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公開日 2025/08/08 08:00
評論家・土方久明氏による講演に多彩なブランドが登場

国内外のハイエンドオーディオブランドが名古屋に集結。「サウンドピット創業祭2025」レポート

季刊・アナログ編集部:野間美紀子

名古屋のオーディオショップ・サウンドピット創業43周年を記念する創業祭2025が7月26日(土)と27日(日)の2日間、名古屋市中小企業会館「吹上ホール」9階の特設会場にて開催された。



試聴会講演の椅子席(80名ほど)は満席。立ち見をする来場者も


サウンドピットは、名古屋市名東区上社に店舗を構える中部地区随一のオーディオショップ。現代オーディオとヴィンテージ、また修理と守備範囲が広いが、この創業祭はニューオーディオに絞って展開している。


創業祭では評論家・土方久明氏による試聴会講演が2022年から行われており、人気を博しているとのこと。今年も丸2日間にわたって行われた。



土方久明氏。サウンドピット創業祭の司会進行も4回目である


製品ジャンルごとに区切って多様なモデルを試聴


国内外のハイエンドモデルが一堂に集められ、会場のオーディエンスの前方にずらりと並べられる。



国内外のハイエンド機器が一堂に並ぶ


そのなかから1日目の午前はソース機器、同日午後はアンプ、2日目は終日スピーカーシステムと、主役となるジャンルが決められ、ブランドごとに2曲のデモンストレーションが行われ、機器が入れ替えられていくという方式である。




オーディエンスの目の前の怒涛のパワーアンプ群と側方に並ぶソース機器とプリアンプたち


「昨年は1ブランド1曲でしたが、今年は1ブランド2曲じっくりと聴いてもらってそれぞれの機器の印象をつかんでももらいたい」と土方氏。


1ブランドごとに2曲ずつ、1曲目はメーカー担当者の選曲、2曲目は土方氏による選曲とし、テーマとなる機器の魅力をより引き出す選曲を「競う」形で、和気藹々とデモが進められた。


CDプレーヤーやネットワークプレーヤーのデモに登場したのは?


SACD/CDプレーヤーのデモでは、ラックスマン「D-07X」、マランツ「SACD10」という国産メーカーが円熟した完成度を披露。



国産のSACD/CDプレーヤー。上段奥(左)がラックスマン「D-07X」、手前(右)がマランツ「SACD10」


ネットワークプレーヤー系は、米シナジスティック・リサーチ「Voodoo」や、国産ブランドではスフォルツァート「DSP-Columbia」およびエソテリックGrandioso「N1T」などが登場。



ネットワーク再生系で注目を浴びているRoonサーバー。こちらはシナジスティック・リサーチの「Voodoo」




真ん中の上から3つと右の上から2番目と3番目がエソテリックのGrandiosoシリーズ。ネットワークトランスポート「N1T」とDAコンバーター「D1X SE」が再生された


また、オランダ・タイコオーディオのミュージックサーバー「Olimpus Server XDMI」とスイス・マスターフィデリティの新製品DAC「NADAC D」との組み合わせも用意された。



巨大なミュージックサーバー、タイコオーディオ「Olympus Server System」




タイコオーディオの「Olympus Server XDMI」と組み合わせたマスターフィデリティのDAコンバーター「NADAC D」。マスターフィデリティはマージングフィデリティ社から社名変更された名称


そして英国dCSは5筐体からなる新しいネットワークプレーヤーシステム「Varese」の音を披露。



注目度の高かったdCSの新製品「Varèse」システム


タイコオーディオの「Olimpus Server XDMI」は1700万円台、dCS「Varèse」システムは4300万円台という、ブランドのステート・オブ・ジ・アートといったモデル。その音は、オーディオでこんな音を実現できるのだ、と息を呑むような見事なハイエンド・サウンドであった。


アナログプレーヤーも聴き応えたっぷり


アナログプレーヤーの試聴も各国のブランドの特徴が発揮され、聴き応えたっぷりだった。


米国Mo-Fiの洗練されたターンテーブル「Master Deck」とフォノEQ「Master Phono」との組み合わせから始まり、独トランスローターのターンテーブル「ZET-3TMD」とトーンアームGLANZLAB「刀」に日本ブランドのカートリッジ3種を装着して聴き比べ。



真ん中がモーファイ・エレクトロニクスのターンテーブル「Master Deck」、その下の赤いディスプレイが美しいフォノイコライザー「Master Phono」




トランスローター「ZET-3TMD」+トーンアームはグランツラボの「刀」。カートリッジ3種、アナログリラックス「EX2000」、フェーズメーション「PP-5000」、マイソニックラボ「Signature Diamond」を聴き比べ


また、英国ヴァルテレのアナログプレーヤー「SG1-PKG」は、そのトーンアームの共振周波数をカートリッジに合わせて最適化できる機構をアピール。



ヴァルテレ「SG1-PKG」を操作する輸入元タクトシュトックの庵吾朗氏


独クリアオーディオは建築物のような「Master Innovation」にリニアトラッキングアーム「TT2」を搭載した音を披露した。



クリアオーディオの弩級ターンテーブル「Master Innovation」。頂上に同社リニアトラッキングトーンアーム「TT2」を搭載している


そして国産ブランド・テクダスは、新しいターンテーブル「Air Force III Premium S」に同社の「Air Force10」「TDC01Dia」と、クラウディオ「ARM-AP12」にDS Audio「DS Master 3」を装着したダブルアームを搭載。2種のカートリッジをそれぞれ鳴らした。


