PR 公開日 2025/11/25 06:30

次世代Bluetooth技術「XPAN」の実力を高級オーディオで聴く!クアルコム&PHILE WEB特別イベントレポート

クアルコム本国から担当者も来日

イヤホン/ヘッドホンから煩わしいコードを取り払いつつ、ノイズキャンセリング(ANC)や音声通話といった便利な機能も提供するBluetoothオーディオ。音質や接続安定性(音途切れの無さ)といった点ではまだ有線接続が勝るとはいえ、毎年のように技術革新が進み、有線オーディオとの差を着々と縮めている。

その2025年における最新のトピックが、Qualcomm Technologies, Inc.(以下、クアルコム)によって開発された「Snapdragon Sound TM Technology Suite」、および「Qualcomm (R) Expanded Personal Area Network Technology(XPAN)」だ。

特にQualcomm XPANは、「Wi-Fiを組み合わせる」という今までのBluetoothオーディオの枠組みに収まらない新技術。この最新技術がどのようなものかは、弊誌でも幾度か紹介しており、今年に入って対応製品も国内で発売された。しかしその種類はまだまだ少なく、実際に購入したり店頭で試すことができる機会も限られているのが現状だ。

Qualcomm XPANがどれほどのポテンシャルを秘めた、将来性のある技術なのか。それをいち早く知っていただき、そして可能性を肌で感じてもらうべく、去る9月28日にファイルウェブとクアルコム合同で体験イベントを開催。多くの方々にご参加いただいた。

イベントの様子。今回のイベントは、若い方々に多くご参加いただいた

本イベントでは、Qualcomm Technologies International, Ltd.,のプロダクト・マネージメント・ディレクターのNigel Burgess(ナイジェル・バージェス)氏、プロダクト・マネージャーのCarrie Zhang(キャリー・チャン)氏が来日し、最先端の技術についてプレゼンを行うと同時に、Qualcomm XPANと従来のBluetoothの音質がどれほど違うのか、数百万円クラスのオーディオ機器を用いた聴き比べも実施した。技術解説にはクアルコムジャパンの大島勉氏も加わった。本稿ではその模様をレポートしよう。


来日したQualcomm Technologies International, Ltd., ナイジェル・バージェス氏(左)とキャリー・チャン氏(中央)。クアルコムジャパンの大島勉氏(右)とともに最新技術の解説を行った

「Snapdragon Sound」、そして「Qualcomm XPAN」とは? クアルコム本国担当者が語る

Qualcomm XPANとは、 “Expanded Personal Area Network Technology(拡張パーソナルエリアネットワーク技術)” の略。端的にいえば、「BluetoothをベースにWi-Fiを組み合わせたオーディオ伝送技術」で、クアルコムが開発した “超省電力” なWi-Fi通信の上に、Bluetoothオーディオ信号を走らせる。


Qualcomm XPANについて解説するナイジェル・バージェス氏

キャリー・チャン氏も技術の詳細について説明を行った

ナイジェル・バージェス氏らが語るところによれば、BluetoothとWi-Fiという異なる規格のワイヤレス通信を組み合わせる利点は、やはりWi-Fiの広帯域を利用できることだという。Bluetoothによる通信に比べ、Wi-Fiの周波数帯域は圧倒的に広い。Qualcomm XPANで使用する省電力Wi-Fi技術も、一般的なWi-Fiを土台にしているため、2.4GHz、5GHz、そして6GHz帯も活用できるよう開発されている。

この帯域幅を活かすことで、96kHz/24bitのハイレゾ音声信号をロスレスで伝送することができ、ロバストネス(途切れにくさ)も従来のBluetoothオーディオの比ではない。現在は96kHz/24bitまでだが、技術的には192kHz/24bitまでのロスレス伝送も実現可能で、さらに将来的にはサラウンド音声も伝送できるよう研究を進めているそうだ。

それでいて、Qualcomm XPANで使われるWi-Fiは小さな電力で動作するように設計されており、バッテリー持ちがいままでよりも極端に短くなる、という心配もないという。

Qualcomm XPANの利点はこれだけではない。プレーヤーとイヤホンを直接繋ぐP2P接続だけでなく、自宅のWi-Fiルーターなどで中継するアクセスポイント接続にも対応可能することができる。

