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【特別企画】ジョン・フランクス氏が語る

CHORDのアンプ技術の核心とは − 航空電子技術の応用で生まれたオーディオ用電源の秘密

公開日 2017/12/12 10:28 構成:編集部 小澤貴信
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プリアンプとプリアンプ機能搭載DACは併存していく

ーー CHORDのプリアンプについても伺いたいです。D/Aコンバーター「DAVE」は、優れたデジタルボリュームを搭載していてプリ機能も内包しています。一方でCHORDは、従来的なアナログ・プリアンプもラインナップしています。CHORDが考えるプリアンプの未来は、DAVEのようにデジタル領域でDACに統合されていくのでしょうか。あるいは従来的なプリアンプに依然として優位性があるのでしょうか。

フランクス氏 長いスパンで見れば、プリアンプの機能はデジタル領域に統合されていくと考えています。しかし、既存のかたちのプリアンプは機能面でも音質面でもまだ重要な役目を担っていますし、CHORDも様々な技術とノウハウを持っています。また、ユーザーはまだまだ既存のプリアンプの形を求めていると思います。こうした意味で、今後10年ないし15年は、それぞれの方式が共存するかたちになるのではないでしょうか。

CHORDは、D/AコンバーターにDAC機能を統合する一方で、従来型のプリアンプにも力を入れている。写真は「CPA5000」

ーー CHORDのプリアンプについて、技術面で特徴はどのようなポイントになるでしょうか。

フランクス氏 プリアンプはボリューム調整や入力の切り替えという地味だけれども必要不可欠な役割を負っています。だからこそ粛々と安定的に動作して、かつ音への色付けを一切行わないことを念頭に開発を行っています。

ひとつ付け加えておきたいのは、ご存知の通りCHORDはモデルチェンジが非常に少ないことです。「MkII」モデルを出すこともありますが、それさえ頻度が少ないです。このジャンルは製品の進化もデジタルに比べてゆったりとしていますから、ユーザーのことを考えてれば長く使っていただける優れた製品を提供することが重要です。特にプリアンプやパワーアンプは、長く使っていただける高い完成度とデザインが重要だと考えています。

思えば30年前にBBCに納入したアンプがSPM600のカスタム仕様機だったのですが、その後継の現行製品がSPM650ですから、型番の数の変化からも、モデルチェンジの少なさが伝わるかと思います。

建築にヒントを得たデザイン/開発では様々なスピーカーを鳴らして検証

ーー CHORDのアンプのデザインは非常にユニークです。DACからアンプまで、一貫したデザイン性に惹かれるユーザーも多いです。このデザインには何かモチーフはあるのでしょうか。

フランクス氏 見ただけでCHORDの製品だとわかっていただけるルックスであることは重要です。デザインについては、私が建築にも興味を持っていて、そちらからインスパイアされている要素が大きいです。また、CHORDは長いスパンで製品を使っていただけることが多いですから、世代の異なるCHORD製品が混在しても違和感がないよう配慮しています。その意味でも、普遍的なデザインであることを常に意識しています。

TIAS 2017では、B&W「803 D3」との組みあわせでデモが行われた


ーー 最後に質問なのですが、CHORDがアンプ開発を行う上でリファレンスとしているスピーカーというのはあるのでしょうか。

フランクス氏 アンプの開発にあたっては様々なスピーカーと組み合わせての検証を行っていますが、リファレンスがひとつだけというようなことはありません。

CHORDのリスニングルームには、B&WやWilson benesch、さらにはKEFのMUONという非常に大きなスピーカーも用意しています。近々、PMCのスピーカーも導入する予定です。

それぞれのスピーカーとの組みあわせで良いところがあり、これが1番というのはありません。また、あくまで開発する上でのリファレンスですので、上に挙げたスピーカーが私の好みであるということとも違います。

スピーカーとの組みあわせという点では、CHORDは世界中のショウに参加しているので、行く先々で様々なスピーカーとの組みあわせの音を聴くことができて、それぞれで新しい発見があります。そのような場では、スピーカーの技術者とも意見交換を行います。我々はCHORD製品に対して特定のスピーカーを想定することはなく、その点はユーザーに委ねて、エレクトロニクスに注力するというスタンスを採っていきたいと考えます。

ーー 本日はありがとうございました。


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