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公開日 2026/07/31 11:30
評論家の麻倉怜士氏もゲスト登壇

「有機EL vs 液晶」論争再燃!? LGディスプレイ「Tandem WOLED」説明会で明かされたOLEDの強みと歩み

編集部:原田郁未

LGディスプレイ・ジャパンは、メディア向けに有機ELディスプレイの最新動向を紹介する説明会を開催。テレビ用有機ELディスプレイの市場動向や、2026年世代の「Tandem WOLED」に採用した技術などを説明した。



「Tandem WOLED」のロゴマーク


同社が日本でメディアデーを開催するのは今回が初めて。冒頭では、LGディスプレイ・ジャパン代表取締役社長のシム・ソヨン氏が挨拶。LGディスプレイが2013年に世界初という55型WOLEDテレビ用パネルを市場へ投入して以来、約13年にわたって 有機ELテレビ市場を切り開いてきたと振り返った。



LDディスプレイジャパン シム・ソヨン代表


現在では各社が有機ELテレビを展開しているが、画質技術だけでなく、LGディスプレイが量産性や歩留まり、信頼性、採算性といったビジネス面の改善を継続してきたことも普及につながっていると説明。スマートフォンにも有機ELディスプレイが広く搭載されるようになり、現在のディスプレイ市場ではコア技術としての地位を確立したとの認識を示した。


今後はテレビメーカーなどを対象とするBtoBに加え、BtoBtoCを意識し、その先にいる消費者への情報発信も強化していく方針だという。



「WOLED.」から「Tandem WOLED」へリブランディング


続いては、テレビやモニター向けデバイスの営業を担当するLGディスプレイ・ジャパンの松山智勇氏が、同社が手掛ける有機ELパネルの歩みや特徴、市場動向について解説。



LGディスプレイジャパン 松山氏


LGディスプレイは2025年末、テレビ用有機ELパネルのブランド表記を、2022年から仕様してきた「OLED.(オーレッドピリオド)」から「Tandem WOLED(タンデム ホワイトオーレッド)」へ変更した。 これは液晶パネル陣営の動きを意識してのリブランディングだったと松山氏は説明する。




液晶テレビでは、LCDをベースとしつつ、LED、MiniLED、RGB MiniLEDといった名称によって、世代ごとの技術進化が消費者に伝えられてきたが、OLEDは技術が継続的に進化していても長年同じ呼称が使われており、世代ごとの違いをイメージしにくかったという。


そこで、複数の発光層を重ねる構造を前面に打ち出し、技術進化を分かりやすく示す名称としてTandem WOLEDを採用したとのこと。


なお、「WOLED」は「ダブル」オーレッドではなく「ホワイト」オーレッドと読む。また、 Tandem WOLEDというブランドは4層構造を採用する最上位モデルだけを指すのではなく、3層構造のものを含むLGディスプレイ製WOLEDパネル全体の総称として使用しているという。


同社はテレビメーカー各社にも名称の採用を呼びかけており、将来的には店頭でも単なる「OLEDテレビ」ではなく、「Tandem WOLED搭載テレビ」などのように訴求されることを目指すという。


また、ブランドスローガンには「Always the Standard, Always Ahead(環境に左右されない揺るぎなき描写力)」を掲げている。輝度や色表現がいかなる場合でも均一であることや、漆黒の黒、ユーザーなどが画面に映り込まない低反射性など、一貫して正確な映像表現ができることを訴求していくという。



リブランディングと訴求点を改めてアピール


また、市場動向についても解説。北米と欧州のハイエンドテレビ市場で有機ELが一定のシェアを確保している一方、日本では2025年頃から液晶に対する比率が急速に低下していると説明した。



カナダのレビューサイト「RTINGS」によるモデル毎の総合評価スコア。OLED製品の高評価が見て取れる


日本のハイエンドテレビ市場では、2024年頃までは有機ELモデルと液晶モデルのシェアが概ね半々だったものの、現在、有機ELパネルのシェアは30%を下回っているとのこと。この傾向が続けば、その比率は2対8程度まで広がる可能性もあると見ていると松山氏は説明する。


ただし、この背景の一つとして、日本ではサムスンがテレビを展開していないという、海外との違いも大きいともコメント。


サムスンはハイエンドモデルとして有機ELテレビを積極的に展開してブランドとしての市場シェアも大きいため、そのサムスンが参入していないことが日本のテレビ市場での有機ELシェアの低さにもつながっているとした。


LGディスプレイとしては、テレビメーカーや販売店、メディアと連携しながらOLEDの進化を継続的に伝え、日本市場でもOLEDと液晶が50対50程度となる水準まで回復させたい考えを示した。


最新OLEDは反射率0.3%、ピーク輝度4,500nit。「ぶれない画質」を訴求


そして、テレビ用有機ELパネルの進化についても解説。


2022年には重水素材料を導入することで有機EL素子の長寿命化などを実現。翌2023年は「MLA(Micro Lens Array)」の採用によってピーク輝度を2,100nitへ高めた。そして2024年には「MLA+」と「META Multi Booster」から成る技術「META Technology 2.0」などのによって輝度3,000nitを達成している。


2025年には、RGBそれぞれの原色発光層を組み合わせた4層構造「Primary RGB Tandem 1.0」を投入。ピーク輝度を4,000nitまで向上させ、色域もDCI-P3 99.5%、BT.2020 83%へ拡大した。


2026年世代では、発光効率や駆動、アルゴリズムを最適化した「Primary RGB Tandem 2.0」を採用。ピーク輝度は4,500nitとなり、2025年世代と比べて約12%向上したという。