数百万円から一千万円クラスとなる現代各国のアナログプレーヤー群は設計思想もそれぞれに異なり、搭載するトーンアームやカートリッジの組み合わせで、音が変わる様子が次々と楽しめる贅沢な聴き比べとなった。



テクダスの「Air Force? Premium S」は上位機種の技術をコンパクトに凝縮したターンテーブル。ダブルアーム仕様で2種のトーンアーム+カートリッジの聴き比べを行った。一つはテクダス純正、もう一つはクラウディオのアームとDSオーディオの光カートリッジだ


プリもパワーも。アンプのデモも幅広いラインナップ


同日14時からはアンプが主役に。



怒涛のアンプ群の試聴に入る


国産真空管アンプブランドのトライオードが擁するJUNONEブランドからはプリメイン「JUNONE845SE」が登場。エアータイトからはプリアンプ「ATC-5s」とパワーアンプ「ATM-1 2024Ediotion」が披露された。



中央がJUNONE「JUNONE845SE」、手前がエアータイト「ATM-1 2024Ediotion」


英国コードはプリアンプ「Ultima Pre3」とパワーアンプ「Ultima 5」を出展。アキュフェーズはプリアンプ「C3900」にA級のパワーアンプ「A300」の組み合わせを披露した。TADは「TAD-C1000-S」と「TAD-M2500TX」の組み合わせだった。



コードのプリアンプ「Ultima Pre3」




手前のプリアンプがアキュフェーズ「C3900」




下がTADのプリアンプ「TAD-C1000-S」、その上がソウリューションのプリアンプ「757」、最上段がTADのSACD/CDプレーヤー「TAD-D1000X」


ギリシャのピリウムは弩級のプリメインアンプ「LEONIDAS」を、米マッキントッシュは2筐体のプリアンプ「C12000」とモノラルパワーアンプ「MC611」をデモ。独オクターブはプリアンプ「HP700SE」とモノラルパワーアンプ「MRE220SE」を披露した。



ブルーのディスプレイ部が象徴的なマッキントッシュの「MC 611」。右がソウリューション「711」。左に見えるのがリヴィエラ「AFM100SE」。奥の黒い巨大なアンプがピリウムのプリメイン「LEONIDAS」。その右側のラック上に載っている真空管アンプがオクターブ「MRE 220 SE」。その右に見えるのがボルダー「1151」


スコットランドのリンはKLIMAX DSM/3のプレーヤー部とプリ部を使用し、新製品のモノラルパワーアンプ「KLIMAX SOLO 500」を鳴らした。



リンのモノラルパワーアンプ「KLIMAX SOLO 500」も新製品として注目度が高い


ここからアンプ部で一千万円を超えるものとなり、米ボルダー「1110」と「1151」、スイスのソウリューション「727」と「711」などが登場。オーディオノートの「G-72」「Kagura2」、リヴィエラの「APL01SE」「APM100SE」も披露され、重厚長大な超弩級アンプ群のデモが来場者の度肝を抜いた。



オーディオノートの大型出力管211を使用したパラレルシングル・モノラルパワーアンプ「Kagura2」


大きなパワーアンプ群が前方に立ち並ぶ光景は迫力満点で、真空管や、ディスプレイ部が灯り、音が鳴り始めるさまは、まるで生き物のよう。ソースはQobuz、SACD、アナログ LPと多岐にわたり、各社が考え抜いて持ち寄った聴きどころのある音源を来場者がメモしている様子も印象的だった。



モーファイ・エレクトロニクスが製作してきたMobile FidelityのアナログLPを再生するディヴァインの木村氏




ソニー・ロリンズのオリジナル盤を披露する土方氏


参加者も評論家も主催者も皆が楽しんだ充実のイベント内容


講演を終えた土方氏は「素晴らしいハイエンド・オーディオたちが座っている目の前で次から次へと聴けるなんて、他にはないイベント。僕もとても楽しんでいます」とコメント。


サウンドピット代表の坂口昌司氏も「私もオーディオが好きで、この仕事をやってきました。皆さんにも存分に楽しんでいってほしい。土方さんや、メーカーや輸入商社の方々にも拍手を」と語った。




サウンドピット代表・坂口昌司氏(左)とオーディオ評論家で今回の司会を務めた土方久明氏(右)


試聴会の後、来場者の一人からもコメントをいただいた。


「各ブースを移動して聴くのとは違って、客側は席を動かずして比較試聴できる稀有な機会。年々、土方さんの司会進行も板についてトークも上手。


roonによるストリーミング再生はもとより、今年は同一のターンテーブルでのアーム対決、カートリッジ対決もあって、アナログリラックスEX2000とフェーズメーションPP5000、マイソニックラボでの三つ巴対決は、出音も三者三様で面白かったです。dCSのストリーマーDACのプレゼンテーションにはただただ驚くばかりでした」


新幹線を使ってやってきている来場者もいたほど、名物試聴会となっているサウンドピット創業祭。機器の入れ替えも企業間を超えて協力し合っている様子もアットホームだった。

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