもの

―― 御社は、エコに対する取り組みも大変強力です。それを代表する形で、尼崎工場のエコに対する取り組みが特別賞となりました。

西口 すでに、商品においては省エネという観点だけでは片手落ちと言えます。当社では業界の先頭を切り、取り組みを推進してきましたが、松下電器のフラッグシップであるプラズマテレビ、そのメイン工場である尼崎工場にそのような評価をいただいたことは、まさに、われわれが取り組んできた内容とその意図をしっかりとご理解いただき、非常にうれしく思います。

―― エコと一口に言いますが、激しい競争環境の中で、経済効率性を保ちながら実現してくのは大変でしょうね。

西口 地球に優しいというのはもはや当たり前のこと。企業の社会的な責任という観点からすれば、経済効率を考える以前の問題として、取り組んでいかなければなりません。次元が異なるレベルでの取り組みテーマになってきていると認識しています。どちらをとるかというのではなく、エコを満足させて上で合理性を追求していくのが、これからの歩んでいく道と覚悟しています。

―― さて、パナソニックフルハイビジョンの強力な商品群が揃い、年末のデジタルAV市場は大いに期待されますね。

西口 業界こぞって新製品が投入され、テレビもフルハイビジョン、大型を中心に盛り上がり、非常に期待できると確信しています。来年には北京オリンピックもあります。当社はオフィシャルスポンサーでもあり、この商機を逃すことなく、年末商戦から次の春商戦へ向け、お客様に喜んでいただける商品を次々に出して参ります。

北京オリンピックのオフィシャルスポンサーとして、フルハイビジョン製品の拡販を強力に推進する

―― 年末商戦のお客様も、北京オリンピックを購入する商品で楽しもうという意識が大変強いのではないでしょうか。

西口 リンク商品、リンク販売がより一般的になってくるのも大きな特長のひとつと捉えています。これだけリンク、リンクといわれ始めますと、例えば、テレビを購入する場合にも、レコーダーはどれを買ったら使いやすいとか、ラックシアターならもっといい音で楽しめるとか、エンドユーザーはもちろん、販売店の方々も、バラバラに商品を揃えるのではなく、テレビにどうつながるかを常に意識しながら購入、販売するスタイルが定着してくると思います。

―― テレビは家族皆で使うもの。そこにいろいろな商品がつながってくる。これから先、パナソニックのビエラにリンクにどのような提案が出てくるか楽しみですね。

西口 ドアホンも出てきました。その輪は確実に広がっていきますので、是非、ご期待いただきたいですね。この業界は足が止まったらだめ。常に前向きに体を動かしながら取り組んで参ります。

―― 年末年始商戦、さらに北京オリンピック商戦へ向け、市場のさらなる活性化へご活躍を期待しております。本日はどうもありがとうございました。




西口史郎氏 プロフィール
1957年1月6日生まれ。三重県出身。1980年4月一橋大学商学部卒。昭和55年松下電器産業(株)入社。その後アメリカ松下出向、テレビ事業部国際部部長、テレビ事業部商品企画部部長、LCDテレビビジネスユニット長を経て、今年4月より、パナソニックマーケティング本部本部長に就任。趣味はハイキング。


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