自分の求める音に出会う喜び。CDからストリーミングまで、ティアック“507シリーズ”によるオーディオ的悦楽
大橋伸太郎A4サイズのコンパクトボディに、エッジの効いた多機能を盛り込みヒットを飛ばしてきたティアックの“Reference 500シリーズ”。2025年は、その最新世代「507シリーズ」が一挙登場し市場を沸かせた。CDトランスポート「PD-507T」やネットワークトランスポート「NT-507T」も投入、あらゆるデジタルソースに対応できる柔軟性を獲得している。
今回は、その「507シリーズ」全5機種+クロックジェネレーター「CG-10M-X」を一挙に試聴。ティアックのあくなき音質への追求を探った。
好みのシステムと音質を追求できる“参加型システム”
ティアックのReference300、500、700シリーズのアワード受賞の報せが続々と届いている。PHILE WEB発信元の音元出版主催の各賞では、オーディオ銘機賞の複数の賞、VGPピュアオーディオ部会の多くのカテゴリーで部門金賞に輝いた。
同社のReferenceシリーズは小型サイズ、機能別に分化した構成に特徴がある。日本では、ピュアオーディオことにハイエンドになるほど、投資に応じた財貨感と多機能を担保するために大鑑巨砲主義になることが避けられなかった。Referenceはこの常識を打ち破った。
ティアックは、プロ用ブランドTASCAM等を通じて、オーディオの「謹聴するもの」から「演る、作る、録る、聴く」への変化にいちはやく対応を果たした。異なる使用機会やスペックへの要求に合わせて、ユーザー任意で構成コンポーネントを選択する参加型システムの提案がReferenceだった。
機能の分担が進むといきおい個々の筐体は小型化に向かう。また機能の独立で回路同士の干渉が減り音質上の好影響を生む。Referenceのコンパクトネスは、ライフスタイルに合わせたダウンサイジングという表面的なものでなく、音質の追求と表裏一体であった。
高感度なオーディオファイルにそれが理解され、Referenceはオーディオの新形態として定着したのである。
Referenceの中軸500シリーズは、昨年その多くが「507シリーズ」へ発展を遂げた。今回は、507世代の最新5製品とクロックジェネレーター「CG-10M-X」をシステムアップし、500シリーズがいまある音の到達地点を聴いてみよう。
最新507シリーズ5モデルの技術を詳解
試聴報告の前に選択した製品について紹介しておこう。
2025年12月に加わったばかりの最新作がネットワークトランスポート「NT-507T」(297,000円/以下税込)。「オーディオ銘機賞2026」ネットオーディオ大賞を受賞した。
ノイズ源となりやすいスイッチング電源でなくリニア電源を採用、TEAC Network Engine G4搭載の音質最優先設計。RJ-45の他、SFP光ネットワーク、Wi-Fi6ワイヤレス接続に対応、配信サービス各社に対応する他、高音質に特化したRoon onlyモード、RAATモードを備える。
9月発売のCDトランスポートが「PD-507T」(220,000円)。オーディオ銘機賞2026銅賞を受賞した。
ティアックと聞いてイメージするのが高性能の自社製メカニズムである。DACと並ぶ技術といっていい。本機搭載のメカはVRDSでないが、放送局で実績のあるCD-5020A。これにメカ上部のセミフローティング構造や専用の駆動回路を組み合わせ、高音質化を図った。
DAコンバーター/ヘッドホンアンプ/プリアンプ「UD-507」(327,800円)。スーパーハイエンドのエソテリック同様にディスクリートDAC TRDD5(TEAC Reference Discrete DAC)を採用。
電源部にハイカレント・ラインドライバーTEAC-HCLD2を搭載し、1200mV+1200mVの駆動力を実現した。今回はNT-507T/PD-507Tからビットストリームを受け取る。
パワーアンプ「AP-507」(308,000円)もティアックらしい尖った製品。クラスDパワー素子に蘭HypexのNCORExを採用した。市販されているモジュールとは別物のカスタム仕様である。協業の実績厚い両社だから実現した。
これにディスクリートのバッファアンプを組み合わせている。力強く鮮度の高い音を狙っての選択である。
