有機的かつ優雅なソノリティに酔う。TADの“インテグレーテッドアンプ”が引き出す高度なオーディオ的愉悦
日本が誇るハイエンドブランドとして、着実に歩みを進めるTAD(テクニカル オーディオ デバイセス ラボラトリーズ)。同社がブランドとして初の“インテグレーテッドアンプ”「A-1000」を発売したことは、世界中のハイエンドファンに驚きを持って迎え入れられ、「オーディオ銘機賞2026」にても特別大賞を受賞した。
一体型だからこそ追求できるサウンドの真髄はどこにあるのか? ホワイトの仕上げも美しいフロア型スピーカー「TAD-E1AX」と組み合わせ、純正TADだからこそ表出しうる極上の音楽世界を、小原由夫氏が体験する。
音の入口から出口までTADで揃えられる
TAD(テクニカル・オーディオ・デバイセズ)初のインテグレーテッドアンプ「TAD-A1000」が話題を集めている。スピーカーブランドとして広く認知されている同社だが(確かに生い立ちはスピーカーユニットだ)、近年はエレクトロニクス・コンポーネントにも力を入れており、音の入口から出口までを同一ブランドで揃えることができる。
TAD-A1000で興味深いのは、製品の企画開発の要請が海外市場からだったということ。住宅環境に制限の多い日本でこそインテグレーテッドアンプのニーズは高く、広いスペースが確保しやすい海外ではセパレート志向が強いのではと想像しがちだが、海外の方がよりコンビニエントな形体を好む傾向が強いのだろうか。
いずれにせよTADは一体型のメリットに、自社のテクノロジーを集約させて本機を完成させたのである。
具体的なそのメソッドは、電流帰還型アンプに抵抗ラダー型の電子ボリュームを組み合わせ、クラスD方式のアナログパワーステージを駆動するというもので、短縮化できるシグナルパスを最大限活用したコンパクトさの一方で、充実したオーディオスペックを目指した。
同社のエレクトロニクス・コンポーネントにおけるフィロソフィーは、対称性とフルバランス伝送、位相管理と振動制御といったところだが、A1000の回路基板は“ブックマッチ”といえる対称性を有し、電源部から含めた正負・左右対称構成である。
またLch/Rchのアース共通部分は1ポイントとし、それぞれ完全に独立したBTL接続アンプという形を採る。リング型のトロイダルトランスは、曲線断面を持つコアによるドーナツ型で、なおかつ巻き線が直出し構造。角がないことで、コアと巻き線の密着性が良くなり、エネルギーの変換ロスを低減できるうえ、リーケージと振動の減少も期待できる。
本体は上下2階建て構造で、シンメトリーレイアウトがデザイン上の特徴。さらには前後も含めた4BOXチャンバー構造を採っている。上層前側がコントロール部で、後側がプリ部。下層の前部が電源回路、後側がパワー部という具合だ。
TADの基幹スピーカーユニットCSTドライバーを採用
今回組み合わせたスピーカーは、昨年秋に発表されたばかりの3ウェイ・フロア型「TAD-E1AX」。見惚れてしまうような光沢白色が美しいグロッシーホワイトを用意した。
TAD独自の同軸型によるCSTドライバーは、既発モデル「TAD-ME1TX」に採用された9cm口径の蒸着ベリリウムトゥイーターとマグネシウム・ミッドレンジの組み合わせ。16cmウーファーはアラミド繊維を採用したサンドイッチ構造のMACC振動板である。
キャビネットは内部定在波を低減するオリジナル技術「A-FAST」を内部に仕込んだもので、キャビネット前後に音響エネルギーを放射する「Bi-Directional ADPバスレフポート」を底面に備える。ポート支持部はアルミダイキャスト製で、さらに10mm厚の鋼板製ベースプレートが敷かれている。
明瞭な音像定位と三次元的なステレオイメージの描写を融合
このTADのペアは開発課程でおそらく相まみえたであろうし、純正組み合わせだけにコンビネーションが悪かろうはずはない。一方がもう一方の持味や魅力を巧みに引き出すかのような相乗効果が発揮されているように思う。
E1AXの克明かつ明瞭な音像定位は、CSTドライバーの持味が生きている印象。その上で3次元的なステレオイメージの描写に長けているのは、A1000のシグナルパスの短さに伴う高S/Nがもたらしているのは確実とみた。音像のリアリティと音場のクリアネスがたいへん素晴らしいのである。
今回の試聴では、Qobuzでのストリーミング再生を行った。サマラ・ジョイのアルバム「ポートレイト」からの「ラヴバードの蘇生」では、冒頭のアカペラの歌唱がスクッと屹立した音像で提示され、スタジオのナチュラルな(微かな)アンビエントが実に美しく感じられる。アンサンブルではフロント4管の横一列の定位が微動だにせず、リズムセクションを含めた音場のレイヤー構造がビジュアル的に見えるようだ。
イギリスの先鋭的なピアノトリオGo Go Penguinのニューアルバム『Necessary Fictions』から「Umbla」を聴くと、反復するビートの実にパワフルなこと。16cmダブルウーファーがまったく怯むことなくエネルギーを繰り出してくる。その重々しいリズムはリアルな実体感を伴っており、A1000の駆動力の高さを感じさせる。エフェクトが施されたピアノの打鍵やスネアドラムの音色には、トランジェントのよさが表れているかのようだ
バイバ・スクリデの独奏ヴァイオリンと、アンドリス・ネルソンス指揮/ボストン響によるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第一番では、オーケストラが奏でる雄大なスケール感と重厚なハーモニーが堪能できた。
コントラバスのボウイング等にもしっかりと追従し、なおかつサウンドステージの立体感がひじょうに豊か。独奏ヴゥイオリンのメロディーは欝屈したムードが色濃いが、咽び泣くような節回しや消え入るようなデリカシーのニュアンスを実にきめ細かく精密に再現したのには驚かされた。
A1000の直線的なデザインから受けるハイテックな印象や、その光沢ホワイト仕上げがエレガントだけれども既存の多くのスピーカーとは異なるE1AXの佇まいから、このペアがどんな音を奏でてくれるのか事前に想像がつかなかったのだが、予想外に有機的かつ豊かなソノリティを聴かせてくれた。このTADのニューカマーを専門店の店頭で見掛けたなら、是非とも間近でその姿と音に触れてほしい。
(提供:テクニカル オーディオ デバイセス ラボラトリーズ)