この機能が普及すれば、イヤホンで音楽を聴きながらプレーヤーから遠く離れたり、プレーヤーとイヤホン間の通信状況が悪くなった際、P2P接続からホームネットワーク接続へシームレスに切り替わり、途切れることなく音質を楽しみつづけられるというわけだ。

これからの本格普及が楽しみなQualcomm XPANだが、本技術の基盤となっているのが「Snapdragon Sound」だ。

「Snapdragon」に代表される高性能なプロセッサー、端末上で動くAI、プレミアム・オーディオ技術、超低消費電力のワイヤレス通信といったクアルコムの技術を結集したワイヤレスオーディオ・プラットフォームで、音質や途切れにくさ、低遅延を高い水準で両立する。Qualcomm XPANも、このSnapdragon Soundに含まれる技術という位置づけだ。

Qualcomm XPANの基盤でもある、クアルコムのワイヤレスオーディオプラットフォーム「Snapdragon Sound」

そのSnapdragon Soundのトピックは、やはり「Qualcomm (R) aptX TM Lossless」コーデックだろう。周囲の電波状況などに応じて、最大96kHz/24bitのハイレゾ相当の音質重視設定から途切れにくさ優先設定まで自動的に調整する「Qualcomm (R) aptX TM Adaptive」コーデックを拡張したもので、CDと同等の44.1kHz/16bitというオーディオデータをほぼそのまま伝送することが可能となった。

このQualcomm (R) aptX TM Losslessに対応するイヤホンやBluetoothアンプはいよいよ市場で数を増してきており、USB接続のBluetoothトランスミッター(USBドングル)も複数のメーカーから登場している。いま最も体験しやすいクアルコムのオーディオ技術だといえるだろう。

測定でも、聴感でも違いが出る!Qualcomm XPAN聴き比べパート

Qualcomm XPANの概要が述べられたところで、本イベントのメインである比較試聴パートに移った。

Qualcomm XPANの試聴システムに用いられたのは、本邦初公開だというQualcomm XPAN受信対応の評価ボード。スマートフォンからQualcomm XPANや従来のBluetooth(Qualcomm (R) aptX TM Lossless/SBCコーデック)で受信したオーディオ信号を、デジタル端子から出力することができるものだ。もともと完全ワイヤレスイヤホンを想定して作られているためL/Rchそれぞれ1枚ずつに分かれており、2枚を結合することでステレオ再生に対応させている。

一般ユーザーの目に初めて触れたQualcomm XPANの評価ボード(基板)。完全ワイヤレスイヤホン向けのため、左右で1枚ずつに分かれている
受信から出力までの流れ

デジタル出力されたオーディオ信号は、オプションのDAC基板を装着したアキュフェーズのプリメインアンプ「E-800S」(約120万円)に入力し、そしてB&Wのスピーカー「803 D3」(ペア約270万)へと出力される。総額約400万円相当のハイエンドコンポーネントを組み合わせる、贅沢な構成を用意した。

アキュフェーズのプリメインアンプ「E-800S」とB&W「803 D3」を中心とする高級コンポーネントを用意した

試聴の聴きどころをガイドするのは、ワイヤレスオーディオの知見も豊富な評論家の鴻池賢三氏。またシステムや比較のポイントについて、シーイヤー(株)の村山好孝氏からも解説が行われた。

同社はクアルコムと10年以上にわたって協力関係にあり、2019年には「エクステンションパートナー」に認定。Snapdragon Soundの基準にもとづく音響計測や、他社への技術コンサルティングも請け負っているなど、クアルコムの技術に造詣の深い企業だ。


鴻池氏が試聴パートのガイド役を務めた 
シーイヤー 村山好孝氏
シーイヤーとはクアルコムとも密接に協力する、Snapdragon Soundのエキスパート

村山氏が解説のためスライドに映したのは、オーディオや通信の測定試験で用いられるマルチトーン信号を、Qualcomm XPAN(96kHz/24bit)/Qualcomm (R) aptX TM Lossless(44.1kHz/16bit)/SBCのそれぞれで送受信した測定結果。各コーデックで伝送されたオーディオ信号を再生すると、どのような周波数スペクトルが得られるのかをグラフに表したものだ。