2022年から2026年までのOLEDの進化を辿った


もう一つの大きなトピックが、反射率0.3%を実現する反射低減技術「Perfect AR」だ。屈折率の異なる反射低減層を従来の2層から3層へ増やし、反射率を2025年の0.6%から半減。2022年の1.2%と比べると約4分の1となった。


他社からも低反射を特徴とするテレビが展開されているが、LGディスプレイは、数値上でも特に低い反射率を実現したと説明する。表面をグロッシーな質感に保ちながら、照明や外光の映り込みを抑え、明るい室内でも黒の締まりや色再現、解像感を維持することを狙った。


Tandem WOLEDの中心的なコンセプトは、視聴環境や表示内容が変化しても画質を安定させる「一貫性」だという。同社は「一貫性のある、ぶれないディスプレイ」を中核的なメッセージとして掲げる。


会場では、画面内の白い領域の割合を一定に保ちながら、その大きさや配置を変えるデモなどを実施した。Tandem WOLEDでは、画素単位で発光を制御する「Pixel Dimming」により、表示内容が変わっても測定位置の輝度や色座標が安定する様子を紹介した。



輝度や色座標を測定する機器を使用したデモを実施


参考展示されていたパネルは、ピーク輝度4,500nit、全白輝度450nit、DCI-P3カバー率99.7%、BT.2020カバー率83%。4K解像度を構成する829万4,400画素を個別に制御するという。同社は最大輝度の数値だけでなく、表示面積や背景色、室内照明が変化した場合でも、意図した色と明るさを再現できる点が重要だと説明した。



参考展示されていた「Tandem WOLED」のスペック


消費電力についても、一般的な映像を再生した際の実測デモを披露。テレビの輝度や消費電力は規定の測定方法に基づいて表示されるため、カタログ上の数値では液晶テレビに対して有機ELが不利に見える場合があるという。


しかし、有機ELは映像の黒い部分は画素を消灯できるため、実際の映像や画質モード、視聴環境に近い条件で測定すると、液晶テレビより消費電力を抑えられる場合があると説明。会場では比較デモを交えながら、その傾向を紹介した。



電力モニターによるTandem WOLED(左)とmini LED(右)との消費電力比較。同じ映像を再生した際の使用電力の差を可視化し、Tandem WOLEDの省電力性能をアピールした。


ただし、今回の比較は参考デモとの位置付けで、科学的な検証を完了したものではないという。同社では、実際の視聴環境に近い条件で有機ELの省電力性を示すため、検証を進めている段階だとした。


また、同社は2025年から、テレビ用WOLEDパネルをエントリーの「SEテクノロジー」、ミドルの「EXテクノロジー」、フラグシップの「METAテクノロジー」という3グレードに区分している。従来の2グレード体制から3グレード体制へ拡張し、普及価格帯から最上位モデルまで幅広い製品企画に対応する。


METAテクノロジーは最新の画質技術や機能を盛り込む最上位グレード。SEテクノロジーはフィルムを1枚減らすなど部材構成を見直し、OLEDならではのコントラスト性能を維持しながら低コスト化を図る。


両者の中間に位置するEXテクノロジーは、3グレード体制による恩恵を受けやすいグレードだという。SEで培ったコスト低減のノウハウを取り入れられる一方、METAテクノロジーに採用した高画質技術を展開することも可能になる。


なお、テレビメーカーとの共同開発や仕様調整も行われるため、同じグレードのパネルを使用していても、搭載機能や画作りはブランドごとに異なるとのこと。


同社はパネルの大型化や低コスト化にも取り組んでおり、現在の最大級となる97型に加え、100型を超えるサイズについても開発を続ける方針を示した。



デモではバックライトのみの状態のRGB Mini LEDモニターも用意し、Tandem WOLEDとの差異についても解説した


麻倉怜士氏「4層化で色の再現性と付加価値が高まった」


オーディオ・ビジュアル評論家の麻倉怜士氏もゲスト講師として参加し、近年の有機ELテレビの特徴や、各メーカーによる画作りの違いを解説した。同氏は、近年の4層構造について、ダイナミックレンジが広がっただけでなく、色の再現性も大きく向上したと評価する。



麻倉怜士氏


テレビメーカー側でも有機ELパネルの使いこなしが進み、同じパネルを採用していても、映像処理や駆動方法によってブランドごとの個性が明確になってきたと麻倉氏は指摘。パネル自体もメーカー側にとって使いこなしがいのあるものへ進化しており、ここ2 - 3年で有機ELテレビの付加価値が一段と高まったとの見方を示した。


なお、その有機ELテレビ各社の画作りについて麻倉氏は、LGは力強さと明瞭さを特徴とし、グローバル市場へ訴求しやすい「世界画質」だと表現。特に力強さではLGが最も優れていると評価した。


パナソニックについては、繊細さや品格を備えた映像が特徴だと説明。シャープについては、QD-OLEDを採用した経験によって、色の良さや色で人を感動させる方向へ画作りが進んだと評価。その後に4層構造のWOLEDを採用したことで、QD-OLEDや原色発光のパネルで培ったノウハウが生かされているとの見方を示した。シャープの映像からは、色使いや色への強いこだわりが感じられると述べた。


麻倉氏は、有機ELの価値はパネル本来の黒表現、コントラスト、応答性、色再現と、各テレビメーカーによる画作りが組み合わさることで生まれると説明。有機ELの進化を消費者や販売店へ伝えるためにも、今回のような勉強会やイベントを継続することが重要だと語った。

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