『続・太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』#5 - 8thアルバム『Biblion』発売!DEZOLVEインタビュー
『続・太鼓判ハイレゾ音源はこれだ!』第5回
DEZOLVE インタビュー
〜音の洪水のオーディオ再現にハイレゾで挑戦する!
DEZOLVE(ディゾルブ)というインストゥルメンタルバンドをご存知だろうか?DEZOLVEの音楽は未聴でも、そのメンバーは超売れっ子ミュージシャンばかり。彼らの奏でるサウンドには、他のアーティストやゲーム音楽など、どこかで触れたことがあるかもしれません。
この度新作『Biblion』を発売したDEZOLVEの皆さんに、ライブのリハーサル・スタジオでインタビューしてきました。私のDEZOLVEの音楽への事前認識は、“若手の凄腕ミュージシャン達による超絶技巧フュージョン”というもの。それは決して間違いではなかったのですが、インタビューで『Biblion』の制作過程を伺っていくと、単に楽器演奏の超上手い人達という認識だけでは少々ピント外れだったと痛感したのでした。
例えるなら、野球マンガの世界にしか存在しなかった二刀流スーパースターが現実化したように、DEZOLVEのメンバーは演奏能力に長けているのに加えて、何刀流もの音楽的な芸術能力を広く高い次元で有する音楽クリエイター集団だったのです。
自身が演奏する楽器だけでなく他の演奏パートまでも熟知し、プロデュースから作曲や編曲、レコーディング、ミックスなど、音楽の創造作業を涼しい顔でこなしていく。しかも従来のような天才が一人で率いるワンマンバンドではなく、その才能を持つのが4人全員であるということ。いやはや、この4人をひとつの時代に集約させてバンドを組ませるとは、音楽の神様も粋なシナリオに用意したものです。
DEZOLVEのレコーディングでは、100前後の録音トラック数を使用するとのこと。デジタル録音の進化により100トラックを超えるレコーディング機材が実現したとき、「誰がそんな数を使うんだよ」「何回、歌い直しさせて編集する気なの?」と嘲笑したものです。その100トラックオーバーを実際に必要とし、活かし切る音楽創造が行われている時代がやってきている。いや、時代というよりも、DEZOLVE独自の特長と言うべきでしょうか。
ハイスピードといっても、曲のテンポが早い、演奏の手数が多いという意味だけではありません。音楽の振動数が早いというか、再生システムだけでなく聴く人のCPUも最高速の処理速度が要求されるといったようなスピード感です。
DEZOLVEの音を、いわゆるオーディオを趣味としている人のシステム、特にスピーカーで果たして上手く鳴らせるかどうか。オーディオ全盛期には存在しなかった音楽です。このようなハイスピードかつ洪水のような音を再生することを、開発時に想定できていなかったのは仕方ありません。
本作『Biblion』のマスタリングは、キングレコードの名エンジニア辻 裕行氏。私は辻氏のマスタリングを大いに信頼しています。そうなると、本作を再現できるかどうかは、音源の音質面での良し悪しを言い訳にはできず、オーディオ・システムとそのセッティングの腕次第ということになりそうです。『Biblion』のオーディオ再現に挑戦する音源規格には、やはり音の洪水の全てを網羅するハイレゾが相応しいでしょう。
DEZOLVEがインストゥルメンタルバンドなのは、J-FUSIONと呼ばれるジャンルが進化しただけでなく、世界を見据えた音楽を創造するためなのかもしれません。自信をもって輸出できるMade in JAPANの新しい音楽であり、広く世界の音楽好き、オーディオ好きに驚いてほしい作品です。
興奮しすぎて前置きが長くなりました。それではDEZOLVEの皆さんのインタビューをお楽しみください!
練りに練ったデモ音源による綿密な音の設計図
─── 曲作りの制作過程について教えて下さい。
山本真央樹(drums):アルバムのプロデュースは自分たちでやっています。曲作りは、曲数を先に決めて始めている感じ。誰が何曲を分担すると最初に決めたわけではなく、曲を書き終えた順です。アレンジは作曲者の各々で行い、デモ音源を渡してから譜面ですね。
北川翔也(guitar):全員そうです。
山本(d):打ち込み段階である程度どころじゃなくて、完全に仕上がってデモが送られてきて、それを僕らは演奏するだけっていう状態です。
兼子拓真(bass):多分、このリリースされている音源の、それぞれの楽器がそのままデモ音源になっているぐらいです。なので、今リリースされている姿と変わらない状態の音をみんなに送って、あとそれぞれが生楽器に差し替えていく感じです。
山本(d):レコーディング自体は、パーツごとに録っていくか一発録りにするどうかは曲によります。みんなで録った曲もあれば、各々が録音してくる曲もあります。M10 「Groovity」とM12「When the Light Returns」が、せーので録った曲ですので、他の曲と聴き比べていただけると面白いかなと思います。
─── M1「Stray Bullet」ではウインドシンセ的なメロディーが印象的ですが、意識されてのプレイでしょうか?