SBC/Qualcomm (R) aptX TM Lossless/Qualcomm XPANで伝送したオーディオ波形を比べると、顕著な違いがあらわになる

大元のマルチトーン信号の波形は、上下に規則正しく振れる整った見た目をしているが、SBCで伝送すると大きく形を変える。データ量を抑えつつも人間の耳に大きな違和感なく聴こえるよう配慮しているのだが、ダイナミックレンジは25dB止まり。オーディオの細かな表現を描写するには、少々力不足だと言える。

これに比べて、Qualcomm (R) aptX TM Losslessの波形はオリジナルに近づき、ダイナミックレンジも75dBとSBCより細かな表現を伝えられるようになっている。

そして、オリジナルに最も近い波形が再現できたのがQualcomm XPAN。帯域が一気に広がり、ダイナミックレンジは135dBと人間の聴力の限界以上に拡張されていることが、視覚的に示された。

Qualcomm XPAN聴き比べシステム セットアップ中のようす

このように測定上では、Qualcomm XPANや各Bluetoothコーデックごとの音に明確な差があることは観測できた。では、実際のオーディオ再生ではどんな違いとして現れるのだろうか。

その聴き分け方、違いに気付くポイントして鴻池氏が挙げたのが「ノイズの少なさ」だ。

SBCで伝送したノイズの多い音楽は、音楽の背景――余韻や残響が響くような演奏の裏側の空間で、どこかセミの鳴き声にも似たザワザワ、ザラザラとした耳障りな感覚が残るという。

そうした違和感は、Qualcomm (R) aptX TM Lossless、Qualcomm XPANとノイズの少ない伝送方式になるほど薄れていき、同時に女性ボーカルの高域の伸びやかさ、空間の広がり、ヌケ感といった “音の良さ” として現れて来るのだそうだ。

そういったヒントを踏まえたうえで比較試聴がスタート。クアルコムと鴻池氏がセレクトした2つの楽曲で、SBC、Qualcomm (R) aptX TM Lossless、そしてQualcomm XPANの順番に切り替えながら再生が行われた。

1曲めの男性シンガーソングライターの楽曲では、豊かな低音からくりだされるハミングが、最新コーデックに切り替わっていくほどに膨らみ豊かに、響きも心地よさを増していくのがハイライト。2曲目の女性ボーカルでは、ノイズの少ない最新コーデックになるにつれて歌声が伸びよく、透明感を増していくことが分かりやすいと鴻池氏は解説した。

Qualcomm XPAN & Snapdragon Soundを身近に試せる、最新製品を展示

イベント会場には、Qualcomm XPANそしてSnapdragon Soundをパーソナルに体験してもらうべく、すでに市場で販売されている製品の体験ブースも設置。高級オーディオでの試聴後、個別に体験の時間が設けられ、賑わった。

プレゼン&試聴会終了後は、Qualcomm XPAN&Snapdragon Sound体験ブースが賑わった

まずQualcomm XPAN対応製品としては、初の対応製品として国内市場に投入されたシャオミのスマートフォン「Xiaomi 15 Ultra」、および完全ワイヤレスイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi」。

現時点でQualcomm XPANを実体験できる数少ない組み合わせである以外にも、設定画面から切り替え操作を行うことで、Qualcomm (R) aptX TM LosslessやBluetooth LE Audioといった最先端のBluetoothオーディオをひと通り聴き比べることもできる。

現時点でQualcomm XPANが使用できる数少ない製品、シャオミの「Xiaomi 15 Ultra」と「Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi」

Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiは、ダイナミックドライバー、平面ドライバー、圧電セラミックトゥイーターという3種類のドライバーユニットを同軸上に配置し、2基のアンプで駆動するドライバー構成もユニーク。

このほかANC機能や、オーディオブランドであるハーマンがチューニングした音質モード、頭の向きに応じて音の聴こえが変わるヘッドトラッキングなど、機能性も充実している。