Referenceシリーズの特徴にシステムアップ時の機能の重複をあえて避けないことがある。どちらを活用するかはユーザー次第なのだ。
プリアンプ/ヘッドホンアンプ「HA-507」(308,000円)が好例。UD-507があればもう一台のプリは必要ない。しかし、特筆すべきことに、HA-507はフルバランス/デュアルモノ仕様の純アナログアンプである。デジタルのシリーズの中で異彩を放つ存在。本機でどう音は変わるか興味がつきない。
最後に、まことにティアックらしい一台が外部クロックジェネレーター「CG-10M-X」(242,000円)。USB-DAC、CDトランスポート等10MHzクロック入力対応製品に高精度なマスタークロックを供給すればより原音に忠実な音質が得られる。
心臓部の水晶発振器には恒温槽を備え発振安定度の高いOCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)を採用。本機一台で4台までクロック供給が可能だ。
音質レビュー:クロックやプリアンプで大きく表現力が変わる
横長のラックにReference507の6機種を水平展開してみた。外装色ブラックで統一したこともあり、6台が並んでも威圧感がない。
まず、PD-507T+UD-507+HA-507+AP-507。CG-10M-XバイパスでCDを聴いてみよう。
感銘を受けたのが、庄司紗矢香の弾くモーツァルトの情報量。奏者の息づかい、呼吸が生々しく聴こえる。ヴァイオリンとフォルテピアノの位置関係も明瞭でにじみがない。ピアノの発声する地点が鍵盤を目視しているように鮮明だ。ミクロレベルの音場表現力。
小さなAP-507がBowers&Wilkinsの「802 D4」を掌中に収めたように鳴らしきるのに感銘を受ける。
シーネ・エイがピアノと共演し日本で録音した『SHIKIORI』も定位の表現の難しいソフト。ピアノの細やかな定位、パッセージを克明にときほぐす解像感、音色のゆたかさ、ダビングのエレピが音場にさりげなく乗ってくるようすの描写はみごと。
ここでCG-10M-Xをオンにしてみよう。変化は想像以上だった。シーネの声が桎梏を解き放たれたように伸び伸びと高々と空間に現われる。
歌声の背景の音場空間が大きく深い。聴き手に向かって音の奔流が押し寄せてくるようだ。演奏者二人さらにダビング多重で織り上げた重層的な音場にあらためて生命が吹き込まれた。
次に、ストリーミング。NT-507T+UD-507+HA-507+AP-507。CG-10M-Xはバイパス、ネットワーク有線接続。
ボズ・スキャッグスの新作『デトゥアー』(Qobuz 88.2kHz/24bit)は、ボズの歌声の鮮鋭感、精細感が甘く同タイトルCDに及ばない。
外部クロックCG-10M-Xをオンにしてみよう。ボーカルが一皮むけたように鮮度が増す。倍音が乗って音色が明るく声の地肌が鮮明に描き出される。CDに比べた時のもどかしかさが払拭された。これはひじょうに有効である。
ノラ・ジョーンズの『ヴィジョンズ』(Qobuz 96kHz/24bit)も同様の傾向。スペックが違うのでボズほどの差はないが、声の鮮度がオンで向上し、演奏がほぐれて歌声と演奏に太い芯が生まれる。ネットワークオーディオ中心でいくならCG-10M-X導入の意義は大きいと断言する。
次にアナログプリアンプHA-507を外し、USB-DAC UD-507とパワーアンプAP-507を直結してみよう。すなわちオールデジタル構成。
筆者はこの時のダイレクト感豊かなソリッドな音質をより好むが、アナログプリが入ったときの響きの一体感にも魅力がある。これは決着のつかない好みの問題で、聴き比べて頂くしかない。
507世代に発展したReference 500。機能、音質の両面で現在のオーディオ最前線にあることが確認できた。外部マスタークロックCG-10M-Xによる変化は大きく、ユーザーに導入を強くお薦めする。
一方、プリのアナログ/デジタルは音の嗜好の問題で、個々人に寄り添う柔軟でユーザーフレンドリーな思想にこそReference 500シリーズの真骨頂がある。
自分の求める音に出会う喜び。Reference500の新しさの本質はデジタルでもコンパクトサイズでもないのである。
(提供:ティアック)