友田ジュン(Keyboard):あれは手弾きでの演奏ですが、ウインドシンセというよりは自分の思うシンセ・リードの音でのプレイです。
シンセ音色の選択というのは、曲や内容によります。例えばざっくりシンセ・リードみたいなイメージのアレンジ指示であれば、僕がそれぞれの人からもらったデモを元に、こんな感じで僕が演るかなと考えて作る場合もあります。ですが、ほとんどの場合、みんながアレンジの段階で明確にイメージが決まっているので、こういう音色でやってほしいっていうのに準じて演奏するという感じです。
北川(g):ギターの音色に関してもキーボードと同じなんですけど、各々のデモで歪みの強さとかクリーン・トーンかというのは、ある程度伝わるようなデモをみんなが作ってくるので。例えば、「このパートは歪みかクリーンかわかんないけど」みたいなデモは絶対に無いです。歪みの量や種類は、もちろんこちらで決めるけれど、大枠の音色はそれぞれの作曲者がギターに関してもイメージしています。
山本(d):ギターも打ち込みで再現したデモを作ります。
北川(g):アームのギュイーンっていう音まで入ってますよ(笑)
兼子(b):ベースに関しても、スラップなのか指弾きなのか、フレットレスで演奏するのかといった選択は、デモの段階でほぼ決まっています。それを受け取って自分的に、ベーシスト的に返すとするなら、こうだよっていうことを提示して、デモを更に良くしていこうというイメージです。
デモの音を再現するのはもちろんだけれど、生楽器に差し替わることによってブーストしないと意味がないと思っているので、デモを超える結果を出していきたいです。
─── ミックスダウンについて教えてください。
山本(d):ミックスは、僕らの3枚目の『PORTRAY』というアルバムから一緒にやってくださっている渡辺久之さんです。もう本当に信頼し合っている仲なので、ミックスに関しての要望はボリュームバランスの調整ぐらいでした。この10年ぐらいで、いろいろと僕らの好きな傾向みたいなのは多分分かってくださっているので。
僕らはミックス・チェックの日が1日あるんですけど、その日に各曲の作曲者が「この音を、もうちょっと聴こえさせたい」といったくらいのリクエストで終わります。コンプの量とかリバーブの量などは各々のアレンジャーがもう決めているので、エフェクト系の音作りは作曲者側で事前に作り込んじゃうことが多いです。
最終のミックス・チェックでは、極端に僕らのイメージと違うと、「ここのイコライジングをこうしてください」とか、そういうことは言いますけど、渡辺さんがもともと素敵な音を作ってくださっているので一発OKという感じです。
─── マスタリングについて教えてください。
山本(d):マスタリングはキングレコードのスタジオで、いつもやってくださっている辻 裕行さんです。辻さんへのリクエストは、音を大きくしてほしいといったことは一切なく、もう完全にお任せです。ミックスダウンした音と極端に変わらなければ、あとは各曲の音圧を上手く揃えて聴きやすくしていただけたらというくらいです。
ミックスダウンは全員で立ち合っていますが、マスタリングは前作くらいから立ち会わなくなりました。ミックス・エンジニアさんの渡辺さんにマスタリング立ち会いしていただくことが多いです。曲の中のバランスは僕らが見て、アルバムトータルのバランスはミックス・エンジニアさんとマスタリング・エンジニアさんにお任せするという感じです
DEZOLVEの考える音圧とは?
