公開日 2019/06/17 06:00

マニアちゃんは語りたい!オカルトじゃない、イヤホンの力を引き出す『イヤーピース座談会』

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域:第230回

マニアたちは「AZLA事件」を振り返りたい

高橋: ここまでに挙がったイヤーピースは、イヤホン自体を作っているメーカーが自社イヤホンのために開発したものを単体売りもしている、というものでしたね。対して完全なサードパーティの製品としては……

成藤: シリコンなら「SpinFit」、フォームなら「コンプライ」ですな。

高橋: サードパーティ製品は多くのメーカーの、また多くのイヤホンに対応する必要があるので、製品展開が豊富ですね。特にイヤホン側のイヤーピース装着部、「ノズル」や「ステム」と呼ばれる部分の太さに合わせて装着部の軸の径のバリエーションは膨大です……ここは購入時に注意が必要ですね。

イヤホンのノズル部も様々。Shure(右)は結構細い

だいせんせい: そこはe☆イヤホンのリアル店舗ならスタッフに聞いてもらえればいいですし、何ならサイズも音も実物で試してもらえますからぜひ!

高橋: そしてここまでに紹介した代表的なメーカーに加えて、近年はマニアックなメーカー、新しいメーカーがどんどん増えている印象です。

だいせんせい: 新しい製品としてはAZLAの「SednaEarfit」は大きなインパクトがありましたね。

高橋: AZLAのイヤホン、初代「AZLA」は、ちゃんと耳にフィットすれば素晴らしい音を出してくれたんですけど、耳にフィットする、しないの相性が大きかった。それが「AZLA MK2」になったらその点が大幅に改善されていて、フィットする人がドンと増えた。

マニアたちは「AZLA事件」を忘れない

だいせんせい: それで「AZLA」の音の評判もぐっと高まりましたよね。その最大の要因と思われるのが、MK2に付属された独自開発新型イヤピ「SednaEarfit」だったと。

高橋: 図らずも「装着感も音もイヤピ次第でこんなに変わる!」を盛大に実証してくれた出来事でした。

だいせんせい: そのイヤーピースが単体でも売り出された、と。でもこのSednaEarfitって、単体で見ると合う合わないの相性は出やすいイヤピだと思うんですよ。だからこそ「AZLA」との組み合わせのように、ぴったり噛み合ったときには素晴らしい結果になるんです。対して追加された「SednaEarfit Light」は、ある程度万能型というか、どんなタイプのイヤホンと組み合わせても癖が出にくい。

成藤: Sednaは軸が長くて、傘の厚みもあってしっかりしているので、ハウジングの形や大きさにあまり影響されず、このイヤピ自体が耳をがっしりとグリップしてくれる。だから、ノズルが短くて太くてハウジングが大きい、まさにAZLAみたいなイヤホンの装着感を大きく改善してくれるのですな。

高橋: Sednaと言えば、「完全ワイヤレス向け」を謳った新製品も予告されていますね。実際、現在のイヤピの世界では「完全ワイヤレスのイヤピどうする?」問題は見落とせないところ……

Sednaの完全ワイヤレスイヤホン向け最新イヤピ、こちらは現在最終調整中(写真はサンプル)とのことで、発売が待ち遠しい!

だいせんせい: 製品によってはケース側の収納スペースがかなりタイトで、イヤピの傘が少し広いだけでも入らないとか、蓋がちゃんと閉まらなくて充電が不確実になったりすることもあります……

右側は完全ワイヤレス向けイヤピの一例「SpinFit CP350」。一般的なイヤピと比べて、明らかに低く作られている

高橋: ケース内のイヤホン収納スペースを広くすると、その分バッテリースペースなどが圧迫されるだろうから、トレードオフとして仕方ない部分はあると理解できるのですが……

成藤: そこでサードパーティから「完全ワイヤレス向けイヤーピース」というのが出始めていて、Sednaの新製品もそれ。軸を短めにして、イヤピをイヤホンに付けたときの高さが抑えてある。ケースへの収まりもよくなるし、耳にあまり深く入れない浅めの装着感も、完全ワイヤレスのトレンドに合っている!

だいせんせい: あとこのメーカーは素材として「医療用シリコン」の採用も打ち出してきましたね。イヤーピースの素材が耳に合わなくて耳の中がかゆくなるという人も実際いるようなので、肌に優しい素材という配慮は嬉しいなと。

Sednaのほか、SpinFitからも医療グレードシリコンを採用した完全ワイヤレス向けイヤーピース新モデル「CP360」が登場

マニアたちは“通好みなイヤピ”もおすすめしたい

高橋: 他に挙げておきたいイヤーピースといえば?

成藤: ZERO AUDIOはイヤホンのモデルごとに何種類かのイヤーピースを使い分けておりますな。イヤホン各モデルの音作りの要素として、イヤーピースによる音の違いも積極的に取り入れている。交換用としても活用できるポイントかと。

高橋: なるほど。同社サイトでチェックしてみると……

●シリコンイヤーピース 1:バランスト・アーマチュア・スピーカーからのクリアーな音を最も効果的に外耳内に響かせるよう設計
●シリコンイヤーピース 2:ダイナミック・ドライバーの性能を最大限に引き出す
●シリコンイヤーピース 3:ZERO BASS / ZB-01, ZB-02 専用に開発。パワフルな重低音をダイレクトに伝えます
●シリコンイヤーピース 4:超小型ドライバーが生み出すクリアーなハイレゾサウンドを鮮やかに再生


だいせんせい: 僕はFenderのイヤーピースが気に入ってるんですよ。

高橋: 素材も形も独特ですよね。

だいせんせい: 謳い文句通り「体温で柔らかくなって耳の中にソフトにフィットする」という効果を実感できますし、加えて伸縮性が高いので、少し無理矢理に広げる感じにはなりますけど、ノズルが太い他社イヤホンにも付けることができます。

Fender(前身Aurisonic)のイヤーチップ(写真のAurisonic袋入りはすでに手に入らないタイプ)

柔らかくて伸縮性が高い

高橋: Fenderのノズルは細めだけど、ShureやWestoneほどは細くなかったりして、Fenderイヤホンに他社イヤーピースを合わせるのは難しいんですよね。でもFenderイヤピは他社イヤホンに付けられる!

だいせんせい: このFenderと、傘の膨らみの位置が他とは違って耳の奥の方にあるラディウスの「ディープマウント」。その二つが僕の中で、普通のイヤピだと自分の耳にフィットしないイヤホンに対する最終兵器です。

だいせんせいの最終兵器たち。左のラディウスの「ディープマウント」は、装着時に耳奥側にふくらみが来るよう設計されている

次ページマニアたちも“いぶかしげ”なイヤピ

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