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公開日 2026/09/02 06:30
独自のバーンイン処理 H.S.E.プロフェッショナルも実施

計算された“撚り”がもたらすハイスピードな音楽表現。ティグロンの切り売りケーブル「SP-ZERO」の可能性

炭山アキラ

ケーブルの存在をより“ゼロに近づける”アプローチを追求し、今年誕生したティグロンの「ZEROシリーズ」。現在は切り売りスピーカーケーブルと電源ケーブルをラインナップするが、ここでは切り売りスピーカーケーブル「SP-ZERO」の魅力を炭山アキラ氏がレポートしよう。



TIGLON 切り売りスピーカーケーブル「SP-ZERO」(1.0m:1,485円/税込)※1巻=150m 



音楽の深みや表現力を自然に引き出す


ティグロンの新作スピーカーケーブルはとても廉価な切り売り対応製品だが、侮ってはならない。導体はDF-OFCの1.25スケアで、絶縁体は特殊なPVC、2芯をやや強めに撚り合わせた構造と、スペック上はさほどのことはないように感じさせるが、そこはティグロンである。


まず素線の撚り方を工夫し、+と−の撚り合わせもさまざまに試作を繰り返し、音が煮詰められている。もちろん、魔法のバーンインH.S.E.プロフェッショナル処理済みである。



「SP-ZERO」は撚りだけでなくピッチや処理、太さ等々様々なタイプを試作して試聴を繰り返して完成した


自宅リスニングルームで音を聴いた。クラシックは音に突っ張った部分がなく、さりげなく広がる音場のグッと奥にオケとコーラスが定位するという、ごく自然で耳当たりの良い音楽再現に惹かれる。


グランカッサやティンパニの量感はやや少なめだが、これはもう絶対的な物量の問題だ。しかしその分だけ、スパーンと軽やかに音が耳へ飛び込んでくる。一方、強烈なメタルパーカッションは肌当たりのキツさを抑えつつ、キリッと芯のある音が快い。


ジャズは音源持ち前の濃厚さや深みをしっかりと表現しつつ、ピアノの打鍵やドラムス、とりわけタムのアタックなどを軽やかかつハイスピードに決める。DF-OFCならではの肌当たりの優しさ、きめ細かさに、ツイストしただけで大きな制振を加えていない構造からくる開放感が、ものの見事にマッチした再生音ということができるだろう。


音源自身が装置によっては結構重く聴き疲れを誘いかねないものなのだが、このケーブルでその心配はほとんどないとだろう。


アコースティックな声ものは、伴奏のコントラバスの反応の良く闊達な鳴りっぷりが好ましい。歌唱はしっとりと潤いを帯び、歌い上げる時の迫力や抜けの良さはもちろん、フッと力を抜いた時に感じる吐息の温かみなど、かなり高度な表情の描写が耳へ届いて感激した。


ポップスは歌姫の歌唱がほんのりと優しく、しかし心臓へ直接届くような情感に思わずハッとする。なまじ私自身がレファレンス・システムをキリキリと締め上げた鋭く厳しい音に躾けているものだから、こういう表現が時にやってくると、思わず仕事を忘れてゆっくりと音楽を聴いてしまいそうになる。もっと普通に音楽を楽しんでおられるマニアなら、この仕事でささくれ立った神経をゆっくりとほどいてくれる表現の方向こそ、導入したいのではないか。


時計回りと反時計回り、その音質の違いに驚く


今回、ティグロンの沖野代表が面白いものを同封して下さっていた。本ケーブルは+と−の線を反時計回りに撚り合わせたツイスト線だが、試作の段階で時計回りに撚ったものも製作し、音を聴き比べて反時計回りに決められたとか。その時の時計回りバージョンを、まったく同じ長さで用意してくれていたのだ。


取り替えて聴いてみると、うん、こちらも決して悪くはない。クラシックはグッとメリハリをつけ、オケとコーラスの音像がリスナーに襲いかかるような表現になった。ジャズもグッと音像が前へ出て、鬼気迫るような緊張したセッションが繰り広げられる。


アコースティックな声ものは、ピンと緊張の糸が張ったような、伴奏のコントラバスと対峙しながらセッションしているような、厳しい空気が空間を満たす。ポップスは声の潤いや吐息の温かみといった表情が後退し、録音現場の緊張感が伝わってくるような表現になる。


これも決して悪くはないが、長時間聴き続けるなら断然、反時計回りの方であろう。ただ撚り方を逆にしただけで、芯線の素材も太さも被覆の材料も厚みも変わらないというのに、一体なぜここまで音が変わってしまうのか?オーディオにはまだまだ理論立てられないが、音が変わる要素というものが山ほどあることに気付かされる。



バイワイヤに対応した撚り合わせで導体面積を2.5スケアに倍増させることも可能


本ケーブルは、バイワイヤに対応した撚り合わせのバージョンにすることもできる。導体断面積が2.5スケアに倍増することから、それをそのままシングルワイヤリングとして聴いてみると、確かに低域方向の量感と表情が少し豊かになる。


今回はわが家にバイワイヤ対応スピーカーがなかったので試せなかったが、近日対応機を用意して、本来の性能をテストしてみようと思う。




(提供:ティグロン)


本記事は『季刊・Audio Accessory vol.201』からの転載です

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