─── 皆さんの音量感、音圧感についての考えを教えてください。
友田(k):僕は、結局は聴く人が心地よいボリュームで聴いてもらえればと思っちゃいますね。他の曲と並べた時に音量感の違いはあるでしょうけど、人によって心地よいボリューム感って多分違うと思うんです。全体の音圧感が綺麗に整っていればOKで、「なんか行けるとこまで音圧突っ込んだれ〜」とは、別にそこまで思っていません。
山本(d):サブスクの時代なので、色々なインスト・ミックスで音楽をシャッフルして聴くことも多いと思います。他の楽曲を聴いていたボリュームから極端に下がったり、極端に上がったりしなければ大丈夫です。
むちゃくちゃ音圧を上げたいっていう気持ちは、そんなになくて。僕らの音楽は情報量が多いので、基本的に音を潰してしまうと立体感が削れてしまいます。ある程度の空間がないと、僕らの音楽に奥行きが見えなくなっちゃうので。だからその中間ぐらいの音圧ですかね。ちっちゃいと流石に迫力が出ないので、エンジニアさんには中間ぐらいを狙っていただけたら嬉しいなと思っています。
兼子(b):以下同文なんですが(笑)。一番は音楽のジャンルによると思うんです。めちゃめちゃ音圧とか、パワーがガツンとあってほしい音楽もあるでしょうし。でもDEZOLVEは情報量が多いけど、その全部が聴こえたままパワーはやっぱり維持してほしいから。いいバランスというか、パワーはあるんだけど全部聴こえて立体的みたいな。それがDEZOLVEの良さだと思うので、その音楽が、ジャンルが映える音圧だったらいいんじゃないかなとは思います。
北川(g):DEZOLVEは4人が生演奏した楽器以外の音が凄く含まれている曲も多く、やっぱり情報量も多いから。その情報量が多いっていうのも、ただ多いじゃなくて、上手くアレンジされた上での情報量。レコーディングやミックスといった話になる前の、その曲のアレンジの時点でしっかりと整理されていないと、ただ音圧を上げても変に潰れて聴こえにくくなるだけだから。
音圧は上げたいなとは思うんですけど、音圧を上げる前にしっかりとしたアレンジをして頑張っておかないと。音圧が強くなっても色々な音が損なわれないような音楽制作をしたいです。それらをクリアした上でなら、音圧を強くしたいと思っちゃうかもしれません。
なぜDEZOLVEの音楽をハイレゾで聴いてほしいのか?
─── ハイレゾでDEZOLVEの音楽を聴く皆さまへのメッセージをぜひ。
山本(d):DEZOLVEの音楽には色々な音色が含まれているので、解像度が高ければ高いほど、もしかしたら僕らも知らないくらいのDEZOLVEがあるのかもしれません。こんな音が聴こえるんだっていう、ハイレゾで初体験できるDEZOLVEの今まで聴こえなかった新しい音が、多分裏側にめちゃくちゃあると思うんです。そういう音まで聴いてもらえるという点では、僕らの音楽はハイレゾで聴いた方が、テーマパークみたいに楽しくいっぱい聴けるかなと思います。
やっぱり僕らは演奏だけじゃなく、いろんな楽器ありきの作品作りをしています。そういう音色の全てを聴いてもらうには、おそらく音質は良ければ良いほど僕らを知ってもらうことができ、楽しんでいただける良いきっかけになるんじゃないかなと思います。
友田(k):単純に嬉しいです。これだけサブスクで手軽に音楽を聴ける時代に、ハイレゾでより良い音でDEZOLVEの音楽を聴きたいなって思ってもらえることって、シンプルに僕らのバンドを気に入ってくれているってことじゃないですか。それはもう、僕らにとってすごく嬉しいことなので、ぜひハイレゾで聴いてくださいっていう気持ちです。
山本(d):DEZOLVEの音楽は、インストバンドなのにシーケンスの音がたくさん入っているという、世界的にも少ないというか異例なサウンドです。僕らの演奏はシーケンスと一体化しているので、ハイレゾの良い音で聴くことによって、音の洪水の流れに上手く乗りながら僕らの音楽の中に入っていく。そこは美術館のようでもあり、こんな色まで見えるんだというような音楽を体験していただけると思うんです。
ドラム、ギター、ベース、ピアノという4つの楽器の枠を超え、新しい発見が聴けば聴くほど、どんどん出てくる。そういうところを含め、もちろん音楽としても楽しんでもらいたい。そこに多分、DEZOLVEをハイレゾで聴いていただく意味があるんじゃないかなと思います。
北川、友田、兼子:全部言われちゃった(笑)。このコメント、4人の総意ということでお願いします。
筆者プロフィール
西野正和(にしの まさかず)
オーディオ・メーカー株式会社レクスト代表。YouTubeの “レクスト/REQST” チャンネルでは、オーディオセミナーやライブ比較試聴イベントを配信中。3冊のオーディオ関連書籍『ミュージシャンも納得!リスニングオーディオ攻略本』、『音の名匠が愛する とっておきの名盤たち』、『すぐできる!新・最高音質セッティング術』(リットーミュージック刊)の著者。世界トップ・ベーシストたちのケーブルを手掛けるなど、オーディオだけでなく音楽制作現場にも深く関わり、制作側と再生側の両面より最高の音楽再現を追及する。



