Snapdragon Soundの体験機器は、まずプレーヤーとしてシャープのAndroidスマートフォン「AQUOS R10」「AQUOS R9」を用意。

どちらもプロセッサーにクアルコムの「Snapdragon 7+ Gen 3 Mobile Platform」を搭載し、Qualcomm (R) aptX TM Adaptiveによる最大96kHz/24bit ハイレゾ相当の高品位なBluetoothオーディオが利用できる。

R10
AQUOS R10
R9
AQUOS R9

イヤホン/ヘッドホンとしては、まずオーディオテクニカの完全ワイヤレスイヤホン「ATH-TWX9 MKII」。

Qualcomm (R) aptX TM Adaptiveによる最大96kHz/24bitのハイレゾ相当の情報量を、高音域から中低域まで圧倒的な高感度で再生できるという新開発の「Pure Motion Driver」でくまなく描写する最上位モデルだ。

Snapdragon Sound対応のオーディオテクニカ「ATH-TWX9 MKII」。シャオミやAQUOSスマートフォンとの組み合わせで最上位モデルの音質を耐汗

加えてボーズから、ワイヤレスヘッドホン「QuietComfort Ultra Headphones」と、完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Ultra Earbuds(第2世代)」「Ultra Open Earbuds」の3機種を用意。

QuietComfort Ultra Headphones/QuietComfort Ultra Earbudsについては、ボーズの代名詞とでも言うべきANC機能で周囲の物音を最小限に抑え、Qualcomm (R) aptX TM Adativeの情報量に深く没入でき、またUltra Open Earbudsは耳をふさがないイヤーカフ型デザインで音楽を日常に溶け込ませるように楽しめる。

「QuietComfort Ultra Headphones」

さらに、シーイヤーが開発したSnapdragon Sound対応のBluetoothスピーカー「Cear Pave(パヴェ)CP-4000」が展示された。

1台1台はコンパクトながら、立体音響技術「Cear Field」や、複数台をリンクさせてサラウンド再生できる「CearLINK」といったシーイヤー独自技術を搭載しており、いろいろなデモンストレーションで参加者を楽しませた。

シーイヤー「Pave」は、Snapdragon Soundに加えて独自技術も満載のキューブ型Bluetoothスピーカー

クアルコムが技術で目指す、「より豊かなオーディオライフ」

最後に、本イベントのため来日されたナイジェル・バージェス氏、キャリー・チャン氏のお二人から、Qualcomm XPANをはじめとする独自技術によってクアルコムがどのようなオーディオ体験をユーザーに届けたいと考えているのか、オーディオファンに向けたメッセージをいただいた。

実はオーディオブランドに務めていた時期もあるというお二人。より高音質で便利に、楽しく音楽を聴ける新体験を届けたいという意欲にあふれていた。ぜひ今後の技術革新に期待したい。

 

ナイジェル・バージェス氏

「これまで高音質な音楽を楽しみたければ、スピーカーの前に座ったり、机についてイヤホンを装着する必要がありましたが、Qualcomm XPANをはじめクアルコムの技術が普及すれば、必ずしもそうする必要はなくなります。家事をしながらでも、リビングでくつろぎながらでも、クオリティの高い音質を体験していただけるようになるでしょう。

またクアルコムが次に考えているのは、スマートフォンなどに搭載されているAIエージェントと、音楽ストリーミングサービスをより深く連携させることです。例えばストリーミングサービスにはロッシー/ロスレスさまざまな音源が入り乱れていますが、AIによって聴きたいコンテンツを素早く的確に探し出せるようにするのです。そのような一層豊かな音楽体験をお届けできるのはもう間もなくだと思いますので、ぜひ期待してください」

キャリー・チャン氏

「クアルコムは、オーディオ用チップセットや新技術をユーザーにお届けできるのはもちろん、オーディオに関わる業界全体への貢献度、影響力も強みだと考えています。

最近の例としては、Bluetooth技術の策定/普及を行っているBluetooth SIGでは『HDT(高データスループット)』という帯域拡張に注力していますが、そこにクアルコムも技術支援を行っているのです。

このように、1メーカー/1企業としてだけではなく、業界全体の進歩に貢献するかたちで、より良いオーディオ体験をお届けしたいと思います」

(協力:クアルコム)

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